「蟲」なんて僕としては心外(笑)
──ミヤさんが作詞・作曲、DEZERTが演奏した「蟲」については?
これはミヤさんが作った原曲通りですね。「ガチャガチャムクムク」の原曲がポップだったから、違う感じの曲を作ってくれたのかも。ミヤさんに「千秋、お前、“薔薇”とかって歌えんの?」と言われましたけど。
──「孤独の薔薇を抱いて眠ろう」という歌詞がありますからね。
たぶん自分では一生書かないですからね、そういうフレーズは。僕としては「全然歌えますよ。薔薇を咲かせてみせますよ」という感じでしたけど。そんなこと言いながら、ミヤさんも僕のボーカルに気を遣って曲を作ってくれたと思うんですよね。レコーディングも楽しかったです。
──「蟲」というタイトルや「We are Worms」という歌詞もインパクトがあります。
僕としては心外ですね(笑)。虫とか嫌いだし、全然蠢きたくないし。まあ、もちろんそれも例えだと思うんですよ。「俺たちは虫みたいな存在だ」って同じ目線に立ってくれてるというか。「まだまだ上がある。ここから這い上がろうぜ」じゃないけど、ミヤさんの気持ちが伝わってくる気がするんです。本人に「どういう意味ですか?」と聞いたわけじゃないけど、カッコいいですよね。
──ミヤさんの愛情を感じる?
愛情というか、ロック魂ですよね。MUCCは2つくらい時代をまたいで活動しているバンドだし、ずっとヴィジュアル系と正面から向き合っていて。この曲だけではなくて根底にあるものは変わってないし、そこがすごくいいなと思うので。
──千秋さんが意図した通り、今後につながる楽曲になりそうですね。
そうですね。今回の対バンツアーが分岐点だと思ってるんですよ、僕は。今のヴィジュアル系って混沌としているんですよね。僕が好きだったヴィジュアル系はもう存在しないし、その前のことを「昔はよかった」とか言う人もいるけど、そんなの知らなくて。とはいえ、いまだにヴィジュアル系という文化はあって、その中でみんながもがいていて。そういう状況を考えると、このツーマンが境界線になるのかな。
──MUCCとの対バンツアーをヴィジュアル系の状況を変えるきっかけにしたい、と?
うーん……これは個人的なことなんですけど、2016年の終わりくらいから、このシーンのことについてずっと考えていたんですよね。僕が好きだったヴィジュアル系はもう存在しない。でも、それを復活させてもしょうがないし、新しいことをやるべきだなと。今必要なのは、先陣を切るバンドだと思うんですよね。今のロックシーンにおけるONE OK ROCKみたいな存在というか。そういうバンドがヴィジュアル系にはいないんだけど、2016年くらいから「お前ら、どう?」みたいな雰囲気が出てきたんです。「DEZERTにシーンを背負ってほしい」みたいなことを言われたりとか。僕らは「あいつムカつく」とか「このライブハウスには二度と出ねえ」みたいな小さい怒りのモチベーションだけでやってきたから(笑)、「お前らが先陣を切れよ」みたいなことを言われるようになって、そこでまた考えちゃって。
──バンドの存在感が大きくなるにつれて、「今のヴィジュアル系ってどうなんだ?」と考え始めたと。それはすごく自然な流れですよね。
さっきシーンが混沌としてるって言ったけど、それは完全に悪い意味なんですよね。いまのヴィジュアル系のシーンは本当にどうしようもなくて、なんとなくメイクしてるお兄ちゃんたちがチャラチャラしてるだけというか。もちろんがんばってるバンドもいるんだけど、そういう状況にずっと違和感があって。2年間考え続けて、やっと吹っ切れたのが去年の8月に出したアルバム(「TODAY」)だったんですよ。今も思ってることはいろいろあるし、こういう場所では言わせてもらうけど、「そんなのどうでもいい。やろうぜ」という感じになれたので。
これが面白くならなかったらV系シーンは終わり
──MUCCは国内外のフェスにも出演しているし、ヴィジュアル系の枠からどんどん外に出ているバンドですが、そういう姿勢にも刺激を受けているのでは?
確かに外に出ていくんだけど、生息地はヴィジュアル系なんですよね。海に向かって川を上っていけるのに、なぜかヴィジュアル系という沼に戻ってきて、若いバンドと対バンしたり。そこがすごいんですよ、MUCCは。信念がないと、そんなことできないじゃないですか。僕がMUCCだったら絶対に沼には戻ってこないだろうし(笑)。真似できないですよ、ホントに。MUCCも20周年を終えて、これから新しいことをやり始めると思うんですよね。だからこそ今回の対バンツアーは境界線なんです。このイベントが面白くならなかったら、ホントにヴィジュアル系のシーンは終わりだと思うので。
──そこまで考えてMUCCにオファーしたんですか?
そうです。MUCCは僕らのことを相手にしてくれますからね。「This Is The "FACT"」のときも、ダメもとでオファーしてみたらOKしてくれて。トリビュート盤(「TRIBUTE OF MUCC -縁[en]-」)にも参加させてもらったし。今回のツアーもすごく楽しみです。僕、イベントってあまり出ないし、好きじゃないんですよ。出演することが決まっても「やりたくない」ってずっと言ってるんですけど(笑)、MUCCとの対バンツアーはすごくやりたい。ふざけてやりたいんですよね、僕としては。
──ふざけてやると(笑)。
お客さんをビックリさせたいんですよ。MUCCのライブに乱入したり、ダイブしまくりたいなと。MUCCのお客さんに嫌われるくらいやってやりますよ(笑)。
──もちろん「ガチャガチャムクムク」「蟲」も演奏するんですよね?
それもね、考えていることがあるんです。本編で自分たちバージョンの「ガチャガチャムクムク」をやってやろうかと。誰も幸せになれないですけどね、そんなことやっても。知らない曲を「これが原曲です」ってやっても、みんなわからないと思うんで。でも、それもアリかなと(笑)。今回はライブの制作も身内ばっかりなんで、何をやっても怒れないだろうし。もちろん、MUCCに対するリスペクトは持ちつつですけど。
──会場に足を運ぶオーディエンスに対しては?
ライブに来るって決めてる人に対しては何もないです(笑)。「どうしよう?」と迷ってるDEZERTのファンには「俺がふざけまくるけど、どう?」という感じですかね。MUCCのお客さんに対しては「かわいがってもらってる後輩っす。お願いしまーす」って。
──いきなり態度が変わりましたね(笑)。
(笑)。対バンライブって、相乗効果が生まれるかどうかは場合によると思うんですよね。お互いに客を持っていたとしても、やってみないとどうなるかわからないので。今回のツアーは面白いことをやりたいし、僕自身も楽しみたいですね。
- ツアー情報
【Is This The "FACT"?】TOUR 2019 -
- 2019年1月7日(月) 福岡県 BEAT STATION
- 2019年1月8日(火) 福岡県 BEAT STATION
- 2019年1月10日(木) 大阪府 クリエイティブセンター大阪 STUDIO PARTITA
- 2019年1月11日(金) 大阪府 クリエイティブセンター大阪 STUDIO PARTITA
- 2019年1月15日(火) 東京都 LIQUIDROOM
- 2019年1月16日(水) 東京都 LIQUIDROOM
- 2019年1月29日(火) 東京都 LIQUIDROOM
- 2019年1月30日(水) 東京都 LIQUIDROOM
- 「【Is This The "FACT"?】TOUR 2019」
会場限定コラボレーションCD
DEZERMUCC「蟲 / ガチャガチャムクムク」 -
[CD] 1000円
DCCA-1024※限定生産につき、なくなり次第販売終了。
- 収録曲
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- 蟲
- ガチャガチャムクムク
- DEZERT(デザート)
- 2011年に結成された千秋(Vo)、Miyako(G)、Sacchan(B)、SORA(Dr)による4人組。2012年より音源を発表し始め、2013年8月に1stアルバム「特製・脳味噌絶倫スープ~生クリーム仕立て~」をリリースした。2013年にはhideのトリビュートアルバム「hide TRIBUTE III -Visual SPIRITS-」で「D.O.D.(DRINK OR DIE)」をカバー。2017年にはMUCC、D'ERLANGERのトリビュートアルバムに参加している。2018年に入ってからは主催ツアー「DEZERT Presents 【This Is The "FACT"】 TOUR 2018」を実施し、アルルカン、NOCTURNAL BLOODLUSTらと各地で対バンを繰り広げた。2018年8月にMAVERICK D.C. GROUPの新レーベル・MAVERICKより2年半ぶりのアルバム「TODAY」をリリース。同月よりライブツアー「DEZERT LIVE TOUR 2018『What is "Today"?』」を開催した。2019年1月にMUCCとツーマンツアー「【Is This The "FACT"?】TOUR 2019」を行う。