電波少女が3月27日に新作CD「Q」をリリースした。
先行配信されている「GXXD MEDICINE」「忌々 -yuyu-」にリードトラック「NEWTOWN」をはじめとする新曲4曲を加えた本作では、電波少女の本来の魅力がさらにアップデートされた形で堪能できる。
音楽ナタリーでは、ハシシ、NIHA-C、nicecreamの3人にインタビューを実施。3人体制になってちょうど1年後に完成した本作「Q」の話を中心に、現在の電波少女のモードについて語ってもらった。
取材・文 / 森朋之 撮影 / tAiki
ハシシのファッションチェック
──2018年3月にNIHA-Cさんが加入して、ちょうど1年が経ちます。この1年は皆さんにとって、どんな時間でしたか?
ハシシ (NIHA-Cに向かって)どうでした?
NIHA-C 長く感じましたね。いろんなことがありすぎたし、変化も大きくて。「まだ1年か」という感じです。1人で活動しているときに比べると、やることも増えて。
ハシシ 単純に稼働も多かったですからね。リリースはデジタル配信だけだったけど、ありがたいことにイベントに呼ばれたり、いろんな活動をさせてもらって。新体制になって試行錯誤することも多かったし。まだまだ手探りですけど。
──いい意味で固まり切ってない、という感じですか?
ハシシ いや、悪い意味で固まってないです。
nicecream ハハハハハ(笑)。
NIHA-C (笑)。自分の居場所を探していたところもあったんですけど、それは少しずつ見えてきたかなと思います。ハシシさんに「NIHA-Cくん、こういう感じでやってみたら?」とアドバイスしてもらうこともあって、自分としても「こういうNIHA-Cを見せたい」というものが徐々に出てきて。
──アドバイスというのは?
NIHA-C 例えばライブのMCについて、「固すぎてもよくないから、もうちょっとふざけてみたら?」とか。
ハシシ ガミガミ言ってます(笑)。
nicecream 以前は僕に対するダメ出しが10あったとしたら、今はそのうちの8くらいがNIHA-Cに向かっていて。僕はかなり助かってますね(笑)。
ハシシ 言われてるうちが華だったんですけどねー。
nicecream 今も言われてますけどね、身に付けてるものにケチを付けられたり。
NIHA-C 集合すると、まず「何それ? ダサ!」って(笑)。
nicecream まず全身を上から下まで見て、何か気に入らないことがあると言ってくるんです。
ハシシ そんなに見てるかな?
──(笑)。「電波少女はこうあるべき」という理想像があるんでしょうね、ハシシさんの中に。
ハシシ それもあると思うし、自分たちの年齢的にも考えるところがあって。この先、フレッシュな感じはなくなってくるだろうし、強さや落ち着きだったり、ラフな部分も必要になってくると思っていて。いい具合に肩の力を抜いて、それをショーとして見せられるようになりたいんですよね。余裕というか、貫禄的な。それが音楽的にも格好的にもっていう。
気になったら夜中でも電話
──制作に関してはどうですか?
ハシシ NIHA-Cとはたくさんやりとりしてます。NIHA-Cのいいところも当然あるけど、自分から見て「もったいないな」と思うところもあるから、それを全部ぶつけて。特にリリックについてはかなり言いますね。内容の矛盾点をなるべくなくしたいんですよ。「こっちでこう言ってるのに、ここでこんなふうに言ってるのはおかしくない?」っていう。NIHA-Cのラフさもよかったりするんですけど、やっぱり作品の完成度を高めたいので。
──緻密にやってるんですね。
ハシシ そうですね。たぶんNIHA-C的には「え、そこもですか?」という感じだと思うけど(笑)。自分のパートを書いてるときもNIHA-Cの歌詞を何度も読み直して、気になるところがあったら夜中でも電話するんです。そうすると「え、なんですか?」ってイヤそうな声で電話に出るっていう(笑)。
NIHA-C (笑)。ちょうど寝たところだったりすると、話してても頭に入ってこないんですよ。とりあえずメモして、電話を切ってから考えて、「そういうことか」と。そのやりとりはすごくありがたいんですよ。歌詞を書きっぱなしで放置しちゃうと、グダグダのまま進むじゃないですか。直していくのは確かに大変だけど、作品のレベルを上げるためには必要な作業なので。
ハシシ NIHA-Cにいろいろ言うからには、自分も気を付けないといけないですからね。自分の歌詞も以前より見直すようになったし、気になるところがあったら、NIHA-Cにも「ここ、どうかな?」って確認して。「ちょっとおかしいですね」って言われたら、「は?」ってなるけど(笑)、指摘されたところは絶対に直すので。
人に優しいCD
──確かに今回の「Q」には、密度の濃い楽曲がそろっていると感じました。作品全体のテーマはあったんですか?
ハシシ なかったんです、今回は。いつもテーマやコンセプトを決めてから制作に入っていたんですけど、今回はわからなくなっちゃって。新体制としてとかではなく、そもそも自分自身が何をやりたいのかが見えなくなって。今流行っているものがいいのかな?とも考えたけど、それもちょっと違っていて、考えてるうちにがんじがらめになって。結果的に原点回帰というか「もともと自分が好きなものって、なんだったかな?」と見つめ直すところから制作に入ったんですよ。新しいものに挑戦したというより、もともと持っていたものの延長線上にある作品だと思います。あと優しい作品にしたくて。
──優しい作品?
ハシシ 人に優しい作品です(笑)。歌詞ではなく音のほうですね。シンプルなトラックが多いし、自分たちの世代にとっては懐かしい感じがするというか。そういう曲をまとめて出しておきたかったんですよね、このタイミングで。
NIHA-C 「この空気感、いいな」という曲が多いですね、今回は。懐かしいというか、自分が日本語ラップにハマった時期の雰囲気もあるし、それは聴く人が聴けばわかるんじゃないかなと。
ハシシ 2005年辺りの日本語ラップとか? 完全に当時のままではなくて、その空気感を混ぜつつですけど。
nicecream ハシシが言った「優しい」感じも納得できますね。よく聴くと毒も入ってるんだけど、パッと聴いた感じが心地よくて、優しい印象です。
ハシシ メロディやラップのフロウも、もともと自分が好きな感じに近いというか。ヘンに色気付かず、自然な感じでやりたかったんです。それはNIHA-Cにも言いましたね。「なんだこのリリック、カッコつけすぎ」とか。
NIHA-C 「色気付きやがって」って(笑)。
ハシシ 「お前、鏡で自分の姿見たことがあるか?」っていう。
nicecream ハハハハハ(笑)。
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