Devil ANTHEM. 「ADVANCE」インタビュー|念願のメジャーデビューを控え、5人に芽生えた覚悟と決意

Devil ANTHEM.が2月14日にニューアルバム「ADVANCE」をリリースする。

5月にビクターエンタテインメントからメジャーデビューすることが決定しているデビアン。メジャーに向けて弾みをつけるべくリリースされるインディーズ最後の作品「ADVANCE」には、昨年配信リリースされた「LOVE~極~」や既発曲の“2023ver.”、そして新曲を含む計12曲が収録される。このうち新曲はデビアンの楽曲を数多く手がけている今城沙々が作詞作曲したポップでキュートなバレンタインソング「そわそわチョコレート」、SHINNOSUKEが作曲、Relectが編曲を担当したさわやかなクラブサウンドの楽曲「ADVANCE」、山下智輝が制作したエモーショナルなロックナンバー「不確かな未来」の3曲。アルバムを通してデビアンの“今”を感じることができる。

音楽ナタリーではメンバー5人にインタビューし、アルバムの話題のほか、初回限定盤Blu-rayに映像が収録される東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)公演のエピソードや、メジャーデビューに向けた現在の心境などを語ってもらった。

取材・文 / 近藤隼人撮影 / 佐々木康太

野音までの不安と焦り

──昨年12月の日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)でのワンマンの話からお聞きします(参照:Devil ANTHEM.日比谷野音ワンマン、メジャーデビュー決定の知らせに大粒の涙)。このライブは客席での声出しが解禁されたり、9月の東京・EX THEATER ROPPONGI公演に引き続き火花などの派手な演出があったりと、“沸ける正統派アイドル”としての面目を躍如するような内容でした。

竹越くるみ 野音では後悔のないライブができたと思います。ただ、ハプニングはたくさんありまして(笑)。例えば火花がすごく熱かったんですよ。本当はすぐそばまで近寄っちゃいけないと思うんですけど、私たちギリギリまでステージの前方に行く癖があって(笑)。あと、衣装の靴とステージの床との相性が悪くて、滑って体幹がブレちゃったりとか。どうしようとあわてた場面もあったものの、そういうハプニングさえもいい思い出になるくらい満足度の高いライブで、すごく楽しかったです。メンバーそれぞれの反省点はあるかもしれないですが、グループとしては全然なかったと私は思うし、ファンの皆さんも私たちのパフォーマンスに対して笑顔で返してくれたし、一歩先のステージに進めた気がします。

安藤楓 野音では堂々とステージに立てたと思います。EX THEATERのときは緊張がすごすぎて、ファンの人をしっかり見たり、その場をちゃんと楽しめたりできなかったんですけど、野音ではメンバーみんなキラキラして楽しんでいることが自分たちでもわかりました。

橋本侑芽 ここ数年ライブでの声出しが制限されていて、その環境の中でも自分は楽しめたんですけど、やっぱり心のどこかでちょっと物足りないなと感じていたんです。野音ではイヤモニをしていても、お客さんの声援やコールが聞こえて感動して。私たちとファンの皆さんで一緒にライブを作っているんだという実感が湧きました。

Devil ANTHEM.

Devil ANTHEM.

──ライブ当日を迎えるまでに何か苦労はありましたか?

竹本あいり 最近になって、チケットの売れ行きを佐藤(海人。Devil ANTHEM.のマネージャー兼プロデューサー)さんに教えてもらえるようになったんですよ。それまではなんとなく聞けない雰囲気があって聞いてないだけだったんですけど、いつも気になってはいて。やっぱり大きい会場になるにつれて、ファンの人の口コミの力に頼るだけじゃダメで、私たちがもうひと踏ん張りしなきゃ人は集まらないんだろうなと感じていたんです。ほかのアイドルの子たちがチケットを手売りしたり、完売に向けたミッションをやったりと、がんばっている姿をファンの人に見せてるのに対して私たち何もしてなくて、ちょっとヤバいんじゃないのかなという気持ちもあって。佐藤さんからも「どうにかなると思うなよ」とずっと言われていたんですよ。去年の9月にはAppare!さんの野音ワンマンを観に行かせてもらったんですけど、会場のお客さんの数を見て、「これだけの人を私たちの力で集めなきゃいけない、どうしよう」と不安になりました。瞳も一緒に行ったんですけど、瞳は泣き始めちゃって。

──Appare!の野音ワンマンは僕も観に行きましたが、かなり盛り上がってましたね。

あいり 実はその2、3週間くらい前に、佐藤さんに「何かしたい」と伝えてたんです。「SHOWROOMとか手売りチケットとか、うちらはやらないんですか?」って。佐藤さんは最初あまり乗り気じゃなかったんですけど、私たちの気持ちが伝わったのか、チケットの販促企画が決まって。大変なことだとわかってたけど、やらなきゃ今までと変わらないし、前に進めないなと思ったんです。実際にやってみたらメンタルに来たり、つらいと感じたりすることもあったんですけど、やっぱり目標に向かって努力をするとやり遂げたときの達成感が大きいんですよ。ライブ本番でSEが流れたときにいつも以上に感じるものがあって。その気持ちがいったいなんなのか、そのときはわからなかったんですけど、ライブの最後のほうにやり遂げた実感みたいなものが湧いてきました。ファンの人の力、いろんな人の力のおかげでこうやってたくさんのお客さんが来てくれて夢みたい、こんな幸せな気持ちでいいんだろうかという達成感とうれしさがこみ上げてきて、幸せなライブでした。

──瞳さんがAppare!の野音で観客の数を見て泣いたのは、あいりさん同様に不安や焦りを感じて?

水野瞳 EX THEATERから野音まで2カ月しかなくて。EX THEATERまではもっと時間があったのにソールドアウトできなかったから、それより大きい会場で2カ月後にワンマンをやるということで「これ大丈夫かな……」と不安になったんです。ワンマンのあとは毎回ファンの方がちょっと燃え尽きてる感じがあるから、野音に来てくれないかもしれないって。2カ月の間にレベルアップして、EX THEATERのときよりも楽しかったって言ってもらえないとやる意味がないし、Appare!さんのライブにはデビアンのファンの方たちもけっこういて、「私たちのライブでも楽しんでもらえるかな。でも、あと2カ月か」と思ってたら不安に押し潰されそうになって気付いたら涙が出てきたんです。

水野瞳

水野瞳

水野瞳

水野瞳

──ワンマン当日を迎え、野音のステージから客席の景色を観たときはどんなふうに感じました?

 当日、ファンの方たちが「『Fever』のときに折ってください」と伝えながら入り口でサイリウムを配ってくれていたんですけど、「『Fever』ってなんですか?」と言う方がけっこういたらしくて。「Fever」はデビアンの代表曲の1つですが、それを知らない人たちもデビアンのために時間を作ってくれたことがうれしかったです。販促企画が終わってだいたいどれくらいチケットが売れたか聞いていて、あとはどれだけ当日券を買ってもらえるかが勝負だったんですけど、本番でステージに立って客席を見たら、最近デビアンの現場に来てなかった人もはじめましての人もいて。このライブに足を運んできてくれた人全員とこれからも一緒にいたいという気持ちが芽生えました。

デビアンがまっすぐに愛を届ける

──ここからはニューアルバム「ADVANCE」の楽曲の話題に移ります。まず昨年11月に先行配信され、野音でも披露された「LOVE~極~」について。この曲は2000年代のダンスチューンを彷彿とさせるキャッチーなエレクトロポップで、“愛”をテーマにした歌詞が特徴です。

くるみ この曲のレッスン、けっこうやったよね。毎回のレッスンで「LOVE~極~」のパフォーマンスを固めるための時間が30分はあって、中毒性が高い曲ではあるものの聴きすぎるとなんだか鬱陶しくなってくるんですよ(笑)。レッスンだから誰かに向けて踊ってるわけでもないし。その分、ライブで披露したときはすごく楽しくて、パフォーマンスを重ねるたびに新鮮味が増すというか、新しい発見があるんです。ライブで歌うことでデビアンらしさが出る曲で、音源も聴いてほしいけど、ライブで生の歌を聴いてほしいし、ライブ映像よりも実際に踊ってる瞬間を見てほしいですね。今までのデビアンの曲とは違う魅力があると思います。

──具体的にどういうところが今までの曲と違うんでしょう?

くるみ 曲に違いがあるというか、私たち自身の成長も相まってということですね。今までは曲が私たちの先を歩いている感じだったんですけど、こういう難しい曲を上手に歌えるようになったことが大きくて。振付に関しても、「LOVE~極~」は私たちが楽しそうに踊ることで、それを観たファンのみんなが振りコピして、フロアもステージも一体になる感じがあるんです。初披露のときからみんな楽しんでくれていて、いろんな場面で今までの曲と反応の違いを感じます。

竹越くるみ

竹越くるみ

竹越くるみ

竹越くるみ

──“愛”をテーマがということで歌詞がとてもストレートですが、最初に曲を聴いたときはどういうふうに感じました?

侑芽 私はこの曲を聴いたとき、デビアンがいろんな方法で世の中に愛を届けにいくというヒーローのような物語を想像しました。

あいり デビアンの楽曲やパフォーマンスに共通している特徴は、まっすぐに何かを伝えるということだと思うんです。「LOVE~極~」はこのまっすぐな歌詞に乗せて、私たちの気持ちを嘘偽りなく日本全国に、世界に届けるイメージで。「コロナ禍はつらかったけど、それを乗り越えたよね。私たちみんなでここからまたがんばろうね。愛があればなんでもできるよ」というメッセージを純粋にスパンと届けています。ライブで初披露したときから、そのメッセージをしっかり伝えられたという実感があって、だからファンの人たちもこの曲を聴いて笑顔になってくれるんだと思います。