風味堂のベーシスト・鳥口JOHNマサヤによるソロプロジェクト「デンシケンセツ」。カルチャー×ミュージックをキーワードにした作品を制作するこの新プロジェクト第1弾として、ダムと音楽のフュージョンをテーマにしたアルバム「音楽式コンプリートダム」がリリースされた。
「20××年、世は空前のダムブーム&ダム乱立時代に突入」という架空の設定のもと制作されたこのアルバムは、作品全体がラジオ番組を模した構成となっており、歌詞にはダム用語が散りばめられている。ボーカリストにはトルネード竜巻の名嘉真祈子など多数の女性陣が参加。また、TOKYO FMのラジオドラマ「NISSAN あ、安部礼司~BEYOND THE AVERAGE~」の刈谷勇役で知られる杉崎真宏がナビゲーターを務めている。
今回ナタリーでは、このアルバムの完成を祝うべく、ダム好きとして知られる著名人の座談会を実施。鳥口のほか、よしもと芸人のダム好きサークル「ダム部」のメンバーを代表してザ・プラン9のなだぎ武、バッファロー吾郎の竹若元博に集まってもらい、それぞれにダムの魅力を語ってもらった。
取材・文 / 遠藤敏文 インタビュー撮影 / 中西求
ダムのCDを作ったきっかけ
──皆さんは初対面ということで、まずは自己紹介からお願いします。
鳥口JOHNマサヤ デンシケンセツという名義でダムのアルバムを作った鳥口と申します。普段は風味堂っていうバンドのベースをやってます。
なだぎ武 今回はまた別ユニットということですね。ダムがコンセプト……えー? それどこの層が食いついてくるんですか(笑)。面白いですね。(資料を見ながら)歌詞を見てちょっと驚きましたけど、この「重力式少女」っていうのはこのために付けた名前ですよね?
鳥口 そうですね。歌いに来てくれた方は、全くダムのこと知らなかったんですよ。
竹若元博 あははは。気持ち入れるの難しかったでしょうね。
──なだぎさんと竹若さんは、よしもと芸人さんの「ダム部」というサークルに入っているということでお集まりいただきました。
なだぎ 勝手に言ってるだけですけど(笑)。
竹若 言うほど活動できてませんもんね。
なだぎ そうですね。宣伝も大々的にはしてなくて、たまにちょろっとやるくらい。でも、いま世間的にじわじわと社会科見学的なものが来てるじゃないですか。お菓子の工場見学とか。もう一歩踏み込んで、ぜひダムまで来てほしいとは思ってます。でも、どうしてダムのCDを作ろうと思ったんですか?
鳥口 きっかけは、ソロで音楽をやろうっていう機会がありまして、どういう音楽をやろうかって探してたんですよ。メッセージソングを書くほどのメッセージもないし、ロックバンドやるにしても1人だし、どうしようかと考えていたときに、「音楽になりそうにない題材を音楽にしてみたら面白いんじゃないかな?」と思いまして、自分の好きなダムを音楽にしてみようと。
竹若 よく企画が通りましたね。ダム部には芸人以外にもスタッフの子も入っていて、いろいろなところにダムの企画を出しているみたいなんですけど、全然首を縦に振ってくれないんですよね。
鳥口 いや、このCDの企画もなかなか通らなかったです。ダムの音楽だけだとマニアックなんで、マニアックにならないように音楽はすごくポップに作ろうと思って。あとは一般的なアルバム形式じゃなくてラジオ形式にしたんですけど、音楽で伝えにくいところを言葉で説明したりとか、そういうアイデアを出したら通りました。
竹若 なるほど。
ダム好き3人が語るダムの魅力
──さっそくですが、ダム好きになったきっかけから聞かせてください。
鳥口 神奈川県に宮ヶ瀬ダムっていうところがあるんですけど、自分の趣味にバイクがありまして、5年くらい前にツーリングしてたらたまたまそのダムに出会ったのがきっかけです。最初、橋かなと思ったんですよ。そしたらダムで、その巨大さに圧倒されてしまって。ダムの中に入ってみたら、迷路のようになっていて、こういう建造物って面白いなと思って。あとダムに行くと「ダムカード」っていうものが置いてるんですよ。
なだぎ そこに行かないともらえないんですよ。置いてないところもあるんですけど、行った証になるので、ダムマニアの間では比重が高いんです。
──竹若さんがダムにハマったきっかけは?
竹若 僕の場合は本当にかなり前なんですけど、10年くらい前にテレビのロケでダムに行ったのがきっかけです。ダム好きな人たちの集まりにバッファロー吾郎がレポーターとして一緒に回るみたいな仕事があったんですよ。最初はもう「この人たち気持ち悪いな」ていう印象で(笑)。「キャッキャ、キャッキャ何言うてはるんやろ?」って言ってたんですけど、ロケが終わるころには一緒になってキャッキャ、キャッキャ言ってましたね。
──何が一番新鮮だったんですか?
竹若 やっぱり大自然の中に人工物がボンッと出る風景ですね。今まで山道を普通に登っていたのに急にコンクリートの塊がドーンって出てくるのとか、その眺め的なものもダム以外見れないじゃないですか。山から見る絶景っていうのはいろいろありますけど、ダムっていうのは本当にダムでしか見れないし、1つひとつ形も違うし、場所によって風景も違うし。歴史とか聞いてみると、「このときはこういうことがあったから、こういうダムになった」っていうのがわかるんですね。一歩踏み込めば楽しいことが待ってるっていうか。基本的に巨大な力を感じますね。「これだけの水をせき止めてるんだ!」みたいな。仮面ライダーのショッカーのアジトみたいな感じに見えたりとか、地球防衛軍に見えたりとか、いろんな見方ができるのも面白いですね。
──なだぎさんはいかがですか?
なだぎ 2人が言ったようなことなんですよね、僕も。きっかけはダム部のメンバーで行ったときですけど、急に無機質なものがドンッて現れるっていうのと、「自分の想像を超えすぎた!」っていう感覚が新鮮だったんです。あれって遺跡に近い感じなんですよ。人がいないところに人が作ったものが現れて、人が住んでた形跡まであるじゃないですか。それにダムって調べていくと本当に緻密な計算で作られてるんですよ。ただのコンクリートの壁に見えるものが、こんなに細かく作られてるんだっていうところで不思議な感じになるんですよ、知れば知るほど。知っていくうちに、ダムの中に入りたいとか、もっと違うダムに行きたいとか、日本で一番有名な黒部ダムにも行ってみたいとか、自分の中でも意欲が出てきて、行ったら行ったで今度は「放流シーンを見たいな」ってステップアップしていくんですよ。僕もいつの間にか夢中になっていました。
CD収録曲
- souda
- スカイライン / マツダトモミ
- 重力式始めちゃいます。 / デンシケンセツ
- ワタシ ダムガール / DAMガール
- バケットカーブと怪しい二人 / デンシケンセツ
- 静かなるダムサイト / なかまきこ
- 沈んだ思い出 / 絵夢
- I Love 宮ヶ瀬ダム / 廣川由里香
- 水の無いダム / 北沢綾香
- 春のアーチ / 重力式少女
- ローラーゲート / デンシケンセツ
デンシケンセツ
風味堂のベーシスト・鳥口JOHNマサヤが、カルチャー×ミュージックをキーワードになんでも音楽にする新プロジェクト。この第1弾として、ダムと音楽のフュージョンをテーマにしたアルバム「音楽式コンプリートダム」を2011年9月21日にリリースした。
なだぎ武(なだぎたけし)
1970年10月9日、大阪府生まれ。お~い!久馬、浅越ゴエ、ヤナギブソンとともにザ・プラン9として活躍するほか、ソロとしても活動中。10月スタートのミュージカル「ROCK OF AGES」に出演。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。
竹若元博(たけわかもとひろ)
1970年8月12日、京都府生まれ。1989年に木村明浩とバッファロー吾郎を結成。2008年に「キングオブコント2008」で優勝。10月には東京・大阪で「バトルオワライヤル」を開催。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。