音楽ナタリー Power Push - 電波少女
ネットラップ界に風穴開ける嫌われ者
嫌われ者でいたいけどバカにされたくはない
──自分で新しい道を切り開こうとは思わない?
ハシシ こんなこと言うと揚げ足取りみたいだけど、やり尽くされてるじゃないですか。あとはそれをどう組み合わせるか、ですよね。新しいことをやろうと思っても無理だから、他の人がやってる面白いことを参考にしながら、それを自分のものにしていくしかないなって。頭悪いですけど、曲は考えて作るようにしてますね。
──ということは、今の日本のヒップホップには面白いことをやっているアーティストがいて、かなり盛り上がっているという認識なんですね?
ハシシ 面白いことをやっている人はいると思うし、めっちゃスキルは上がってるけど、言うほど盛り上がってはいないんじゃないですか? ときどき「盛り上がってきてますよね」って言われるけど、どの規模感で言ってるのかな?って思うし。「前年に比べて」とか、そういうことかもしれないけど。やはり狭いシーンだと思うし、俺はそこで終わりたくないんですよね。
──なるほど。少し話が違うかもしれないですが、今のK-POPって本格的なヒップホップをベースにしているグループが多いですよね。例えば防弾少年団とかBlock Bとか。彼らも“どうやってコアなヒップホップをメジャーシーンに持っていくか?”ということを考えていると思うんだけど、かなり成功しているじゃないですか。
ハシシ 韓国のアーティストはアメリカの音楽を自分たちのものにするのがうまいと思います。消化の仕方もそうだし、スピード感、フットワークの軽さもあるし。というか、そういう音楽がメジャーシーンにないのは日本だけだと思うんですよね。もちろん「攻めてるな」と思う曲もありますけどね。
nicecream ダンスシーンもそうですね。ダンサー同士でしか盛り上がってないというか、ダンスをやる人口は増えてるんだけど、野球やサッカーみたいに“やらない人も観て、楽しんでる”という文化にはなってないので。
──そういう状況を少しずつでも変えたい、という気持ちは……?
ハシシ あんまりないですね。まずは「バカにされることが少なくなればいいな」っていうくらいなので(笑)。これはたぶん無理なんですけど、できればみんなに支持されたいんですよ。ヒップホップを好きな人にも、全然聴かない人にも。……「電波少女、好きです」って言われると、それはそれで疑っちゃうんだけど。
nicecream どうしたいのかわからない(笑)。
ハシシ 自分でもよくわからないんですけどね。嫌われ者でいたいけどバカにされたくはないし、「あいつらはうまいけど、嫌い」みたいな感じで認知されたい。
素直に書いた1枚
──リリックについても聞かせてください。前作に比べると「WHO」の楽曲の歌詞はかなり直接的になったと思うのですが。
ハシシ あ、そうですね。以前は韻を踏むことを重視したり“深いことを言ってる風”にしたくて、自分にしか理解できないようなリリックを書くことが多かったんですけど、確かに今回はだいぶストレートになったかな。ヘンにツウぶってるのもカッコ悪いし、なるべく普段使ってる言葉で書きたいとも思ったので。最近、自分で聴いていてグッとくる曲もそういうストレートなものが多いんですよ。あともっと自分のキャラもわかってもらったほうがいいなって。
──キャラクターを伝えることも大切?
ハシシ そうですね。自分の性格とか考えていることがわかったほうがいいだろうし、ラップを聴いて「この人、普段からこういう喋り方なのかな」って思ってもらえるのもいいことだと思うんです。
──ちなみにハシシさん、自分ではどんなキャラだと思う?
ハシシ えーと、すごい素直ですね(笑)。特に今回はすごく素直に書いてますよ。ヒネくれてるところも含めて、全部素直に書いてます。人があまり口にしないようなことだったり、「それ言っちゃったら、ちっちゃいヤツだって思われる」みたいなことも。そういう部分をカッコよく表現できるようになりたいんですよね。
──「MO feat. NIHA-C」も「あの女、最悪」っていう内容ですからね。
ハシシ 元カノのことを最低な感じで歌いました(笑)。かなり性格が悪いですよね、この曲。
nicecream うん(笑)。
ハシシ 全部相手のせいにして、自分の都合がいいようにしか考えない感じというか。そういう気持ちを繕ってキレイに言う人も多いと思うけど、あんまりキレイにしすぎるとナメられるんで。
──ナメられるとか、バカにされるとか、そこをすごく気にしますよね。
ハシシ なんて言うか、ポップス風のラッパーって軟弱に見られがちですよね? そういう人たちもちゃんとヒップホップを通ってると思うんだけど、それってなかなか伝わらないと思うんですよ。
──ヒップホップを通っているということを説明しないと伝わらないかもしれないですね。
ハシシ そう。逆に「俺は犯罪者で……」みたいなことをディープに歌ってるだけで「こっちがリアルなラッパーだ」と思っちゃう人もいるんですよ。
──確かにシリアスな内容の歌のほうが評価されやすい傾向はありますね。それはヒップホップだけじゃなくて、ロックバンドもそうだけど。
ハシシ “あがいてる”みたいな。俺もそういう曲が多いですけど、ある程度わかりやすくしてあげないと、音楽的バックボーンはヒップホップであると伝わらないので。
──なるほど。まあ聴き手がある程度の知識を持っていないと、伝わりづらい音楽ってありますからね。
ハシシ 両方に届けたいですからね。ヒップホップに詳しい人も、あまり聴かない人にも。俺はツウぶってる人も、ニワカっぽい人も両方嫌いですけどね、実は。
──ははは(笑)。ハシシさん、友達います?
ハシシ 友達……コイツ(nicecream)ですね。
nicecream 俺しかいないみたいです、友達(笑)。
次のページ » シーンに風穴を
収録曲
- OUTRO
- MO feat. NIHA-C
- HIPHOPLIFE3 feat. 抹 a.k.a ナンブヒトシ、NOBY
- LIAR GAME Remix feat. TWOFACE
- This world is クソゲー feat. SHAKABOOZ
- SKIT
- FRI_END feat. PA220 a.k.a mcgundam
- Earphone feat. Jinmenusagi
- NAVY BLUE feat. コカツ・テスタロッサ
- idler stella feat. nera_K、ぼくのりりっくのぼうよみ、野崎りこん
- オルタネートエラー feat. トップハムハット狂
- INTRO
- INVADER feat. RAq
電波少女「WHO」発売記念ミニライブ&特典引換会
- 2015年7月10日(金)東京都 タワーレコード渋谷店 4Fイベントスペース
START 19:00
内容:ミニライブ&特典引換会
お問い合わせ:タワーレコード渋谷店 03-3496-3661
電波少女presents "THAT GIRL"~2nd Album"WHO"Release Party featuring Oneman LIVE~
- 2015年7月20日(月・祝)東京都 Shibuya Milkyway
<出演者>
電波少女
ゲスト:コカツ・テスタロッサ / Jinmenusagi / トップハムハット狂 / NIHA-C / NOBY / 抹 a.k.a ナンブヒトシ / RAq / and more
電波少女(デンパガール)
2009年に複数のMCおよびトラックメーカーで結成されたユニット。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はラップ担当のハシシとDJ&パフォーマンス担当のnicecreamという2人で活動している。2013年7月に1stアルバム「BIOS」を発表。2015年7月に全曲フィーチャリングゲストを迎えた2ndアルバム「WHO」をリリースする。