DEPAPEPE「Purple on Palette」インタビュー|“赤”と“青”から生まれた全12曲の“紫”

DEPAPEPEがニューアルバム「Purple on Palette」をリリースした。

コロナ禍を経て、4年半ぶりのアルバムとなった本作。「パレット上の紫色」を意味するタイトルの通り、三浦拓也と徳岡慶也の感性が混ざり合い、さまざまな“紫色”を生み出すアルバムとなった。

音楽ナタリーではアルバムのリリースを記念して2人にインタビュー。目まぐるしく変化する音楽シーンの中で、“2人組ギターインストゥルメンタルユニット”というフォーマットを崩さず20年以上続けることができた理由、ニューアルバムの制作秘話を語ってもらった。

取材・文 / ナカニシキュウ

音楽を歌のあるなしで分けていない

──DEPAPEPEは来年でメジャーデビュー20周年を迎えるわけですが、率直なお気持ちとしてはいかがですか?

三浦拓也 ついこの間15周年をやったばかりなんだけどな、という気持ちは正直あるんですよね(笑)。ちょうどコロナ禍に突入した2020年が15周年のタイミングだったので、そこからの5年間はけっこう早かったなという感じです。

徳岡慶也 コロナがあったことで、5年のうち3、4年は何もしていなかったような感覚なんで、あんまり実感はないです。ちょっとワープした感はありますね(笑)。

──なるほど。その流れで聞くのも変ですけど、なぜ20年も続けてこられたんだと思いますか?

三浦 2人だったからかもしれないです。これが例えば4人組のバンドとかだったら4人分の考え方があったりして、意見が分かれる可能性は高まると思うんですけど、僕らは2人だけなので。リーダーの徳岡さんが「こうやっていこうよ」と言うものに対して僕が賛同して一緒にやっている形だから、ブレにくいというのはあるのかもしれないです。

徳岡 あと単純に、僕らみたいなジャンルの音楽をやっている人があまりいないからというのも大きいかなとは思いますけどね。

DEPAPEPE

DEPAPEPE

──おっしゃる通り、DEPAPEPEはデビュー当時から異質な存在ではあったと思います。今は当時以上に音楽シーンのデジタル化が進んでいて、お二人のようなアコースティックサウンドは希少化していますよね。ほかと違うことをやっているがゆえの困難もあったのではないかと思いますが……。

三浦 そこに関しては、うまく共存したいなと思っていて。この20年で音楽の作り方もだいぶ変化して、実際に僕たちも昔はカセットレコーダーに録音してデモを作っていたのが、今はある程度打ち込みでバンドアンサンブルをシミュレーションしながら作るようになっていたりするんですよ。自分たちなりに時代の進歩を取り入れながら、アコースティックギターのよさ、生演奏のよさを大事にしていきたいという気持ちはデビュー当時よりも強くなっていますね。

徳岡 歌がないからこそできることはまだまだたくさんあると思うんで、あんまり流行り廃りというものは……もちろん好みは都度都度変わりますけど、流行りに寄せることもできるし、寄せない選択肢もいっぱいあるから。だから、いろんな音楽が出てきてくれること自体はうれしいんですよ。

三浦 デジタルな音楽に敵対心は持っていないんです。手軽にいろんなサウンドを作れる今の時代だからこそ、「DEPAPEPEだからこういう音になるんだ」ってところに重きを置く姿勢が自分たちの中でより明確化しているというか。人間味みたいなものが音に出たらいいなと思ってやっていますね。

──20年前も今も変わらず、音楽シーンのメインストリームはボーカル入りの音楽であり続けています。その中でインストゥルメンタルをやり続けることの意義と言いますか、どんな意識でやられているのかを聞いてもいいですか?

三浦 自分たちはデビュー当初から「インストをポピュラーに!」というのを合言葉にやってきているんですけど、「これは歌もの」「これは楽器の音楽」という分け方をせずに聴いてもらいたい気持ちは常にあります。

三浦拓也

三浦拓也

──「あ、そういえば歌入ってないね」ぐらいの?

三浦 そうそう。ポップスというフィールドにおいてはインストものって少数派ではあるんですけど、もっと大きく見ると、昔からクラシックとかジャズとか、歌のない音楽はたくさんある。自分が音楽を聴くときも、歌のあるなしで分けてはいないんですよ。リスナーの人にもそういうふうに聴いてもらいたいし、それくらいインストがポピュラーな存在になったらいいなと。

徳岡 音楽全体で見たら、歌のない音楽のほうが多いかもしれないですから。自分の場合はギターをやっていた影響もあるけど、もともとインストの音楽というものに壁を感じていなかったんで、あんまり意識したことがなかったんですよね。「たまたま結果的にメインストリームではないフィールドにいた」っていう感覚のほうが強い。たぶんそのスタンスはずっと変わらないですね。歌があるかないかで音楽を分けて考えることに、あまり重要性を感じていないというか。

三浦 ちなみに念のため言っておくと、歌ものも大好きです(笑)。

徳岡 そうそうそう。大好き(笑)。

さすがにそろそろ出さないと

──そしてこのたび、ニューアルバム「Purple on Palette」が完成しました。制作はどんなふうに始まったんでしょうか。

徳岡 コロナ禍を経てリリースの期間がちょっと空いちゃったんで、「さすがにそろそろ出さないと」って(笑)。

三浦 さっきもちょっと話しましたけど、コロナ禍で誰とも一緒に演奏できない時期があったことで、その期間にDTMを勉強し直したんですよ。コロナ前までのデモはもっと簡易的な、ループさせたリズムパターンにギターを重ねるくらいの作り方だったのが、以前に比べてもう少し打ち込みでアンサンブルを組み立てられるようになったんで、その変化が大きかったなと思います。

──それによって、できる曲にも変化はありましたか?

三浦 大きくは変わってないかもしれない。どちらのやり方でも「僕らがイメージしたものを再現する」という大筋は一緒で、それをある程度形になった状態からスタートできるようになったというだけなので。

──なるほど。「Purple on Palette」というアルバムタイトルにはどういう意図が込められているんですか?

三浦 「パレット上の紫色」ということなんですけど、例えばパレットの上で赤色と青色を混ぜるときに、その混ざり具合によっていろんな紫色になりますよね。僕たち2人が混ざり合って音楽を作るときもそれと同じで、同じ紫でも曲によってグラデーションができる。少しずつ違う紫色をカラフルに感じてもらえたらいいな、という思いを込めました。

徳岡 一応赤が三浦で青が僕、という想定なんですけど。キャラ的に(笑)。それに加えて、今回はそこまで明るい曲が中心ではなくて、マイナー調の曲も多いので、色的に紫が一番近いかなというのもありました。

徳岡慶也

徳岡慶也

──マイナーキーの曲が多くなったのはどういう理由からなんでしょう?

徳岡 意識的にそうしたというよりは、たぶん今までメジャーキーの曲を作りすぎたんじゃないですかね(笑)。「アコースティックギター2本で」という一応の縛りがあるんで、まあバンドが入ったりもしますけど、ある程度制約のある中でやってきてることもあって、自分の中で「飽きないように」というのはあったかもしれないです。曲を作っていく中で、自然とマイナーキーの曲ばかりが出てきたのはそういうことかなと(笑)。

──今回は、新たにタッグを組むアレンジャーさんが参加した楽曲がいくつか含まれていますね。

三浦 曲のデモができてきてある程度形が見えた段階で、「これは自分たちでやろう」「これは人にアレンジをお願いして、今までとは違う自分たちを引き出してもらおう」という2パターンがあって。

徳岡 ギター2本でやるよりバンドを入れたほうがいいなっていう曲を中心に、今までにない一面を引き出してもらえそうな予感のあるものを新しいアレンジャーさんにお願いした感じです。