生き残るために必要だった
──3人体制になったことで、音楽的にも新しいことにチャレンジしたい気持ちが強まっているのかも。もともとハシシさんは、常に変化していきたいタイプなんですか?
ハシシ どうだろう? 意図的に変化させたいとは思っていないんですけど、ただ、電波少女が紆余曲折を経てハシシ、nicecreamの2人になってからは、メンバーを増やしたいという気持ちがずっとあって。やってるうちに2人体制に慣れてきたんですけど、どうしても表現の幅が狭くなるんですよ。自分の声はちょっと特殊と言うか、かなり高めじゃないですか。バンドとかだとそれでもいいと思うし、実際、高い声のボーカリストは多いですけど、ラップは言葉の情報量が多いし、全部1人で歌ってると聴いてる人が疲れちゃう気がして。それをどうにか解消しようとして、歌っぽいパートを増やしたり、いろいろとごまかしてたところもあるんですよね。要は曲の中に展開を作って、飽きないようにするということなんですけど。そういう展開の多い曲も好きだからいいんだけど、ヒップホップ本来の“ループもの”だったり、ラップだけで押し切るような曲はどうしてもやりづらくて。「誰でもいいから入ってくれないかな」と思ってたんですよ。
NIHA-C 誰でもいいからって(笑)。
ハシシ (笑)。まあ誰でもいいは冗談ですけど、自分たちが活動を続けて、生き残っていくために必要だったということですね。
NIHA-C そうっすね。俺の場合、電波少女に入る前は「この先、何をやればいいんだ?」という状態だったんです。ずっと考えていたんだけど、なかなか答えが見つからなくて。
──電波少女に加入することが、音楽を続けていくための突破口だった?
NIHA-C 俺にとってはそうですね。あと、ハシシさんは信頼できる人なんですよ。絶対にウソをつかないので。言いたいことはズバズバ言うんですけど(笑)、適当なウソはつかない。そういう人だから加入したんですけどね。
──ナタリーで行ったハシシさん、ぼくのりりっくのぼうよみさんの対談(参照:電波少女「HEALTH」特集 ハシシ × ぼくのりりっくのぼうよみ)でも、ぼくりりさんがハシシさんに対して「『どうしてここまでしてくれるんだろう?』と思ってました」と、強い信頼を寄せていて。
ハシシ そのコメントは外向けのサービスしてくれたんですかね(笑)。まあでも近くにいる人にはなるべくウソは言わないようにしてますね、確かに。全然関係性の薄い人に対しては、うまく動くためにウソを言うこともありますよ。「すいません、会社がダメって言ってるので、できないです」とか(笑)。
nicecream はははは(笑)。
ハシシ でも、周りにいる人にそういうこと言っちゃうと、不信感につながっちゃうじゃないですか。そうなったら友達としても仕事の相手としても成立しなくなると思うので。
コアなファンをガッカリさせたくない
──電波少女はネットラップのシーンから出て来たわけですが、自分たちの出自であったり、ずっと支持してくれているオーディエンスに対しても「裏切れない」という気持ちはありますか?
ハシシ どうなんだろう……? そういう気持ちもなくはないけど、もっと大きい視点で見れば、電波少女のことを知らない人の方が圧倒的に多いじゃないですか。例えばいきなり路線変更したとしても、そこで初めて俺らのことを知った人は、過去のことは関係ないわけで。そう考えると、もうちょっとズル賢くやってもいいような気がするんですけど、そんなふうに変わらないのは、好きなことをやっていたいのもあるし、自分に近い人の目を気にしているからだと思います。コアなファンをガッカリさせたくないし、周りのラッパーとかに「あいつら、魂を売ったな」と思われるのもイヤなんで。よくいるじゃないですか。転校した途端に髪を染めたり、大学に入ったらいきなり派手になったりするヤツが。そういうふうにはなりたくないっていう……この例え、伝わりづらいですかね?
NIHA-C いや、わかりますよ(笑)。
ハシシ まあ、どう思われるかはよくわからないですけどね。こっちが「これくらいの変化はセーフだろ」と思っていても、「いや、全然飛び越えちゃってるから」と思われることもあるだろうし。ネットラップ出身と言われることについては、一時期「イヤだな」と思ってたんです、実は。「もう言わないでほしい」とか「ダサい」と思ってたんですけど、一周まわって、それもなくなりましたね。ネットラップ出身っていうのは事実だし、変に触れないよりは逆に堂々としてた方がかっこいいかなって。
──来年は結成10周年。この先はどんな活動になりそうですか?
ハシシ まずは3人の新曲をどんどん作りたいですね。今はリメイク曲と並行して曲作りをやってるんですけど、もっとペースを上げたいなと。
nicecream これから電波少女を知ってくれる人も多いと思うので、ぜひライブに来てほしいですね。そのときに「生のほうがいいな」と思わせて、もっとハマってもらえるようなパフォーマンスができるようにがんばりたいです。
NIHA-C 個人的にはアクが強いものを作りたいと思ってます。パッと聴いたり、目にしたりしたときに「何これ?」って気になって、検索したくなるような。そういう尖った部分が、電波少女のよさなので。
- 電波少女「OWARI NO HAJIMARI 2018.07.01 @TSUTAYA O-EAST」
- 2018年11月14日発売 / アリオラジャパン
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[DVD] 4000円
BVBL-141
- 収録内容
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- INTRO
- オーバードーズ
- 21世紀難民
- GXXD MEDICINE
- MO
- モナリザ
- Good Night
- ME
- 夜光虫
- FOOTPRINZ
- Take My Hand
- 笑えるように
- NO NAME.
- Earphone feat. Jinmenusagi
- MONE¥CLIP feat. Jinmenusagi
- A BONE feat. Jinmenusagi
- COMPLEX feat. Jinmenusagi
- SKIT2
- Munchii Bear Cookiis 2018
- 電波少女「忌々-yuyu-」
- 2018年11月18日配信開始 / アリオラジャパン
- 収録曲
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- 忌々-yuyu-
- 電波少女(デンパガール)
- 2009年に複数のMCおよびトラックメーカーで結成されたユニット。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はラップ担当のハシシとNIHA-C、DJ&パフォーマンス担当のnicecreamという3人で活動している。2013年7月に1stアルバム「BIOS」を、2015年7月に全曲フィーチャリングゲストを迎えた2ndアルバム「WHO」を発表した。12月にリリースしたiTunes Store限定シングル「COMPLEX REMIX feat. Jinmenusagi, NIHA-C」がiTunes Storeのヒップホップ / ラップのシングルチャートで1位を獲得する。2016年5月に7曲入りCD「パラノイア」をリリースし、11月よりヒッチハイク企画「“電波少女的ヒッチハイクの旅”47都道府県ストリートライブTOUR」を実施。2017年1月にヒッチハイクの旅を完遂し、夏にメジャーデビューを果たすことが決定した。6月より3カ月連続で配信シングルを発表したのち、9月にメジャーデビューアルバム「HEALTH」をアリオラジャパンからリリース。2018年3月に新メンバーとしてNIHA-Cを迎え、7月に東京・TSUTAYA O-EASTで新体制初のワンマンライブ「OWARI NO HAJIMARI」を行った。