8人だから歌える
──ここからは新作ミニアルバム「DREAMY-LOGUE」について詳しくお聞きしたいと思います。作曲は6曲すべて田淵さんですね。
田淵 タイアップ曲がない作品ということを踏まえて、どうすれば面白くなるだろう? と考えたときに、全曲、僕が書くというのは若干おこがましいですがニュースとして面白いかなと。あと自分で作詞した曲(「大冒険をよろしく」「好きだよ、好き。」「ぼくらは素敵だ」)以外は、アーティストでもある女性の作詞家限定でお願いしようと思って。三森すずこさん、赤い公園の津野米咲さん、パスピエの大胡田なつきさんに書いてもらったんですが、男の僕には書けない歌詞というか、バラエティが広がったと思います。
──1曲目の「大冒険をよろしく」はスカコア系のサウンドを取り入れたアッパーチューンです。
守屋 すごくカッコいい曲ですよね。歌詞が多くて、言葉が詰まってるんですよ。歌詞を読むと「ホントに4分くらいの曲なのかな?」って(笑)。
稗田 スカのリズムの曲は初めてだったし、リズムをしっかりつかむのが難しかったです。
村上 「ジェッ飛ばしちゃう?」という歌詞があるんですけど、どういう意味だろうって調べたら……。
飯塚 ジェットバスが出てきて(笑)。
田淵 (笑)。最初は“かっ飛ばせ”だったんだけど、プロデューサーの方にもう少しフックが欲しいと言われて、最終的に「ジェッ飛ばしちゃう?」になったんです。
村上 そうだったんですね! 聞いたことなかったし、すごく耳に残る言葉だなって思っていました。
田淵 この曲はもともと、ミニアルバムのリード曲のつもりで書きました。「はじめてのかくめい!」が激しく飛び跳ねるような曲で十分ハイカロリーだったけど、そのあとに「この子たち、まだがんばるのか!?」と思ってもらえるような曲にしたくて。自分の曲の中でも超最高難易度だし、BPM的にも……。
稗田 速いですよね(笑)。
田淵 キーもめちゃくちゃ高いしね。そういう曲をがんばって歌うことが、今の彼女たちに必要なんじゃないかなと。
村上 ダンスも激しいんですよ。
守屋 息切れしちゃうよね(笑)。
飯塚 振り付け確認のときから息切れしてました(笑)。力を合わせないと歌えないし、この8人だから歌えるって感じがして。
稗田 田淵さん、堀江さん(編曲はPENGUIN RESARCHの堀江晶太)の組み合わせも最強だなって。
田淵 晶太くんの家で一緒にアレンジ作業したんです。僕は晶太くんの作業をお菓子食べながら見ていただけだけど(笑)。僕としては、作家の人たちが楽しんで参加できるプロジェクトにしたかったんです。「この現場は楽しい」と感じてほしかったし、少なくとも晶太くんとの作業はそれが実現できたかなと。
──三森さんの作詞による「パジャマdeパーティー」は、ガーリーでかわいらしい曲になりました。
村上 かわいいですよね!
稗田 女の子らしい言い回しがいっぱい入っていて、女性だからこそ書ける歌詞なのかなって。
飯塚 「どこかで私たちのこと見てたのかな?」というくらい、私たちの普段の行動と歌詞がリンクしているんですよ(笑)。「真剣なトーンでダメ出しタイムして」「弱いとこ見せちゃったりもして」とか「素直にすごいって褒めちゃうし」とかもそうですね。
村上 確かに(笑)。ずっとそういう感じだよね。ダンスレッスンのときも、端のほうで「こうしたほうがいいよ」ってお互いに話したり。
──三森さんはミルキィホームズやμ'sとしての活動経験もあるから、グループの内側のことがわかるのかもしれませんね。
田淵 本当にそうなんですよ。「限りある乙女時代にがむしゃらに綴ろう!」という歌詞があるんですけど、三森さん自身もグループでの活動をがむしゃらにがんばってきたわけで、その経験を踏まえて「それが未来につながる」とエールを送りたかったみたいで。
飯塚 私、三森さんとアニメ作品でご一緒したことがあって。休憩時間もダンスの確認やライブの打ち合わせをされていたんですよね。そのときのことを思い出すと、また泣いちゃいそう……。
稗田 ちなみに三森さん、ご自身の曲以外に歌詞を提供するのは、これが初めてだそうですよ!
ファンとの関係性
──「好きだよ、好き。」は、ノスタルジックな雰囲気もある楽曲ですね。
稗田 この曲も歌詞が本当によくて。いろいろな捉え方ができると思うんですけど、サビのところは私たちとファンの皆さんの関係を表わしているんじゃないかなって。ライブで歌うと、歌詞が身に沁みます。
村上 「君が僕を嫌いになる時は」のところは、ファンの皆さんを指さしながら歌うんですよ。
田淵 手話も取り入れてるんだよね。
飯塚 そうなんです! 全身で表現してます!
──東京国際フォーラムで撮影されたMVについては?
飯塚 大号泣でした……。
稗田 みんなで円になって、DIALOGUE+に対する思いを話すシーンがあるんですよ。当初は「がんばるぞ、おー!」みたいな感じになる予定だったんですが、話しているうちに感極まって。
村上 普段は言えないような本心もバンバン出てきたよね。
守屋 しかも、カメラマンの方と私たちだけの空間で撮ったんですよ。
稗田 「好きだよ、好き。」はMVを撮ったあとにレコーディングをしたので、さらに気持ちが入りました。
村上 歌っていても、撮影のときの情景が浮かんできて。
田淵 うれしい。みんなに歌詞がいいと言ってもらえると作家冥利に尽きる。
村上 レコーディングのときも「どう歌えばいいですか?」と相談させてもらいました。特に「一生懸命生きていても嫌な事は訪れるから」は、10テイク以上録っていただきました。
田淵 村上さんの中で「こう歌いたいんだけど、届かない」という感じがあったようなので、いろいろ話をして。
──ボーカルディレクションも田淵さんがやっているんですね。
田淵 行けるときは行くようにして、スケジュールが合わないときは今回、草野華余子さんにお願いしました。メンバー1人ひとりの特性を冷静に見極めて、どう歌ってもらったらいいかは、作家自身がやったほうがいい場合もあると思うので。
村上 アドバイスがすごく優しいんですよ、田淵さん。
稗田 それぞれの癖だったり、苦手なところ、得意なところもわかってくれて。
飯塚 レコーディングの前に、歌入れのポイントとかを書いた紙を渡してくれて。
──それは全曲分、全員に書くんですか?
田淵 そうですね。話すのは得意ではないし、文字で書いたほうが読んでくれるかなと。皆さんは声優なので、そのほうがわかりやすいと思って。
守屋 その紙は全部取ってあって、繰り返し読んでます。
稗田 「こういう歌い方をしてほしいので、このアーティストを参考にしてみては?」と参考資料も付いていて。すごく勉強になります。
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異色な1曲