“ネットラップっぽい”作り方をした「クビナワ」
──その後、ぼくりりさんが電波少女の「idler stella(feat.nera_K,ぼくのりりっくのぼうよみ)」(2015年リリースのアルバム「WHO」収録)に参加、2016年5月に東京・clubasiaで行われた電波少女主催のライブに出演するなど、2組の交流は続いていますね。
ぼくりり そうですね。なんだかんだ定期的に会ってます。
ハシシ 年齢は10歳くらい違うんですけど、率直にかわいいですからね。ぼくりりって、俺が音楽をやってなかったら絶対に出会わないようなヤツなんですよ。品がよくて、話も面白くて。たまに何を言ってるかわからないことがあって、「俺の頭が悪いの? それともお前の頭がぶっ飛んでるの?」って聞いたりするけど。
ぼくりり 確かにそういうやり取りもありますね(笑)。
──電波少女のメジャーデビューアルバム「HEALTH」に収録されている「クビナワ feat. ぼくのりりっくのぼうよみ&ササノマリイ」について聞かせてください。これはハシシさんがぼくりりさんにオファーしたんですよね?
ハシシ はい。
ぼくりり うれしかったです。しかもこの曲、めっちゃよくないですか?
ハシシ うん。ぼくりり、ササノマリイくんを呼んだ時点でいい曲になるのは間違いないと思っていたんだけど、予想以上の出来だった。アルバムのほかの曲とも毛並みが違うし、俺もお気に入りです。この曲、ネットラップのやり方で制作したんですよ。トラックをデータで送って、テーマを伝えて、ラップを入れて戻してもらうって。一切、顔を合わさないで作りました(笑)。
ぼくりり すごい懐かしいやり方でしたね。エモかった。
意味ありげに意味のないことを歌う
ハシシ 意味ありげに意味のないことを歌うのも、ネットラップっぽいよね。「クビナワ」っていうタイトルと“死”というキーワードは僕が決めたんですけど、歌詞には特に意味がなくて。昔はよくそういう作り方をしてたんですよね。
ぼくりり そうですよね。この曲に関しては僕も何も考えないでやっていて……と言うと語弊があるけど。音としての気持ちよさと意味を両立させようとすると、ハードルがすごく上がってしまうんですよ。それも楽しいんですけど、「クビナワ」は意味ではなくて、音とメロディ、韻に意識をフォーカスしていて。僕の1st(2015年発売の「hollow World」)の制作に近い感じでしたね。
ハシシ 俺も「昔の電波少女っぽい感じが出てる」って言われる。さっき「意味はない」って言いましたけど、「こういう意味がある」と自分で仮説を立ててて歌詞を読むと、意外と辻褄が合ったりもして。作り手としても面白かったですね。本当はぼくりりにもミックスに立ち会ってもらおうと思ってたんだけど、俺が不甲斐ないせいでスケジュールがギリギリになってしまって、データで確認してもらって。
ぼくりり チャットでやり取りしてるときも「何だか切迫してるな」と思ってました(笑)。ハシシさんはアートワークとかも自分でやってるから、大変なんだろうなって想像してました。僕なんかよりも制作に関わる作業量が全然多いですからね。
ハシシ アルバム制作の最後はフラフラでした(笑)。でも「クビナワ」を作れたのは本当によかったですね。最近はリリックの内容をわかりやすくしようと思っていたから、ひさしぶりにこういう曲がやれてよかったな。
ぼくりり 同じく。普段はわかりやすさと言うか、「この曲ではこのことを表現しよう」というものがあって、それに沿って書くことが多いので。「クビナワ」は「ここにこんな色があったら気持ちいいよね」ってペタッと置いていくような感じだったから、また違うよさがありましたね。
電波少女ヘッズのぼくりりがエモさを感じるのは
──アルバム「HEALTH」収録曲で、ぼくりりさんの中で特に印象に残ったトラックは?
ぼくりり 全部好きだし、選ぶのは難しいですが、僕もそこそこの電波少女ヘッズなので、昔からある「SKIT2」にはエモさを感じますね。
ハシシ 「SKIT2」は電波少女のリスナーにとっても大きい曲だと思うので、メジャーデビューのタイミングで出せたことはホントによかったなと。音楽を辞めようと思って地元の宮崎に帰っていた時期に作った曲なんですよ、「SKIT2」は。これがきっかけになって今の事務所やレーベルの人にも出会えたし、自分たちにとっても特別な曲です。
ぼくりり 電波少女を追っていて、「SKIT2」にグッと来ない人はいないですから。この曲もそうですけど、電波少女の曲って、人間性がめちゃくちゃ見えるんですよ。知り合いと言うか、ずっとお世話になってるから(ハシシの人間性を)知ってるというのもあるけど、活動のやり方だったり、表現上でも隠していなくて。もしかしたら「人間性なんて見たくない」という人もいるかもしれないけど……「バンドは生き物」って言い方があるじゃないですか。
──メンバーの人となり、言動の変化などによって音楽性や活動が変化していくということですよね。
ぼくりり 電波少女はバンドじゃないけど、「本当に生きている人がこの音楽を作っているんだな」というのがはっきり見えて。それが面白いところなんですよね。
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ほぼ素でいるハシシ
- 電波少女「HEALTH」
- 2017年9月27日発売 / アリオラジャパン
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初回限定盤 [CD+DVD]
3800円 / BVCL-823~4 -
通常盤 [CD]
2800円 / BVCL-825
- CD収録曲
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- INTRO
- ME
- FOOTPRINTZ
- 21世紀難民 feat. れをる(from REOL)
- 先天性ハートブレイク
- 花火 feat. NIHA-C
- MONEYCLIP feat. Jinmenusagi
- SKIT1
- 未来は誰かの手の中
- クビナワ feat. ぼくのりりっくのぼうよみ&ササノマリイ
- SKIT2
- NO NAME.
- A BONE feat. Jinmenusagi & NIHA-C
- OUTRO
- 初回限定盤DVD収録内容
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電波少女 ワンマンライブ“EST.”at Shibuya WWW X(2017.06.18)
- INTRO
- FOOTPRINTZ
- オルタネートエラー feat. トップハムハット狂
- Mis(ter)Understand
- Earphone feat. Jinmenusagi
- RY feat. Jinmenusagi
- オーバードーズ feat. NIHA-C
- MO feat. NIHA-C
- ME
- 笑えるように
- COMPLEX feat. Jinmenusagi, NIHA-C
MV&Short Movie
- ME MV
- FOOTPRINTZ MV
- NO NAME. -Short Movie-「デイドリーマーA」
- ぼくのりりっくのぼうよみ
「Fruits Decaying」 - 2017年11月22日発売 / CONNECTONE
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初回限定盤A
[CD2枚組]
3024円 / VIZL-1282 -
初回限定盤B
[CD2枚組+DVD]
4320円 / VIZL-1283 -
通常盤
[CD]
2700円 / VICL-64899
- CD収録曲
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- 罠 featuring SOIL & "PIMP" SESSIONS
- 朝焼けと熱帯魚
- Butterfly came to an end
- For the Babel
- SKY’s the limit
- playin'
- つきとさなぎ
- たのしいせいかつ featuring SOIL & "PIMP" SESSIONS
- 初回限定盤A、B付属CD
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- 久しぶりに歌ってみたCD(2tracks)
- 初回限定盤B DVD収録内容
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- ぼくりり Live DVD 2017.05.21 @新木場STUDIO COAST(5tracks)
- 電波少女(デンパガール)
- 2009年に複数のMCおよびトラックメーカーで結成されたユニット。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はラップ担当のハシシとDJ&パフォーマンス担当のnicecreamという2人で活動している。2013年7月に1stアルバム「BIOS」を、2015年7月に全曲フィーチャリングゲストを迎えた2ndアルバム「WHO」を発表した。12月にリリースしたiTunes Store限定シングル「COMPLEX REMIX feat. Jinmenusagi, NIHA-C」がiTunes Storeのヒップホップ / ラップのシングルチャートで1位を獲得する。2016年5月に7曲入りCD「パラノイア」をリリースし、11月よりヒッチハイク企画「“電波少女的ヒッチハイクの旅”47都道府県ストリートライブTOUR」を実施。2017年1月にヒッチハイクの旅を完遂し、夏にメジャーデビューを果たすことが決定した。メジャーデビューに先駆け6月より3カ月連続で配信シングルをリリース。9月にメジャーデビューアルバム「HEALTH」をアリオラジャパンからリリースした。
- ぼくのりりっくのぼうよみ
- 神奈川県横浜市在住の男性アーティスト。活動初期は「ぼくのりりっくのぼうよみ」「紫外線」名義で動画サイトにオリジナル曲や“歌ってみた”を投稿。トラックメーカーが作った音源にリリックとメロディを乗せていくスタイルをベースとする。高校2年生だった2014年、コンテスト「閃光ライオット2014」に応募し、ファイナリストに選ばれ一躍脚光を浴びる。同年7月には電波少女のハシシが主催するidler records から4曲入り音源「Parrot' s Paranoia」を発表。2015年12月にアルバム「hollow world」でビクターエンタテインメント内のレーベル・CONNECTONEより17歳でメジャーデビューした。2016年7月には4曲入りCD「ディストピア」を発表。紹介限定盤に収録曲をモチーフに書き下ろした短編小説と次作アルバムの構想を記したアイデアノートが封入され話題を集める。2017年1月にはアルバム「Noah's Ark」を発売。発売前にはオウンドメディア「Noah's Ark」を立ち上げた。11月にニューアルバム「Fruits Decaying」をリリースする。