Devil ANTHEM.インタビュー|青春を捧げた10年間の“奇跡的な軌跡”がベストアルバムに (3/3)

生演奏ライブ本番10分前に「わー!」

──先ほど話に出た8月の「#でび夏霞演奏会」についても少し聞かせてください。アイドルがバンドを従えてライブをするのは珍しくないですが、サックスやコーラス隊、さらにはストリングス隊も加えた大所帯の“でび楽団”が、通常は生音で表現しにくい四つ打ちのダンスナンバーも含め、1曲ごとに生演奏で披露することの“最適解”を提示していた印象です。デビアンがこれまで安易にバンドセットライブを開催してこなかった、そのこだわりも見えた気がします。

あいり 演奏者の方々へのリスペクトと感謝の気持ちが一番大きくて。デビアンの曲を深いところまで理解してくださって、私たちのパフォーマンスに合わせつつも、それぞれの楽器の持ち味を出してくださいました。私たちメンバーとしては、そこについていくのに必死で。大変でしたけど、すごく楽しかったです。プロフェッショナルな方々とご一緒させていただいたことで、こちらもプロフェッショナルな感覚を研ぎ澄ませなきゃいけないなと思ったし、技術面に関する向上心が芽生えました。ライブが終わったあとも、それまで以上に歌について考えるようになって、意識的なところですごく刺激を受けました。

竹本あいり

竹本あいり

安藤楓

安藤楓

──バンドセットライブにおける1つの壁が、バンドの演奏に負けてしまっていないかどうかだと思うのですが、そこをしっかりクリアしているように感じました。

くるみ INUWASIさんの日比谷野音でのバンドセットワンマンを観たときに、すごく圧倒されたんですよ。バンドセットだとメンバーの歌唱力も際立ちますし、“生”のステージというものを体感して。佐藤さんは「デビアンでは生バンドはやらない。デビアンのよさが出ないし、みんなやってることだから別にうちがやる必要はない」みたいに言っていたんですけど、私としてはミーハー心があったので挑戦してみたかったんですよね。今回はその佐藤さんのこだわりがあったからこそ、どこに出しても恥ずかしくないライブにできたんじゃないかなと思っています。当日、ステージに出る直前まで歌の練習をしていて、本番の10分前に侑芽ちゃんが「歌どうやったらうまくなるの!?」って急に暴れ出したんですけど(笑)。

侑芽 それまで経験したことがないほどの緊張とプレッシャーを感じて。自分たちだけじゃなく、ミュージシャンの方たちも一緒にステージに立つのでチームプレーが必要になってきますし、自分の歌声がその方々のイヤモニにも届くと思うと、本当にこれは失敗できないなって。うまく歌いたいという気持ちがいつも以上に強かったから、本番10分前に「わー!」ってなっちゃって(笑)、メンバーに助けてもらいました。

くるみ 生演奏だとお客さんにも歌のミスが伝わりやすいんですよね。いつも以上にステージ上で目を合わせてがんばりました。

竹越くるみ

竹越くるみ

橋本侑芽

橋本侑芽

「デビアンを見逃したくない」と思わせたい

──また観たいと思うクオリティのライブでしたが、デビアンは12月で活動休止してしまうわけで。メンバーの皆さんが「安心して見ていてほしい」と考えていることは理解しつつ、どうしても「活休したあとはどうなるんだろう?」と思いを巡らせてしまいます。先ほど「ファンの方は私たちのことを私たち以上に心配してくれる」という話があったように、デビアンの行く先については、ファンの方が一番敏感になっていると思いますし。

くるみ 活休までもう3カ月くらいですが(※取材は9月に実施)、私たちとしては実感がなくて。最近、解散を発表するアイドルさんが増えていますが、デビアンをよく知らない人に、それとひとまとめにして考えられるのはちょっともどかしいですね。活休なのに解散として捉えられている。

 勝手に現体制終了と決めつけてくる人たちや、私たちが言ってないことをあたかも事実のように発信する人たちもいて、それは本当にムカつきますね(笑)。

くるみ 「10年もやったんだから活休するのも仕方ない」みたいな声もね。

 そう。デビアンのライブを絶対観たことないでしょ、と思うような人たちがそういうことを言っていて。観たことがあったとしても、それはきっと昔のライブで、今の私たちを知らないんだと思います。

水野瞳

水野瞳

Devil ANTHEM.

Devil ANTHEM.

──活動休止期間も含め、来年のことは何も決まっていないんですよね。ただ、「自分自身のこと、将来のこと、Devil ANTHEM.というグループの存在意義、居場所をこの節目のタイミングでしっかり考え見つめ直す機会として、一度“立ち止まる”」ということで、活動が終了するわけではないと。

くるみ ファンの皆さんとしては、この5人が戻ってくることを期待して応援してくださっているわけじゃないですか。それと同時に、もしかしたら終わりが来てしまうかもという不安もあるはずで、私としてはこの夏、そのことについて見ないふりをして過ごしていた感じがありました。ファンの皆さんの気持ちはわかってるけど、まだ今は考えなくていいかなって……。いざ活休まで3カ月となった今も本当に実感が湧かないし、なんなら年明けに普通にライブに出ているような感覚があるんです。

──メンバー間にセンチメンタルな空気は特にないですよね。5人を見ていると、本当に活休するんだろうかと疑問に思うくらい。

くるみ はい(笑)。グループ内に悲しい雰囲気が一切ないので、ファンの方たちに対して何を言うのが正解なのかがいまだにまだわからないんですよね。一度きりの10周年イヤーにしかできないことを、ちゃんと味わおうとは思っています。

 ファンの皆さんには、まだしんみりしないでくださいと伝えたいですね。「戻ってくるのを待ってるからね」というポジティブな言葉をかけてくれる人も増えたので、それはすごくうれしいです。

Devil ANTHEM.

Devil ANTHEM.

──12月27日にTOKYO DOME CITY HALLで行われる結成10周年ライブに対してはどんな思いがありますか?

あいり どういう感情で当日を迎えるんだろうって、不安でもなく、ふわっとした不思議な気持ちを抱えています。ただ1つわかっているのは、必ずこのステージで自分の中にあるものをすべて出し切らないといけないということで。昨年の公演で悔しい思いをしたところについては確実に練習を重ねて、最高のものを届けたいです。ファンの方には「デビアンを応援していてよかった」と思ってもらいたいし、活休にあたって、デビアンとのこれまでの日々がいい思い出としてみんなの中に残るといいなって。

──昨年の年末にもTOKYO DOME CITY HALLでワンマンが行われました。活休うんぬんはさておき、まず動員数で去年を上回りたいという思いもあるのでは?

くるみ そうですね。でも正直、デビアンのライブの動員が増えているか減っているか、私たちメンバーとしてはよくわかってないんですよ。ただ、私たちを知って気にかけてくれている人は増えているなという感覚はあります。たくさんの人に「活休前にデビアンのライブを観ておきたい」「デビアンを見逃したくない」と思わせたいです。

公演情報

Devil ANTHEM. 10th Anniversary ONE MAN LIVE「Miraculous Trajectory~すべてが奇跡だった~」

2024年12月27日(金)東京都 TOKYO DOME CITY HALL

プロフィール

Devil ANTHEM.(デビルアンセム)

2014年に結成され、「Make Some Noise」「沸ける正統派アイドル」をキャッチコピーに活動しているアイドルグループ。“楽しく沸けるライブ”を追求し、ステージ上から放つエネルギーとフロアの熱量で独自の世界観を構築している。2023年5月にビクターエンタテインメントからシングル「ar」をリリースしてメジャーデビューを果たした。2024年2月にメジャー1stアルバム「Blue Youth」、10月にベストアルバム「Devil ANTHEM. 10th Anniversary Collection / The Best Miraculous Trajectory」をリリース。12月には結成10周年記念ワンマンとして東京・TOKYO DOME CITY HALL公演を行い、このライブをもって活動休止することが決定している。