過酷なツアーの果てに「俺ら、黒夢じゃない……!」
──去年、2カ月半で36カ所を回るという過酷なツアーがありましたけど、それはどうだったんですか?
あれは面白かったですね。でも、面白かったからこそ最悪だったと言うか。
──どういうことですか?
2カ月半で36カ所回るのは自分たちとしても面白かったけど、細かい内容にまで目がいかなかったんですよね。毎回セトリを変えてたからそれもしんどくて。そのせいでどこかでちょっと手を抜いちゃったり、前の日のライブと比べちゃったり、客入りが悪いなとか思っちゃったり、そういう邪念が入ってしまったせいで1回1回のライブを全力でやるっていう意識が欠けてしまったんですよ。だからもう絶対やんない。47都道府県ツアーとか一生やんない! ああいうのは天才がやることだと思うんですよ。凡人はやっちゃダメ。
──47都道府県ツアーでも組み方によってはそこまでキツくはならないと思うんですけど、DEZERTの場合は日程が半端なかったわけで。今、2カ月半で36本もツアーで回るバンドはそうそういないですよ。
あのツアーはヒドかったですよ。僕がキレたり、ドラムが鬱病になったり、今となっては笑えるけど、もう絶対やらない……ちょっとね、黒夢に憧れてやってみた部分はあったのかもしれない。でも途中で気付いたんです、「俺ら、黒夢じゃない……!」って(笑)。
──あはは!(笑) 過去のライブレポをいろいろ読んでみたんですけど、去年、LIQUIDROOMでライブ中にフロアの柵を抜いたそうで。それはその場の衝動でやったんですか?
もうやらないですけどね。別に柵を抜いてバンドが売れるとも思ってないし、今となっては恥ずかしいことだなって自分では思う。衝動と言えば衝動だけど、それ以上に曲と向き合えてなかった自分の勝手な行動だったんですよ。
──本人的にはそう感じるかもしれないけど、僕はそれを読んで興味をそそられました。あとは、中野サンプラザホールでウォール・オブ・デスが起こったとか。
あれも一生やらない。簡単に言うと、曲を歌い切ることだけじゃ物足りなかったんでしょうね。自分の曲とその程度の向き合い方しかできてなかった。当時は曲を最初から最後まで歌い切ろうっていう意識がなかったし、物足りなさを感じる分、曲以外のことで何かをしようっていう気持ちがあった。しっかり歌い切ったうえで、曲をよりよく表現するために何かをやるなら素晴らしいけども、そうではなくて単純にごまかしてる部分があった。だから僕らはいまだに武道館に立ててないんでしょうね。
──中野サンプラザホールのライブからまだ1年も経ってないですけど、だいぶ変化が感じられますね。この間に千秋さんの中で意識改革でもあったんですか?
そうなんですよ。DEZERTは最初、本当にお客さんが少ないバンドで、10人以下っていうのが普通だったんですよ。それで、「この物足りない気持ちはお客さんがたくさんいたら解消されるんじゃないか」と思って活動を続けて、それなりのハコでワンマンをやってみたけど物足りない。「じゃあ、もっと広いハコでやったらいいんじゃないか」ってことでやってみたけどまだ物足りない。1000人のキャパでも物足りない。2000人でも物足りない。2年前にZepp Tokyoでやったけどやっぱり物足りない。「これはなんなんだ?」と。自分にはバンドが向いてないんじゃないかとまで思ったけど、自分にはこれしかない。そこで、どうやって音楽と向き合うか考え続けたら、意識が変わった。「ライブで歌い切ることが一番なんだ」って。
生んだからには責任を取ろう
──今作「TODAY」の内容も、前作と比べて明らかに変わっていますよね。ボーカルからシャウトが一切なくなって、歌を届けようというモードになっていると感じました。
バンドとして音楽としっかり向き合おうという気持ちで作りました。今までのも音楽と言えば音楽なんだけど、僕の自己満に付き合ってもらってるような感じだったので。
──こういう内容は初めから意図していたんですか? それとも蓋を開けてみたらこうなった?
いや、まだできあがってないんです。ライブでやるまではこの曲たちが完成したとは思ってない。
──それはどういうことですか?
今までは、「自分の曲だからどうしようが勝手だろ」って思ってたけど、今は「いや、そんなことない。曲が一番偉い」っていう考え方になっていて。曲を作ってるときも「作曲者の意志が……」とかメンバーから言われたんですけど、「いやいや、そんなのどうでもいいから、この曲にとって一番いいことをみんなで考えよう」って。「この子たちをどうやって教育しようか」っていう子供を育てるような気持ちで作ったアルバムなんですよ。今までは「生んじゃえ生んじゃえ。自分の子供なんだから不幸になっても仕方ねえだろ」なんて気持ちだったけど、今は違う。「生んだからには責任を取ろう」っていう。だから、僕はパパになりました(笑)。
──あはは(笑)。歌詞の言葉選びもだいぶ変わりましたね。
伝わらなかったら意味がないという気持ちが自分の中にあって、今回は丁寧に考えたからすごく時間がかかりました。今までは何か1つの表現があったとしたら、「ほら、深いでしょ?」っていうオラついた気持ちがあったんですよ。もちろん、そうすることで伝えられるアーティストもいるとは思うんですけど、それは天才だから。僕は天才じゃなくて凡人だから、考えるしかなかった。その結果、シンプルな歌詞になりましたね。だからそうやって「変わった」って言われるとすごくうれしいです。
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やっとスタートラインに立てた
- DEZERT「TODAY」
- 2018年8月8日発売 / MAVERICK
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トゥデイ盤 [CD+DVD2枚組]
8640円 / DCCA-67 -
通常盤 [CD]
3240円 / DCCA-70
- CD収録曲
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- 沈黙
- おはよう
- 蝶々
- 浴室と矛盾とハンマー
- 蛙とバットと機関銃
- Hello
- insomnia
- オレンジの詩
- 普通じゃないIII
- おやすみ
- TODAY
- トゥデイ盤 DVD DISC 1収録内容
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DEZERT LIVE TOUR 2017“千秋を救うツアー2”TOUR FINAL at 中野サンプラザ LIVE映像
- 「おはよう」
- sister
- 「誤解」
- 「排泄物」
- 「教育」
- 「変態」
- 「おやすみ」
- 「脳みそくん」
- 「ピクトグラムさん」
- トゥデイ盤 DVD DISC 2収録内容
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- 「TODAY」レコーディングドキュメント映像
- ライブ情報
DEZERT LIVE TOUR 2018「What is "Today"?」 -
- 2018年8月18日(土) 大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2018年8月19日(日) 大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2018年8月25日(土) 福岡県 DRUM Be-1
- 2018年8月26日(日) 福岡県 DRUM Be-1
- 2018年9月1日(土) 愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2018年9月2日(日) 愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2018年9月15日(土) 宮城県 darwin
- 2018年9月16日(日) 宮城県 darwin
- 2018年9月23日(日・祝) 北海道 cube garden
- 2018年9月24日(月・振休) 北海道 cube garden
- 2018年11月18日(日) 東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- DEZERT(デザート)
- 2011年に結成された千秋(Vo)、Miyako(G)、Sacchan(B)、SORA(Dr)による4人組。2012年より音源を発表し始め、2013年8月に1stアルバム「特製・脳味噌絶倫スープ~生クリーム仕立て~」をリリースした。2013年にはhideのトリビュートアルバム「hide TRIBUTE III -Visual SPIRITS-」で「D.O.D.(DRINK OR DIE)」をカバー。2017年にはMUCC、D'ERLANGERのトリビュートアルバムに参加している。2018年に入ってからは主催ツアー「DEZERT Presents 【This Is The "FACT"】 TOUR 2018」を実施し、アルルカン、NOCTURNAL BLOODLUSTらと各地で対バンを繰り広げた。2018年8月にMAVERICK D.C. GROUPの新レーベル・MAVERICKより2年半ぶりのアルバム「TODAY」をリリース。同月よりライブツアー「DEZERT LIVE TOUR 2018『What is "Today"?』」を行う。