デノンが今夏、約10年ぶりの新製品となるレコードプレイヤー「DP-400」と「DP-450USB」の2種を発売した。
「DP-400」はシンプルなデザインにマニュアル仕様を備え、「DP-450USB」は「DP-400」をベースにUSBメモリへの録音機能を搭載した1台。老舗オーディオブランドならではの高音質に加え、使い勝手のよさやモダンなデザインが魅力的なレコードプレイヤーとなっている。
デノンでは新モデルの発売を記念して、柏倉隆史(Dr / toe、the HIATUS、REACH)のドラムソロ曲「PHENOMENON:1」と、柏倉とtoeのサポートを務める中村圭作による未音源化曲「trace a ripple」を収めたアナログ盤「デノンオリジナル・サウンドチェックディスク」を制作した。音楽ナタリーでは今回、カッティングしたばかりのラッカー盤(レコード盤制作のもととなる盤)を柏倉と中村に「DP-400」で試聴してもらう企画を実施。アナログで音楽を聴く魅力を交え、試聴してみての感想を語ってもらった。
取材・文 / 小野島大 撮影 / 須田卓馬
- DP-400 / DP-450USB
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- 外形寸法:W414×H105×D342mm
- 質量:5.6kg(ダストカバーを含む)
- 消費電力:10W
- 待機電力:0.5W以下(オートストップ機能有効時)
- ターンテーブル部
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- 駆動方式:ベルトドライブ
- モーター:DCサーボモーター
- 回転速度:33-1/3、45、78回転
- ワウフラッター:0.1% WRMS
- S/N比:62dB
- トーンアーム部
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- トーンアーム:スタティックバランス
- アーム有効長:220mm
- オーバーハング:16mm
- オフセット角:23度
- 針圧可変範囲:0~4.0g(1目盛り:0.1g)
- 適合カートリッジ自重:5.0~13.0g
- カートリッジ部
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- カートリッジ:MM型
- 出力電圧:2.5mV(イコライザーオフ時) / 150mV(イコライザーオン時)
- 最適針圧:2.0g
- 交換針品番:DSN-85
付属品:かんたんスタートガイド / ダストカバー / ダストカバースタンド / ターンテーブル / ターンテーブルシート / 45回転レコード用アダプター / カートリッジ付きヘッドシェル / カウンターウェイト / オーディオケーブル / ACアダプター / ACアダプター交換用プラグ ※「DP-450USB」はUSBメモリへのダイレクト録音が可能。
- 「デノンオリジナル・サウンドチェックディスク」プレゼントキャンペーン
対象期間:2018年8月2日(木)~2019年1月7日(月) -
期間中に「DP-400」「DP-450USB」を購入した方全員にサウンドチェック用アナログレコード「デノンオリジナル・サウンドチェックディスク」をプレゼント。キャンペーン告知前に購入された方も応募できます。
- 応募締切:2019年1月15日(火)23:59
- 応募方法:デノンのウェブサイト内の応募フォームに必要事項をご記入いただき、対象製品ご購入時のレシートまたは領収書と対象製品の保証書の画像をアップロードのうえ、ご応募ください。
- 「デノン オリジナルサウンドチェックディスク」
(EP盤 / 45回転 / 非売品)収録内容 -
- A面:「PHENOMENON:1」
by Takashi Kashikura(toe、the HIATUS) - B面:「trace a ripple」
Drums:Takashi Kashikura(toe、the HIATUS)、Piano:Keisaku Nakamura(stim)
- A面:「PHENOMENON:1」
アナログは畳のような温かさを感じる
──ラッカー盤ができあがってきたばかりということで、まだお二人もアナログの音はお聴きになってないんですよね。私もアナログは未聴で、先にデータで曲を聴かせていただいたんですが素晴らしくいい録音ですね。
柏倉隆史 それはもうエンジニアの……。
中村圭作 美濃隆章氏(toe)が、がんばってくれたんで(笑)。
──A面は柏倉さんのドラムソロ、B面がお二人のデュオの音源ですね。どちらも今回のプロジェクトのための新録とお聞きしてます。ここでしか聴けない非常に貴重な音源ということですが、そもそも今回のプロジェクトはどんな経緯で実現したんでしょう?
デノンスタッフ 弊社から約10年ぶりにレコードプレイヤーの新製品が出るので、そのプロモーションでアーティストさんと組んで何かやりたい、ということになって。どうせなら限定レコードを作ってしまえと。それでアーティストのプレイヤビリティが高く、曲としても完成度の高いものも入れたいと思っていたところ、お二人と一緒にやる機会をいただきました。
柏倉 ありがたいお話ですよね。デノンのプロジェクトの一環で我々の音源を作らせていただけるのは名誉なことだし、すごく面白そうだなと思いました。
──柏倉さんと中村さんが携わっているtoeは、ずっとCDと共にアナログも出してますよね。もともとお二人はアナログにはこだわりがあったわけですか?
柏倉 そうですね。僕はもともとアナログを買って育ってきた、という年齢じゃないですけど、お金がないときに昔の音楽を勉強するために安い中古アナログ盤を買ったりしてましたし、CDと同じやつをあえてアナログで買い直したりしていた世代だったんです。
──音楽に興味を持ち始めたときは、すでにCDの時代になっていたわけですね。
柏倉 はい。
中村 僕は東京に出てきてから、アナログを買い始めたんです。周りにレコ屋さんがたくさんあったので。ソウル、R&Bが好きだったんで、CDで出てないやつはアナログで探して。
柏倉 各ジャンルごとに特化した専門店があって、「こういうジャンルのものを欲しいときはこの店に行く」、みたいに選べるぐらいのお店がいっぱいあったんですよね。
──渋谷や西新宿を1周して……みたいな(笑)。
柏倉 そうそう(笑)。
中村 渋谷、下北、西新宿、高田馬場って回ったり。
柏倉 そういうところで「これ、初めて見た!」みたいなのを見つけたり。
──アナログとCDとの音の違いは感じますか?
柏倉 そうですね……アナログレコードってやっぱりレンジがちょっと狭い感じはするんです。CDみたいなデジタルなものに比べるとわかりにくいところはあるんですけど、味わいだったり、ギュッと音が凝縮している感じは耳にいいと言うか。体にいい音だなって思いますね、レコードって。デジタルってずっと長く聴いてると疲れちゃったりするんですけど、アナログって長く聴いてても疲れないし、長く楽しめる気がします。
──これまでの活動の中でお二人の作品はアナログ、CD、配信、ハイレゾ音源といろいろな形で出ているわけですが、制作の際にそれぞれの違いみたいなものは意識しますか?
中村 しますね。比べれば全然変わりますから。ハイレゾはすごく細かいところまで再現できて、耳に聞こえるか聞こえないかぐらいの帯域までしっかり出せる。レンジが広くてキラキラしてて、ちょっと未来の感じの音がする。CDは現代と言うか同時代、アナログはちょっと過去ですね。でもアナログは温かさを感じる。畳みたいな。強引に言葉で表すと、畳とフローリングと新しい床の違いみたいな(笑)。アナログの特徴ってもちろん音もあるんですけど、ユーザーの人にとってはジャケが大きかったりとか、そういうモノとしての違いが大きいと思うんです。パッケージから楽しめるというのはありますよね。音に関しては、クラブでDJがかけるデカい音はCDやMP3だとレコードに比べて音が薄くて疲れちゃう。でもアナログのDJはふくよかなローが出てて全然違うんです。そういう意味でもレコードは大好きですね。
体が勝手に動くようなドラムソロ
──今回のデノンオリジナル・サウンドチェックディスクに収録される曲の選曲理由は?
柏倉 ドラムソロはプレイヤーのチェック用ということでリクエストがあって。
デノンスタッフ ひと昔前に「The Sheffield Lab Drum & Track Disc」っていう、ジム・ケルトナーとかが叩いているインプロビゼーションのチェック用レコードがあったんですね。そのような、オーディオメーカーらしい特典レコードを作りたかったんです。僕はもともとtoeが好きで、そのレコードで柏倉さんが叩いてくれないかなと思ってたんです。レコードのチェックにも使えるし、ドラムの音楽性も訴えられるなと思いつつ、自由に作っていただきました。
柏倉 ドラムソロっていうと、あらかじめかっちり決まったものもあるし、自由なものもありますけど、今回は何も考えず体が勝手に動くような感じでやってみました。
──でもすごくバランスがとれていて、普通に聴いて楽しめるものになってると思いました。
柏倉 そう言っていただけるとうれしいですね。美濃くんも言ってたんですけど、toeでやるときはギターもいるし、いろんな音が入ってるからトラック数が増えるんです。でも今回はドラムだけにトラックを使えるから、すごくいい音になってますね。
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音源として聴きたいと思ってもらえる音作り