ナタリー PowerPush - 電気グルーヴ
アルバム誕生エピソードから不味い蕎麦屋の話まで! 本音トーク満載のロングインタビュー
さんぷんまるの曲なんて言われても
——「J-POP」と「YELLOW」は制作時期が近いのに、アルバムから感じるイメージがずいぶん違いますね。
卓球:そりゃあだって、間違いなくこっち(「YELLOW」)のほうが内容が良いですから。
——やっぱり「最新作が常に最高傑作だ!」みたいな気持ちがあるんですか?
卓球:っていう風に普通だったら俺言わないんですけど、でも今回だけは言うんですよ。マスタリング終わってから2回も聴いたのこのアルバムくらいですよ。こっちのほうが聴いてて気が楽なんですよね。前回のよりも。
——気が楽というのはどういうことなんでしょうか。
卓球:売れる枚数もだいたいわかってるし。
——あ、音的な話ではなくて?
卓球:じゃなくて。
瀧:過度な期待もないしね。
卓球:フェスが終わってみんな金も使い果たしたところだしさ(笑)。
——「J-POP」のときは気負いみたいなものがあったんですか?
卓球:気負いというよりも、ある程度こっちもサービスしようっていう気持ちがあって。
瀧:責任感ですよだから。責任感から来るサービス精神。
卓球:「J-POP」は8年間ブランクがあって出たので、やっぱりこう期待されてる部分もあって。当時はそんなに意識はしてなかったんですけど、あとから振り返ると無意識に責任感を感じてた部分があったんだなと。でも今はもう、1枚出したっていうことで僕たちの中で完全に宿題を済ませた感じだったので、「YELLOW」は責任感がまったくない状態で作れたと思います。
瀧:うん、そうそう。
卓球:だからって今回は手を抜いたってわけじゃないんだけど。「J-POP」は力が入りすぎてる部分があって、本当は深追いしなくても済むようなところも深追いしすぎて、ちょっと本質的なところとは変わってしまった部分もあったなと。それに前のアルバムだと「グミ・チョコレート・パイン」の主題歌としてとか、「墓場鬼太郎」のためにとか、依頼があって曲を作るっていう縛りもあったし。
——でも「さんぷんまるのうた」も、一応番組のために書き下ろしてくれって言われて作った曲なんですよね。
卓球:そう。でもイメージが無いじゃないですか、「さんぷんまる」の曲なんて言われても。青春映画とか鬼太郎とか、そういうお題目がないですからね。ちなみに「さんぷんまる」で依頼されたのはテレビ用サイズのもので、もともとそれしか作ってなかったんです。曲にしてくれって要望もなかったしそのまま放っておいても良かったんですけど、アルバムの収録曲を決めてるときに、あの曲もせっかくだから入れようよ、じゃあ3分きっかりで終わるようにしようよ、って話になって、改めてアルバム用のものを作ったんです。あと「Mojo」もTDKのCMに書き下ろしたんだけど、特に歌詞のあるものでもないので外部からの要望がすごく少なくてその分こっちもやりたい放題できるし、非常にやりやすかった。着地点はわからないんだけど、その作ってる過程を前よりも楽しめました。
瀧:いったい何に向かって作ってるんだか自分たちでもよくわかってなかったからね。
卓球:もちろんアレあってのコレなんで、別に「J-POP」を否定する気は全然ないんですけど。時期も近いし、ほとんど同じ機材で同じような環境で作ってるわけだし。
気づいてるのは俺と瀧くらい
——「Mojo」は「CM mix」と題してテレビCMで使っていたものがそのまま収録されてますが、CMのために書き下ろしたということはロングサイズのものは作っていないんですか?
卓球:これはもともと8分くらいの曲だったんですよ。
瀧:初回盤DVDの中に入ってますよ。メニュー画面に。そこで全部聴けますよ。
卓球:そうやって多面的に楽しめるように作ってるんですけどね。でもいまいち伝わらないんですよねぇ。
瀧:そうだね。やっぱみんな、メニュー画面をそこまでじっくり観ないんじゃないかな(笑)。
卓球:ウチらってけっこう、今までもメニュー画面に力入れてるんですけどね。あそこの曲って全部書き下ろしだし、しかもフル尺で収録してるんだけど、みんなすぐ飛ばしちゃうんだよな(笑)。
瀧:「J-POP」のやつもいいんだけどね。
卓球:あの音楽って実は、ライブDVD「電気グルーヴ Live at FUJI ROCK FESTIVAL '06」のメニュー画面からずっとシリーズになってて曲がつながってるんですよ。メロディは同じだけどアレンジが変わってるっていう。たぶんそれに気づいてるのは俺と瀧くらい。下手すると瀧も気づいてないかも(笑)。
瀧:あれ?似てねえ?似た曲が多いなー?みたいにな(笑)。
CD収録曲
- Mojo(CM mix)
- No.3
- さんぷんまるのうた / Sanpunmaru No Uta(Album mix)
- Mole~モグラ獣人の告白 / Mole~Confession of Mole Man
- どんだけtheジャイアント
- Acid House All Night Long
- ア.キ.メ.フ.ラ.イ. / A. Ki. Me. Fu. Ra. I.
- The Words
- 湘南アシッド / Shounan Acid(Album Edit)
- Area Arena
- Fake It!
初回限定盤DVD収録内容
- Mr.Empty
- ズーディザイア
- 半分人間だもの
- モノノケダンス
- 少年ヤング
- Cafe de 鬼(顔と科学)
プロフィール
電気グルーヴ(でんきぐるーぶ)
80年代後半にインディーズで活動していたバンド・人生の解散後、石野卓球とピエール瀧が中心となり結成。テクノ、エレクトロを独特の感性で構成したトラックと、破天荒なパフォーマンスで話題になる。1991年にアルバム「FLASHPAPA」でメジャーデビューを果たし、同年に砂原良徳が加入(1998年に脱退)。1995年にベルリンのレーベルからシングル「虹」がリリースされたのをきっかけに、海外での活動もスタートさせる。1997年にリリースしたシングル「Shangri-La」が爆発的なヒットを記録。2001年、「WIRE01」のステージを最後に活動休止に突入する。その後はそれぞれソロ活動に専念するが、2005年に再始動。2008年には8年ぶりのアルバム「J-POP」をリリースしている。