「箱庭の掟」は明るい「W.W.D」?
──シングルと同日には2021年11月に行われたワンマンライブ「箱庭の掟」の映像もリリースされます。
愛川 素敵な景色をファンの皆さんに作ってもらえて幸せでした。私はずっとハロー!プロジェクトさんに憧れていたので、自分が中野サンプラザに立って後ろのほうまでお客さんがいっぱいという状況が、これはもう宝物だなって。
──この日のライブは新しいでんぱ組.incの形を見せつける挑戦的な内容でしたね。
鹿目凛 個人の見せ場が多いんです。私は「キラキラチューン」を“ぺろりんバージョン”でやらせていただいたんですけど、ストーリー仕立てのダンスを通して自分のキャラクターと立ち位置が見えた気がしてます。今まではなかなか普通になれない、どこか変なところが自分にあるのを気にしてたけど、このライブでメンバーが「みんなでフォローするから大丈夫だよ」って支えてくれているのがよくわかったので。
──そのほかにも「NEO JAPONISM」を6人で歌ったり「待ちぼうけ銀河ステーション」はりとくんとりあぴのデュオだったりと、普段とは違う見どころがたくさんありました。
天沢 アイドルのライブというより演劇に近かったと思ってて。演出に一貫性があって、その中での配役というか、この曲はこの人が歌うことでもっと素敵な曲になるっていうのが伝えられた気がする。あおにゃんが「アンサンブルは手のひらに」をソロで歌うことで新しいよさが見えたりとか。
鹿目 みんなそれぞれの世界線のヒロインなんだよね。それが改めて極まったライブだったと思います。
空野 私自身は「アンサンブルは手のひらに」を歌えるようになるまでがけっこうキツかったです。アイドル活動を長く続けてるけど、パフォーマンスに自分の気持ちをちゃんと乗せるのが実はすごく苦手で、レッスンのときもみんなに見守られながら大泣きしたりして(笑)。それくらい葛藤して自分の中でもがいてやっと完成したのがあの歌だったので。
相沢 ソロとかペアの演目が多かったのは、メンバー全員がでんぱ組.incを背負ってることを実感するためだったと私は思ってるんですよね。Yumiko先生はそういう意図で演出したんじゃないかな。だから「箱庭の掟」は実は明るい「W.W.D」だったんではないかなというのが私の解釈です(笑)。私は独唱で「秋の葉の原っぱで」を歌ったんですけど、前から私「あの曲は卒業ライブで歌いたい」と言ってたんです。それをこのタイミングで歌ったからお客さんもヒヤッとしたみたいだし、私自身はYumiko先生から「簡単に卒業できると思うなよ」と言われてるみたいで。ライブ中はそんなことを考えてました。
新メンバー5人の成長ポイント
──昨年2月に新メンバー5人が加入してから早くも1年が過ぎました。振り返ってみてどうですか?
高咲 あっという間な気もするけど、この1年をスライドショーみたいに振り返ると濃くて長かったなと思います。
相沢 1年に詰め込む量じゃなかったよね(笑)。
──皆さんこの1年で自分自身の成長を実感してるのでは?
空野 私はもっと自分の気持ちをさらけ出していかなきゃならないんだって感じた1年でした。疲れたとか苦しいとかの気持ちを見せないのがアイドルだと思ってたし、それもある意味正しいんですけど、人間として愛してもらうためにはもっと自分を見せたほうがいいんだなって。例えば傷跡がいっぱいあるならそれを見せつけていく。それぐらいしないとやっぱり人の気持ちは動かないんですよね。今の時代は作られたものだけじゃダメだと思うし、自分が今後どういうアイドルになりたいかを気付かせてくれた1年だったなと思ってます。
──今は自分の傷を見せても大丈夫だと思えるようになった?
空野 そうですね。今はみんなが支えてくれて、それができる環境にいることに気が付いたというか。背中を押してもらって自分の考え方自体がちょっと変わった気がします。
天沢 わしも自分の考え方変わったと思う。入りたての頃は自分はこうでないとダメだみたいなのがけっこう強くて、例えばスカートはあんまり履きたくないとか、かわいい振り付けはやりたくないとか、自分の中でいろいろあって。周りのみんなも最初の頃は「りとがやりたいようにやりなよ」って感じだったんですけど、一緒の時間を過ごす中でだんだん「こうしてみたらいいんじゃない?」みたいにアドバイスをくれるようになって、自分自身も「いいかもしれないな」と受け入れられるようになりました。ステージでしゃべるのも最初は怖くていつも短い言葉で終わらせてたけど、思い切って自分の言葉でしゃべってみたら意外と大丈夫だったり。少し柔らかくなれたのかなって気はしてます。
高咲 私が加入してから感じたのは「自分の観てきたでんぱ組.incとはいい意味で全然違ってたな」ってことで。ライブ1つやるにもたくさん話し合いをしたり周りの人たちからアドバイスをいただいたりしながら作ってて、ただ歌って踊ってるだけじゃなかった。1つひとつの振り付けに全部意味があるのも知らなかったし、どうしたら自分の見せたい部分をうまく伝えられるかをすごく考えたりもして。自分と向き合う機会が多くてそれに一番びっくりしました。
小鳩 私は昔から人と関わることが苦手で、しかも苦手なことをシャットアウトしてしまう性格だったんですけど、それってこのお仕事をしていく上では致命的で(笑)。でも最近やっと苦手なことでもトライしてみようという考え方ができるようになってきました。周りの皆さんのおかげです。
愛川 私は「この1年がんばった!」って自分で言うとアレなんですけど、けっこうがんばれたんじゃないかなと(笑)。今までのアイドル活動では最年長でお姉さん的なポジションが多かったけど、でんぱ組.incに入ってからはみんなについていくので精一杯で。すごい先輩たちと自分を比べて落ち込んだりとか劣等感を感じたりしながら、初めて自分の弱さと向き合った1年でした。正直そこを乗り越えて強くなれたかというとまだまだですけど、このメンバーと一緒に活動できてるのは本当にありがたいなと思ってます。
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ねも卒業に向けた思い