DEVIL NO ID|“MV監督”市原隼人から見たDevillmaticな3人

すべてを自分たちのものにして現場を楽しんでいた3人

──ドラマパートはシリアスですけどダンスシーンではメンバーが笑顔だったりして、そういうギャップも興味深いですね。

楽しんでやってほしかったので。何を楽しむかっていうと、自分の居場所を楽しむことで、「この場所は誰にも譲らない。私たちがDEVIL NO IDよ!」っていう気持ちを大事にしてあげたかったんです。それが結果として自然な笑顔につながったのかもしれないです。

──ということは、市原さんとしては演技にしてもダンスにしても、3人からあふれ出たものをそのまま収めただけだと。

「サバイバー」ミュージックビデオ撮影時の様子。(Photo by Sugiyama Hajime)

ただ、感情面とか演技の見せ方に関してはしっかり話し合いましたね。キャッチボールみたいに、もっと奥までボールを投げ込むぐらいの感情の出し方をしてほしいということは微力ながらいろんな方法で伝えたつもりです。

──3人はどんな反応でしたか?

まっすぐ向き合ってくれました。もし僕が役者じゃないのに演技しろって言われたら「いやいやいや、笑わせんじゃないよ」ってなりますよ。だけど、彼女たちはそんなことは絶対に言わないし、最初は戸惑いもあったと思うんですけど、すべてを自分たちのものにして現場をすっかり楽しんでる。そういう様子を見ていてカッコいいなと思いました。

──市原さんはご自身の役作りに関してはとことんストイックですけど、監督として求めるものはちょっと違うんですね。

もちろん、伝えるべきことは伝えますけど、物事をやるにあたって既存のレールに人をハメるパターンと、人にレールを合わせるパターンがあると思うんです。でも、レールに人をハメようとしすぎると、そのレールはいつか崩れていくと思うんです。 なぜなら、本人の意思がそこに付いてきてないから。その人のことを尊重して、その人自身が作ったレールにこちらから乗っていかないと、本人が後々いい思いをしないと思うんです。だから、僕はその人がどんな人で、どんなことを考えていて、これまでどんな表現をしてきて、どんな見せ方をしたいのか、そういうことをまずは感じたいんです。

市原隼人

今の3人は自分の色を探している最中

──撮影時の印象的なエピソードはありますか?

シェンシェンっていう現地の子役の女の子がいたんですけど、3人がその子とずっと遊んでいて、その光景が本当に微笑ましかったですね。3人ともすごく優しい子だし、嘘がない。お婆さん役の方に対してもすごく丁寧でした。それでいて現場を離れるとみんな1人の等身大のキッズに戻るんです。ダンスをしている姿からするとびっくりするぐらい。しかも、ほかの役者さんたちと「昔っから知り合いだったっけ?」と思うぐらい自然な空気感を出すんです。

──人との間に壁を作らない。

一切作らないですね。

──前回の「BEAUTIFUL BEAST」の撮影から3人の変化は感じますか?

「サバイバー」ミュージックビデオ撮影時の様子。(Photo by Sugiyama Hajime)

感じます。すごく変わりました。それぞれの個性がさらに強くなったイメージ。少しずつ自分の陣地を広げていますよね。自分から湧き出たものを信じて歩いてきた道がだんだん固まってきている。そういう雰囲気を僕は今の時点で感じているので、今後はもっと変わっていくんじゃないかなと思います。それは大人になるということとはまた別で、自分の色を探している最中ということで。だから次に会うときにはしゃべり方も、好きな服も、ライフスタイルも全部変わってるかもしれない。その結果として、DEVIL NO IDがもっとすごいものになっているかもしれない。

──「BEAUTIFUL BEAST」では今よりも女の子らしさが前に出てましたよね。

そうですね。服もカラフルなものだったので、あのときと比べると今回はまたすごいですよね。前振りは長いし、「これ、なんのミュージックビデオだっけ?」って(笑)。

僕たちのことを振り回してほしい

──次のMVはどんなものになるのか気になります。

どうなるんでしょうか。もっとパーティな雰囲気になるかもしれないし、ハードコアなものになるかもしれません。そういうことを頭に入れながら撮ったところもあるんですが……ミュージックビデオの中でお婆さんが女の子を押さえつけているシーンがあるんですけど、あのお婆さんはルールとか規則の象徴なんです。年を重ねていくにつれて、自分を枠にハメなきゃいけなくなった人。だから、今回のビデオは、「本当の自分は見失っちゃいけないんだよ」というエールを観ている方に送っている作品でもあるんです。どんな場所でも自分を確立していく、居場所を生み出していく。それを実現するのは自分自身。「私たちがそういう場所を見つけることができたんだから、あなたたちにもできるでしょ?」というメッセージを感じてもらえたらうれしいです。

──今後、DEVIL NO IDはどうなると思いますか?

市原隼人

内面だけじゃなく、フィジカル面もどんどん変わっていくと思います。ダンスにはもっとキレが出てくるだろうし、シンガーとしてさらに気持ちを届けられるようになると思いますし、これからも僕たちのことを振り回してほしいです。

──それにしても、今回の撮影を通して市原さんの本気に真っ向から立ち向かったメンバー3人の強さはすごいですね。

現場でも涙が出そうになりました。今回は時間がない中、よくここまでやってくれたなと思います。同世代のほかの子たちに同じことをやれと言っても絶対できないという確信があります。それぐらい強い気持ちが彼女たちにはある。自分たちの居場所を誰にも譲りたくないという気持ちが人一倍ある子たちです。そのことがうれしかったです。