ねも卒業に向けた思い
──お話を聞いていると充実した1年だったようですが、とはいえずっと順風満帆というわけではないですよね。ツアーの中止もありましたし、体調不良でお休みしていた根本凪さんも4月末で卒業という形になりました。ねもさんの卒業に際してはいろんな思いがあると思いますが、そのあたり少し聞かせてください。
相沢 ねもちゃんがお休みしてから私たちも彼女の負担にならないようにといろいろ話しかけたり発信したりすることを控えてたんですけど、3月からのツアーも発表になる中でこのままでいいのかなって気持ちはあって。そんなときに、この前2月11日にファンクラブ限定のライブがあったので、MCでねもちゃんへの思いを1人ひとりけっこう長く話したんですよね。そしたら次の日にねもちゃんが「ありがとう」とツイートしてくれてて。
──配信なしのライブでしたが、ねもさんにも伝わったんですね。
相沢 そこでやっとつながったというか、改めてねもちゃんとでんぱ組.incは離ればなれじゃなかったんだって感じられて「ツアーがんばろう、リリイベがんばろう」とまっすぐ思えるようになりました。
藤咲 ねもちゃんにもファンのみんなにも届けたい気持ちがあったけど、SNSで何か書くのもなんだか違う気がしてて。それまでうまく言葉にできなかったことをあの日ファンクラブのライブで言わせてもらったんです。私たちも前を向いていくし、ねもちゃんも新しいステップに進んで大丈夫だよって。今はその言葉を心の底から伝えたいです。
──ねもさんの一番近くで同じ時間を過ごしてきたぺろりんは今どんな気持ちですか?
鹿目 正直ねもちゃんの卒業が決まったときは「次の夢が決まったんだね、おめでとう」みたいな明るい気持ちにはなれなくて、今までお互い支え合ってきたから心細いし、自分の中でモヤモヤした気持ちがありました。
──絆が深い分、切り替えるのは難しいですよね。
鹿目 すぐに割り切れるような仲じゃないから。本心を言えば「ねもちゃん大好きだよ! がんばってね!」みたいな美しい気持ちだけじゃなかったです。でも最近ちょっとずつ心の整理ができてきたから、まだちょっと時間がかかっちゃうかもしれないけど、ねもちゃんのためにも自分のためにもがんばろうと思えるようになってきました。
──あと現実問題として、ねもさんの歌割りをみんなで分けるのも大仕事ですよね。
相沢 そうですね。どのパートもねもちゃんのパワーが詰まってるので。
小鳩 私が受け継いだパートは最初ねもちゃんみたいに力強くて繊細な感じで歌いたくてがんばってたんですけど、ねもちゃんの影を追い続けるよりは、残してくれたものを大切にしながら自分で解釈して自分の歌い方で歌おうって最近は思ってます。
自分がでんぱ組.incを守るんだ
──今は根本凪さんが病欠中、古川未鈴さんが育休中ということで、まだしばらくは8人体制の活動が続きます。完全体とは言えない状態ですが、皆さんどんな気持ちでステージに立っていますか?
空野 とにかく必死かもしれないです。今はこのメンバーででんぱ組.incを守りたいという気持ち。8人の団結力を感じてます。
愛川 この1年全部が絶好調ってわけではないと思うんですけど、そんな中でも今のでんぱ組.incだからこそできるパフォーマンスの形があるはずなんですよね。今はそこに向けてもっとがんばりたいと思ってます。
高咲 でんぱ組.incのメンバーは10人だけど、そのほかにも関わってくださる方がたくさんいて。そういう方たちの応援とか期待とかいろんな思いがあって、私たち8人はそれをステージで伝える担当だと自分は思ってるんです。だからステージに立ってるのが8人であっても10人であってもその気持ちは変わらないのかなって。
──8人が背負ってるのはねもさん、みりんさんの魂だけじゃないんですね。
藤咲 うう、私、今の話すごく感動してしまった(笑)。先輩に遠慮したり「私はまだまだです」って言うんじゃなく、自分がでんぱ組.incを守るんだ、伝えていくんだって言ってくれたのがうれしくて。今ちょっと目がうるうるしてます。
相沢 みんなホントにいい子なんですよ。これYumiko先生が言ってたんですけど、最近は新しく入ったメンバーも「でんぱ組.incは自分のものなんだ」という意識で主体的に発信してくれるようになってきて、だから昔の曲を今のメンバーでやっても違和感がなくなってきたんだよねって。
──この1年間の変化と成長はかなり大きかったようですね。
相沢 10年やってきたグループがこんなに変わるんだって思うくらい変わりましたね。この5人が入るまで実はまともにミーティングしたこともなかったし、ちゃんと時間をとって自分の考えを伝え合ったりとか、そういうのはなかったんです。昔はライブの本数も多くていつも一緒にいたからお互いのことを自然と理解してたのかも。今は時間があんまり取れない分、とにかくたくさん話すようにしてます。
藤咲 うん、ライブがたくさんできない時代だからこそ、しっかりディスカッションして1つひとつのライブに集中して、私たちが伝えられるものを詰め込んでいきたい。
──以前のでんぱ組.incは「舐めんな!」的なハングリー精神や上昇志向がグループの推進力になっていた部分があったと思うんですが、そういうものは今はなくなりましたか?
藤咲 いや、今も全然ありますよ(笑)。ただ以前とは向かう方向が違うのかも。私が加入した頃の6人時代はメンバー全員ライバルみたいなところがあったんですよね。今は競い合う相手がメンバーじゃないだけで、また違う何かと戦ってはいて、それは例えば変化への恐怖なのかもしれない。今私たちが最高だと思って作っているものに対して「こんなのでんぱ組.incらしくない」とか「変わったね」と言われることもあって、それに対する気持ちは今の私の原動力になってます。
ボロボロになって歩き疲れた果ての「DEMPARK」
──そして3年ぶりの全国ツアーもいよいよスタートしますね。
相沢 3度目の正直ツアーですよ。2回中止になってるからホントにうれしいです。
高咲 私とあおにゃん、りとくんはツアー自体が初めてなんです。東京の地を離れてしかも「え? みんなで泊まる?」みたいな(笑)。その地方のおいしいもの食べるとかきれいな景色を観るとかも楽しみだし、修学旅行気分で今からワクワクしてます。
──ライブはどんな内容になりそうですか?
高咲 すごいと思います。自分がファンとして観に行くとしたら「わー! えー!」って(笑)、言葉にならない驚きとうれしさでいっぱいになる。
鹿目 新体制になってからの曲は「ドキ+ワク=パレード!」だけじゃなく「好感Daybook♡」とか「初体験」とかもそうなんですけど、自己肯定感が強くて明るい曲が多いんですよね。それをでんぱ組.incらしくないと感じてる人もいるかもしれないけど、なんで私たちが今こういう曲を歌っているのか。その理由が今回のツアーでわかってもらえるかもしれないです。
──最近のライブではソロやユニットのコーナーも目立ちますが、その方向性は変わらずですか?
天沢 意外と裏切られると思います。
藤咲 いいコメント(笑)。セトリが最高なんだよね。
空野 最高だけどエネルギーめっちゃ使うんですよ。しかもツアーで5公演もあるし今から震えてる。あっ、これが武者震いってやつかも!(笑)
愛川 攻め攻めのセットリストだから、まずは体力作りをがんばらなきゃと思ってます。ファンの方の期待値も高まってると思うので負けないようにしたい!
──セットリストに関して言うと、いわゆる代表曲やライブ定番曲でこの1年やってない曲がいくつもありますよね。そういう曲もそろそろ聴けるんでしょうか?
藤咲 ふふふ(笑)。
相沢 いやー、驚くだろうなー(笑)。
──皆さん今すごく不敵な笑みを浮かべてますね。
相沢 自信はあります。あおにゃんが言う武者震いじゃないけど、このメンバーでいるとパワーが湧いてくるんですよね。
空野 新規の人から古参まで楽しめるような、タイムトラベルしてるみたいな感じになるかもしれないです。
──意外な過去曲の披露なんかもありそうですか?
藤咲 アリアリのアリですね(笑)。攻撃力200%のセトリだと思います。ツアータイトルが「お前らDEMPARKまで行くんだろ?乗りな!」ですからね。乗ったからにはもう降りられないよって(笑)。
相沢 新しくなったでんぱ組.incがこの1年間すごく悩んで迷って、ボロボロになりながらいっぱい考えて歩き疲れた果てにこの「DEMPARK」があるという気持ちなんです。ポスターのビジュアルが荒野を歩くでんぱ組.incなんですけど、それがまさにこの1年ちょっとを表してる感じ。これからでんぱ組.incがどうなっていきたいのかを示すツアーになると思うので、ぜひぜひ観に来てほしいです。
公演情報
でんぱ組.inc Zeppツアー2022「お前らDEMPARKまで行くんだろ?乗りな!」
2022年3月26日(土)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)(※延期)2022年3月28日(月)愛知県 Zepp Nagoya(※延期)- 2022年4月22日(金)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2022年5月7日(土)北海道 Zepp Sapporo
- 2022年6月11日(土)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)
※記事初出時より、一部公演が延期になりました。延期公演のスケジュール等、詳細に関しては追って発表されます。
プロフィール
でんぱ組.inc(デンパグミインク)
古川未鈴、相沢梨紗、藤咲彩音、鹿目凛、根本凪、愛川こずえ、天沢璃人、小鳩りあ、空野青空、高咲陽菜からなる女性アイドルユニット。メンバーはそれぞれアニメ、マンガ、ゲームなどに精通したオタクとしても知られ、“萌えキュンソング“と呼ばれるアッパーな楽曲と情感豊かなライブパフォーマンスで国内のみならず海外からも話題を集める。2011年にシングル「Future Diver」でメジャーデビュー。2014年5月に初の日本武道館公演を行い、2016年12月にはベストアルバム「WWDBEST ~電波良好!~」をリリースした。2021年2月をもって現在の10人体制となり、同年5月に現編成での初のシングル「プリンセスでんぱパワー!シャインオン! / 千秋万歳!電波一座!」をリリース。2022年3月16日に21枚目のシングル「ドキ+ワク=パレード!」を発表した。