Devil ANTHEM. 「Fantastic90」インタビュー|もっと上を目指して、この季節を盛り上げるデビアンの夏曲

Devil ANTHEM.が7月26日にニューシングル「Fantastic90」をリリースする。

2月発表の「Reflect Winter」に続く今年2枚目のシングルの表題曲「Fantastic90」は、キュートな歌詞とデビアンらしいアッパーサウンドが融合した清々しい夏曲。冬曲の「Reflect Winter」と同様、デビアンには珍しい季節感あふれるナンバーに仕上がっている。音楽ナタリーでは今回もメンバーにインタビューし、毎年恒例の春ツアーを経て感じたこと、ここ1年の活動に対する手応え、そして新曲の聴きどころについて語ってもらった。

なお、インタビューではメンバー6人に話を聞いたが、取材実施後に藤澤ひよりの活動休止が発表された。これに伴い、そのほかのメンバーが現在の心境を語るコメントも特集後半に掲載する。

取材・文 / 近藤隼人撮影 / 下山春香

アクシデントのおかげで深まったライブへの意識

──9月25日に東京・EX THEATER ROPPONGIで追加公演が予定されていますが、5月まで行われた春のライブツアー「Devil ANTHEM. SPRING TOUR 2022」を終えた心境を聞かせてください(参照:Devil ANTHEM.毎年恒例の春ツアー、O-EASTでファンと共有した熱い時間)。毎年恒例の春ツアーの中で最多の会場数となり、各公演のキャパシティも昨年よりワンランクアップ。レーザー照明など派手な演出も目立ちました。

竹越くるみ 一番大きかったのは、途中からひよりちゃんがケガでライブに参加できなくなり、5人でステージに立たなきゃいけなかったことですね。今回のツアーは会場数が多かったので、それ以外のライブも含めると毎週ワンマンをやっているような状況だったんですけど、盛り上げるためにセトリは似たようなものになるし、いい意味でも悪い意味でもフロアもステージ側も慣れが出てきてしまうところがあったんですよ。ひよりちゃんがケガをして、しばらく5人でパフォーマンスをすることが決まったその当日にもライブがあったし、さらにその週末にもツアーの公演があって。ひよりちゃんが加入する前のフォーメーションを急ピッチで各自頭に入れ直して、歌とともにライブ前に合わせていきました。そして、それによってメンバーみんなで相談し合うことが増えたんです。

竹越くるみ

竹越くるみ

竹越くるみ

竹越くるみ

──アクシデントがいい方向に働いたと。

くるみ 6人でツアーを完走できなかったのはもちろん悔しいですけど、1つひとつのライブが意味や中身のあるツアーになった気がします。アクシデントがあったおかげで、ライブに対する意識が深まったというか。ひよりちゃんのファンも楽しませなきゃいけないし、ファンの方に「5人で大丈夫かな?」という心配を1ミリもさせたくなかったので、練習をみんなでがんばりました。最善を尽くしていい形で終われたのかなと思います。成長できたし、改めてツアーに対するありがたみを感じることができました。

──ひよりさんが膝の靭帯をケガしたのは4月末、ツアー中盤の出来事でしたよね。

くるみ そのときはどうしようという不安が大きかったです。でも、当の本人がめちゃくちゃ落ち込んで、どよーんとしている感じではなかったので、それを見て私たちも安心したところがあります。まったくツアーに参加できなくなったわけではなく、アンコールではひよりちゃんも椅子に座って、6人で歌えましたし。

──ひよりさん本人としては当時どういう心境でした?

藤澤ひより ケガしたときは、悔しいというよりも、信じられないという気持ちでした。まさかライブに参加できなくなるとは思ってなくて、起きていることのわけがわからなかったです。悔しいという気持ちに達するまで時間がかかって、1週間くらい経ってから実感が湧きました。ケガをした3日後くらいに広島公演があったんですけど、急に5人体制のフォーメーションを覚えなきゃいけないメンバーに対して申し訳ない思いもあったし、「ケガをするにしても今じゃないでしょ」という自分への怒りも感じましたね。

藤澤ひより

藤澤ひより

藤澤ひより

藤澤ひより

順調だからこそ、目指すものが欲しかった

竹本あいり 私としては今回、活動に対する心境や考え方がツアー前と後ですごく変わって、成長を実感しました。それはなんでかと言うと、ライブをやるたびにメンバー同士で意思疎通を重ねる回数が増えていったんですよ。

──それはどうしてですか?

あいり 規模が大きくなったツアーを進めていく中で、どこを向いて走ればいいんだろうという気持ちが正直あって。止まらずに常に前に突き進んでいることは実感しているし、目の前に用意されたことを必死にやるのは自分のモットーでもあるんですけど、どの道を進んでいるのか、その先がどこなのか……やっぱり目指すものが欲しいと思うようになったんです。佐藤(海人マネージャー兼プロデューサー)さんは自分の考えをあまり言わないタイプなんですよ。メンバーで集まって話し合う機会が何回かあったんですけど、みんなとしては佐藤さんにちょっとでも考えを共有してほしいと思っていて、デビアンはどういう感じで進んでいくんだろうとか、自分はどういう心境で活動すればいいのかとか、それぞれ葛藤しながらツアーを進めていました。だからこそ吸収するものが多かったんです。

──なるほど。

あいり そして佐藤さんに「考えているビジョンを教えてください」と伝えて、メンバーも含めた全員での話し合いの機会を作ってもらいました。佐藤さんとしては「とにかく売れることしか考えてない」とのことで、「あっ、私たちまだまだ先にいけるんだ」と安心しました。やっぱりメンバーだけで話し合ってると視野が狭くなって不安が出てくるんですよ。佐藤さんの話を聞いてもっと上を目指そうという気持ちが芽生えたし、春ツアーの規模が大きくなったとは言え前回のツアーで回った会場もあったので、次はもっともっと大きな会場でやりたい、今回のツアーの各公演がいいものに仕上がったからこそ、この空気感をもっと大きな会場に持っていきたいと感じました。デビアンはあと2年で結成10周年を迎えるんです。そのときに私たちがどんなステージにいるのか……メンバー間では「武道館に立ちたい」と以前からちらほら口にしていたんですけど、夢は持つ分には減るものじゃないし、武道館という大きな目標を掲げてファンのみんなにキラキラした姿を見せたいです。

竹本あいり

竹本あいり

竹本あいり

竹本あいり

くるみ どうせ上を目指すなら、武道館を目指そうという考えで一致団結しました。活動歴が長いからあまりちんたら進んでられないですしね。

──「目指すものが欲しい」という思いは、メンバー全員に共通していたんですか?

くるみ そうですね。これまではメンバー同士で話し合うこともほとんどなく、個人個人でそのときの状況に納得しながら活動していて、佐藤さんと私たち1人ひとりがバラバラなところがあったんですけど、メンバーがだんだんと大人に近付いてきたことで「淡々と活動を続けているだけでいいのか」という疑問が出てきたんです。それで、まずそれぞれどういう未来を思い描いているかをメンバー同士で共有し合ったら、みんなちゃんと自分の考えを持っていることがわかって。その意見をまとめようと思ったときに、佐藤さんとも意思疎通しなきゃと考えました。私たちにとって佐藤さんは大きすぎて立ち向かえない存在だったんですけど、あいりちゃんが先陣を切ってくれて。そのあとは「みんなで同じところを見ている」という感覚があって、今まで以上にパフォーマンスに一体感が出ていると思います。

──デビアンはここ数年ライブの動員を伸ばし続けていて順調なように見えますが、そういう悩みや葛藤があったんですね。

あいり 順調だからこそ、目指すものが欲しかったんです。これはどこに続いてくんだろうかっていう思いがありました。