最近は歌謡曲やフォークを聴くほうが落ち着く
──ちなみに普段はどんな音楽を聴かれるんですか?
アコースティック系が多いですね。このイヤフォンでは配信音源でノラ・ジョーンズとかを聴いてました。激しいのも聴いたほうが違いはわかりやすいかなと思ったんですけど、ついつい好きなものばかり聴いてしまいました(笑)。
──the band apartはメタルのコピーバンドから始まったそうですが。
まあコピバンと言っていいのかと思うほど低クオリティなものでしたけど(笑)。MetallicaとかMegadethとかの曲を演奏してました。
──荒井さんのルーツとしてはジョン・メイヤーといったシンガーソングライターの音楽や、シティポップのようなジャンルも挙げられていましたよね。ソロアルバム「プリテンダー」(2016年2月発売)は荒井さんのルーツが詰まった作品でした。
若い頃はThe Beatles、Carpenters、スティーヴィー・ワンダーとか親が聴いていたものを一緒に聴くことが多かったです。フォークソングも家にレコードがあったので、さだまさしさんとかの楽曲を聴いてたんです。ベースの原(昌和)もフォークが好きで出会った頃はその話題で盛り上がったこともあって(笑)。もともと歌謡曲っぽいのが好きだったのかもしれません。カッコつけて「俺は洋楽が好き」とか言いたくなるんですが、意外とそうでもなくて、好きなのはフォークソングとか歌謡曲で、サザンオールスターズがものすごく好きなんですよ。むしろ洋楽は10代後半に憧れをもって聴き出した音楽でした。
──洋楽だとTotoなども聴いていたそうで。
好きでしたね。あとハードロック系だとMr.BigやらDef Leppardやらいろいろ通ってはいます。自分の作品のインスピレーションになってるかはわからないですが、今このくらいの年齢になってくると普通にサザンを聴いたり、フォークっぽいのを聴いたりしているほうが、気持ち的には落ち着きますね。
──ギターを始めたきっかけは?
サザンとかCHAGE and ASKAをよく聴いていた頃、よくある話ですけど家に父のフォークギターがあったんですよね。それを触り始めたのが中3か高1くらいなんですけど、もっと昔からギターを弾くこと自体に憧れてたんだなと。今考えると、サウンド的なことを言えば何も知らないなりに、アコースティックギター特有の倍音に惹かれたと思います。
──音楽を始める前からギターの音が心地よく聞こえたんですね。
あとになってエレキギターの存在を知ったんですけど、映画「Back to the Future」でマイケル・J・フォックスがチャック・ベリーの「Johnny B. Goode」を演奏するシーンがありましたよね? 小さい頃から観てた映画ですけど、自分がギターに興味を持ったあとにあの映画のその場面を観て、「やっぱりカッコいい、これだ」って思ったんです。成長していく中で、子供の頃に漠然と好きだったものがなんで好きだったのかの答え合わせをしていって、そのシーンがギタリストへの憧れの始まりだったんだなってあとになって気が付きました。
入り組んだアンサンブルもクリアに聴こえる
──実際に「デノン AH-C820W」で聴いた楽曲の印象について感想をお伺いできますか。
先ほどの話にでも出てきたジョン・メイヤーの最新アルバム「The Search for Everything」(2017年4月発売)を一番聴きました。ジョン・メイヤー自身が機材オタクなので、イヤフォンの試聴にも最適だろうと。ミックスにもかなり時間をかけて完成させた作品みたいなんですけど、実際すごく作り込まれてました。このイヤフォンで音のよさが顕著に感じられたのはドラムとか生楽器系で、今まで聴いていた印象と少し違いました。空気感が伝わるというか、より立体的で、そういう繊細な部分の鳴りが聴いていて心地よかったです。
──the band apartの音源はどうでしたか?
新鮮な気持ちで聴けました。できあがった音源は最初スタジオで聴くんですが、スピーカーとイヤフォンだともちろん耳に届くまでの距離も違うから、スピーカーで聴く環境とはまた違ったよさを感じて。僕の使ってるアンプはトレブル、プレゼンスあたりのレンジに特徴があるんですけど、このイヤフォンだと高音のシャリシャリとかチリチリした部分にも心地よさを感じられたんですよね。
──倍音とかアタック感が耳ざわりでない感じ?
そう。けっこうそのあたりの音域は耳が痛くなりがちなんですけどね。バンドの音源に関して言うと、ミックスはわりと自分たちの出している音に対して忠実にやってもらっていて、アンビエント感も大事にしているからこそどうしても耳に痛い部分が出てしまうこともある。このイヤフォンに関しては音源を作っている側が意図したサウンドがしっかり鳴っていたので、再生環境でこうも響き方が変わるんだなと改めて思いました。
──the band apartの楽曲を聴いて、ほかに感じたことは?
1つひとつの楽器の音が捉えやすかったです。僕らの入り組んだアンサンブルの楽曲とかもわかりやすく聞こえました。
──木暮栄一(Dr)さんのドラムに関して言えば、ゴーストノートが細かく入っている曲もありますね。
実は細かいことをいろいろやってるんですよ(笑)。細かく聴こうとすれば普通のスピーカーでもイヤフォンでも聴き取れるくらいで鳴ってるんですけど、このイヤフォンだと何も考えずに聴いていても、その細かい音が自然に聞こえてきました。それが最初に言った疲れないって部分にもつながりますね。ちょうど「20 years」(2018年9月発売のベストアルバム)を出すにあたって再録した「Eric.W」は僕らの代表曲みたいなものなんで、1回でも聴いたことのある方だったら、イヤフォンを変えて聴くと違いがわかりやすいんじゃないかな。あと「KATANA」とか「SOMETIMES」は入り組んだアレンジの曲なので、このイヤフォンのクリアさがよくわかりました。音が塊になるのって、それがいい場合もあるかもしれないですけど、僕らはバンドの音がふくらんで聞こえる感じにしたいという意図もあって、そのイメージがより伝わりやすいなと。
──「デノン AH-C820W」を使ってthe band apartのトリビュート盤「tribute to the band apart」も聴いていただきました。感想はいかがでしたか?
ASPARAGUSの「Moonlight Stepper」はギターを重ねて録音していたので、その聞こえ方がより分離しているから聴いていて面白かったです。それと単純にいい音で聴いてほしいなと感じたのは、坂本真綾さんの「明日を知らない」のカバーですね。アコースティックで壮大なアレンジにしてもらっているので、気持ちよく聴けると思います。
初めてのBluetoothイヤフォン体験を終えて
──改めて、「デノン AH-C820W」ならではと思うポイントを教えてください。
パッと耳に着けて、どんなジャンルでも音楽を自然に楽しめるのは、いいイヤフォンの証なんじゃないでしょうか。Bluetoothイヤフォンは初めてでしたけど、完成度の高さに驚きました。
──今後新たなイヤフォンを探す際にBluetoothイヤフォンは選択肢に入りそうですか?
平気で何時間でも使い続けられるし、日常使いでコードが邪魔にならないっていう、Bluetoothイヤフォンならではの使い勝手もあるし、長く使えるものだろうなって。正直、こんなにいいものだとは思ってもみなかったです。使いやすいうえにこれだけハイクオリティなものがあるのであれば。なんだか初めて文明に触れた人みたいになっちゃいましたけど(笑)、このイヤフォンがあればいろんな環境で音楽をより楽しめそうです。