DEZERTがニューアルバム「TODAY」を8月8日にMAVERICK D.C. GROUPの新レーベル・MAVERICKからリリースする。
これまでは奇をてらったタイトルや、グロテスクな表現の歌詞が多かった彼らだが、本作ではシンプルな言葉遣いの歌詞や、歌を伝えることに軸を置いた楽曲に挑戦。それらの楽曲群からは、バンドが新たなフェーズに入ったことが垣間見える。
音楽ナタリー初登場となる今回はコンポーザーでもある千秋(Vo)にインタビューを行い「TODAY」完成に至るまでを聞いた。
取材・文 / 阿刀“DA”大志
「TODAY」は“海”に向けた作品
──すごくざっくりとした聞き方になってしまうんですけど、最近のヴィジュアル系のシーンって、千秋さんからみてどういう感じなんですか?
どういう感じ……10時間ぐらい話してしまいそうですけど、僕の価値観で言うと、“普通”だと思います。
──盛り上がり的にはどうでしょうか?
わからないんですよね。僕は盛り上がっているところにいたことがなくて、このシーンに入ってきたときにはもうCDがそんなに売れなくなっていたし、盛り上がってる頃っていうのは話でしか聞いたことがない。しかも、人から聞く話の時点ですでに盛り上がってないという。でも、シーンについて個人的な感覚で話すとするなら、世間一般に認知されているようなバンドと比べると別世界ですよね。例えるなら、今のヴィジュアル系のシーンは池とか沼だと思ってて。昔は川だったと思うんですよ。一般的なシーンと言える海につながっているという意味では。でも今は、何か理由があって誰かがそれをせき止めた。それが“外来種”にやられないためだったのかなんなのかはわからないですけど、結果として海に出る方法がなくなった。でも、海に出たところで幸せになれるかどうかはわからない。個人的に思うのはそんな感じですね。
──と言うことは、今は“海”へ出ていくという発想自体が湧かなくなってるということですか?
いや、僕としてはこのアルバムは完全に“海”へ向けてます。誰かがせき止めた川の流れを再び作るためにレーベルの人たちの協力を得ることにしました。
──DEZERTを結成した当初にそういう意識は?
ないですないです。当時は大学生だったから音楽で食っていこうなんて思ってなかったし、DEZERTは暇潰しで始めたものだったからそこまで考えてなかったですね。
──では、その思いはどうやって膨らんでいったんでしょう。
うーん、僕もいい感じに年をとって、物事を考える時間が多くなって。二十歳ぐらいのときは「その場が楽しければいい」という考え方だったんですけど、今はそれが変わってきた。バンドを長く続けたいとかそういうことではないんですけど、バンドと改めて向き合ったときに、今までに通ったことのない道を行きたいなって思うようになったっていう感じですね。
──DEZERTが先輩や同世代のバンドを呼んで、主催イベント「This Is The "FACT"」を開催したのも海へ出るための一環だったりするんですか?(参照:DEZERT主催ライブツアーでV系6組がしのぎを削る)
いやあ、全然。みんなで面白いことはないかって考えた結果で、そこまで深いことは考えてないですね。
──同世代のほかのバンドは海に出ることを考えてないんですか?
考えてないでしょ。そういうことを考えるのはしんどいから、わざわざしないんじゃないですか?
──でも、それだと活動がどん詰まりになってしまうのでは?
だからみんなどん詰まりになってるんですよ。最近、どん詰まってない人を見たことがない。「おもんないなあ」っていう人しかいない。ライブがカッコいいバンドはいるけど、人間として興味のある人はいないですね。
──では、千秋さんはどういう人から刺激を受けてるんですか?
その人が死んだら曲を作ろうと思ってるんで秘密(笑)。まあ、誰も知らない人ですけど……。僕はずっと自分のことを“歌う人”だとは思ってなくて、自分の歌がとてつもなく嫌いだし、どうやったら好きになれるだろうって今も向き合ってる最中なんですけど、その人はそんなときにアドバイスをくれた1人なんです。このアルバムを作るにあたってもかなりインスパイアされてます。
CDは偽物でありカタログ、ライブが最優先
──最近、他ジャンルのバンドを積極的に呼び込むことでクロスオーバーしているバンドもいますけど、そういう様子を見て思うことはありますか?
うーん、否定するわけではないですけど、きっと面白くないでしょう。こういうことを言うと「お前、何様だ」って怒られるんでしょうけど。
──じゃあ、最近面白いと思ったのは「This Is The "FACT"」ですか?
それもつまんないでしょう。そんなに面白くはなかったですね。
──心底面白いと思えることが自分たちでもまだ実現できてないと。
そうですね。すごく語弊があるんですけど、僕はCDを“偽物”だと思ってるんです。生で歌ったり演奏することがバンドとして一番優先順位が高いもので、それ以外のものは全部“偽物”。言い換えるなら“カタログ”なんです。だからCDでどう思われたいっていうのはなくて、僕らとしてはライブに来てもらって生で会うっていうのが一番プライオリティが高いですね。だからライブを面白くしなきゃって常に思ってます。
──音源はあくまでもライブに来てもらうための誘い水でしかない。
僕はそう思います。どうせCDは偽物だから売れない。YouTubeみたいな動画サイトがなかったとしてもCDは売れなくなってたと思いますよ。人類はみんな頭がよくなってるから、何年か経ったら気付きますよ。「これは嘘だ」って。でも、ライブはどこも盛り上がってますよね。それは多分、本物だからだと思うんです。ライブの内容はどうでもよくて、そこに行った人が素晴らしいと思ったなら、そこでアーティストとつながれる。まあ、僕らの場合はライブですけど、アイドルだったら握手でも成立しますよね。だって、リアルじゃないですか。だから音楽に限らず、生の声っていうのものが今一番大事なんだと思います。それ以外はしょせんカタログ。もちろん、いいカタログを作るために全力でやりますけどね。
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過酷なツアーの果てに「俺ら、黒夢じゃない……!」
- DEZERT「TODAY」
- 2018年8月8日発売 / MAVERICK
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トゥデイ盤 [CD+DVD2枚組]
8640円 / DCCA-67 -
通常盤 [CD]
3240円 / DCCA-70
- CD収録曲
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- 沈黙
- おはよう
- 蝶々
- 浴室と矛盾とハンマー
- 蛙とバットと機関銃
- Hello
- insomnia
- オレンジの詩
- 普通じゃないIII
- おやすみ
- TODAY
- トゥデイ盤 DVD DISC 1収録内容
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DEZERT LIVE TOUR 2017“千秋を救うツアー2”TOUR FINAL at 中野サンプラザ LIVE映像
- 「おはよう」
- sister
- 「誤解」
- 「排泄物」
- 「教育」
- 「変態」
- 「おやすみ」
- 「脳みそくん」
- 「ピクトグラムさん」
- トゥデイ盤 DVD DISC 2収録内容
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- 「TODAY」レコーディングドキュメント映像
- ライブ情報
DEZERT LIVE TOUR 2018「What is "Today"?」 -
- 2018年8月18日(土) 大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2018年8月19日(日) 大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2018年8月25日(土) 福岡県 DRUM Be-1
- 2018年8月26日(日) 福岡県 DRUM Be-1
- 2018年9月1日(土) 愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2018年9月2日(日) 愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2018年9月15日(土) 宮城県 darwin
- 2018年9月16日(日) 宮城県 darwin
- 2018年9月23日(日・祝) 北海道 cube garden
- 2018年9月24日(月・振休) 北海道 cube garden
- 2018年11月18日(日) 東京都 Zepp DiverCity TOKYO
- DEZERT(デザート)
- 2011年に結成された千秋(Vo)、Miyako(G)、Sacchan(B)、SORA(Dr)による4人組。2012年より音源を発表し始め、2013年8月に1stアルバム「特製・脳味噌絶倫スープ~生クリーム仕立て~」をリリースした。2013年にはhideのトリビュートアルバム「hide TRIBUTE III -Visual SPIRITS-」で「D.O.D.(DRINK OR DIE)」をカバー。2017年にはMUCC、D'ERLANGERのトリビュートアルバムに参加している。2018年に入ってからは主催ツアー「DEZERT Presents 【This Is The "FACT"】 TOUR 2018」を実施し、アルルカン、NOCTURNAL BLOODLUSTらと各地で対バンを繰り広げた。2018年8月にMAVERICK D.C. GROUPの新レーベル・MAVERICKより2年半ぶりのアルバム「TODAY」をリリース。同月よりライブツアー「DEZERT LIVE TOUR 2018『What is "Today"?』」を行う。