DEZERTがニューシングル「血液がない! / Call of Rescue」を4月3日にリリースした。
2018年8月に千秋(Vo)曰く「シンプルさを追求した」アルバム「TODAY」を発表したあとは、東京・Zepp DiverCity TOKYOでの単独公演を含むワンマンツアーや、MUCCとの対バンツアーを行うなど精力的にライブ活動を展開していた彼ら。2019年初作品となる今回のシングルでは、よりバンドらしさを追求すべく、試行錯誤を繰り返したという。音楽ナタリーではメンバー全員にインタビューを行い、どのような過程を経て本作が誕生したのか話を聞いた。
取材・文 / 阿刀“DA”大志
このままでいいの?
──DEZERTはアルバム「TODAY」を去年8月にリリースしたあと、昨年末にサブスクを解禁してCDで廃盤になっている過去音源も配信をスタートさせましたね。これはどういう意図があったんでしょうか?
千秋 (Vo) 提案したのは僕たちではなくて、レーベルのスタッフなんですけど、俺はApple Musicのヘビーユーザーだし、今、いろんな人に自分たちの音楽を聴いてほしいときに、廃盤のCDだからってなんでカッコつけて聴く人の幅を狭める必要があるの?という。自分もこういうサービスをきっかけにいろんなバンドを好きになったし、好きなアーティストの音源もすぐに聴ける。「いいじゃん、俺らもやろうよ!」という感じでしたね。
──なるほど。ちなみにアルバム「TODAY」を経て、次の一手を打つにあたってどういう曲を作るべきだと考えていましたか?
千秋 うーん、これがちょっと難しい話なんですよね。これまで楽曲制作に関しては俺の見切り発車でいつもやってきたんですけど、本当は今回、もっといろんなチャレンジをしてみたかったんですよ。だけど自分たちに準備が足らなくて、僕からするとすごく悔しい作品になってしまったんですよ。今回は4人で曲を作る難しさを感じましたね。
──そうだったんですね。
千秋 結果、思ってたような作品にならなかった……なんて言っちゃダメなのかもしれないけど、本当はもっとバンドのコアな部分を出したかったんです。そういう意味で今作は「『TODAY』以降のバンドの現状はこれ!」と胸を張って言えるものではない。だから今でも悩んでる。このことについてメンバーがどう思ってるのかいつか聞きたいと思ってるんですよね。「このままでいいの? 何か大事なピースが足りなくない?」って。
──大事なピース、ですか。
千秋 これはメッセージ性とかサウンドの話じゃないんですよ。作る過程、ファンに伝えるまでの準備の話。そこの段階で俺たち1人ひとりがなってなかった。サブスクで音源を解禁して、みんなが聴きたいときに聴けるバンドになったのに、なんでそんなに意識が低いのかなっていう。それはもちろん、俺も含めて。今回のボーカル録りも意識を高めていったつもりだったけど、やっぱり低かった。最終的に耳に入ってくるものとして不満はないけど、そこに至るまでの過程を含めると俺が求めてる音にはならなかった。ドラムもベースもギターも「なんでそれでいいと思ったの?」という。
──なるほど。
千秋 かと言って、「じゃあ、お前1人でやれよ」と言われても1人でやっていいものができるとは思ってない。だからもっと時間が欲しいっていうのはあった。「じゃあ、そんな音源出すなよ」と言われるかもしれないけど、出したい。4月に始まるホールツアーの前に出したかったわけではないけど、ここで出さなかったら一生出せない気がして。とにかく、作るまでの過程が俺は許せなかったんです。
──難しいところですね。
千秋 もしかしたら自分のことが一番許せないのかもしれない。曲を作って人前に出す覚悟が足りなかったから。それは今回の3曲を作って到達した新たな境地ですね。曲調とか歌詞は置いといて、4人でやろうっていう意識がすごく強くなった作品です。4人で届けたいものをどう表現するのかという意味では失敗……とまでは言わないけど、もっとできた。だから早くまたみんなで一緒に曲を作りたいです。
音楽に正解はある
──Sacchanさんは今の千秋さんの話を聞いてどうですか?
Sacchan(B) 気持ちはすごくわかる。作詞作曲は千秋くんだけど、このバンドの音楽は1人で作るものじゃないという気持ちが俺もすごく強い。あと俺は最近、バンドって楽曲制作以外のところですごく労力を使ってるなと感じるんですよ。楽曲を世に出す作業は4人でやってるわけではなくて、どういう音で録ろうか考えるエンジニアがいて、できあがったものをどうやって宣伝しようか考える人がいて……いろんな人がいる中で、自分たちのたどり着きたい場所に到達するまでの道筋が多すぎて、チームとしてそこに向かって一直線に進んでいくための準備がすごく大変。でも、そこは試行錯誤してやっていくしかない。
千秋 その試行錯誤をわかりやすく言うと、数学なんですよ。国語と違って数学って明確な答えが必要じゃないですか。「血液がない!」も最初は「正解なんてない」というタイトルだったんだけど、「何を言ってるんだ、俺は」と。「正解を知ろうよ」と思ったんです。
──ほう。
千秋 歌詞が変わったきっかけがあったんですよ。俺、これまでに何万回も聞いたことがある、「音楽に正解はない」という言葉が嫌いで。聴く側に正解はないけど、やる側にとっての正解は絶対にあると思ってて。「正解なんてないから」と言われても、「いや、あるから! 貴様にはねえかもしれないけど、俺らにはある!」って。だからその正解を4人で知りたい。それで、これまでなんとなくやってたことに満足がいかなくなったんですよ。でも、正解を知るためには数学と同じように問題の解き方を知らなきゃいけない。数字をなんとなく見てるだけでは解けない。これまではその過程を飛ばしちゃってたんです。
──おっしゃってることはわかります。
千秋 例えばドラムだったら、そのタムを使う理由を考えたことがあるのか。多分、考えたことはない。なんとなく使ってると思う。俺もこれまでなんとなく歌ってきた部分がある。なんで「は」が「あ」に聞こえるの?とか。そんなふうに突き詰めていくともうお手上げなんですよ。そうやってイチからやらなきゃいけないことがたくさんある。だけどそうやってとことん考えていけばこのバンドには必ず正解がある。それぐらいめちゃくちゃ考えてます。
──「ただなんとなく」で済ませたくなくなったと。
千秋 そんな音楽はつまらないと思います。「感性で作ったものがいい。音楽とはそういうものだ」という人もいるし、確かに音楽は自由に作ればいい。でも人に伝えるための音楽はめっちゃ考えないといけないと思う。ああでもないこうでもないってみんな死ぬ気で考えて、「これがこの曲の正解だ!」「これが一番正しいメロディラインだ!」というものを考えないといけない。このインタビューをきっかけにメンバーにも考えてほしい。
──Miyakoさんはどうですか?
Miyako(G) 今の数学の話で言うと、生まれてすぐ足し算やれと言われてもできないのと同じで、まずそこから学んでいかないと。それに「これが正解です」と誰かが言ってくれるわけではないので、自分たちなりの答えを出さないといけないのかなと。
千秋 数学と違うのはそこだよね。出した答えが合ってるかどうかの判断は誰もしてくれないから、そこは自分で決めるしかない。それを人はセンスと言うんだろうけど。今、曲を作るうえでの邪念が俺にないんですよ。スタッフも一生懸命に自分たちのために考えてくれてる。だから、俺たちがやるべきなのは本当にいいものを作ること。メンバーがフラフラしてたら周りで支えてくれてる人たちはどうしたらいいかわからなくなるから。だから、例えばドラムのリズムがよれてたとしても、俺たち4人が「これがカッコいいんじゃん!」って言えればいいんです。だけど俺はまだ迷っちゃうから、もっと考えて考えて、狂うぐらい考えたいと思いました。すごく勉強になりました。
──よりバンドになろうとしている最中なんですね。
千秋 マジでそうです。去年の「TODAY」のツアーは、ぶっちゃけ言うと、俺1人がしっかりしてればなんとかなるだろう、バンドも付いてきてくれるだろうとか甘ちゃんなことを考えてたんですよ。だけど全然違った。びっくりしましたよ。あのツアーを通じて、俺が1人でドヤってやるのは絶対に違うことがわかったから、そのことも次のツアーに向けて再確認したいと思ってます。
次のページ »
わからない“問題”があっただけ