でんぱ組.incがニューシングル「ドキ+ワク=パレード!」をリリースした。表題曲は浅倉大介が作編曲、前山田健一が作詞を担当。まるでテーマパークのパレードのようなファンタスティックなサウンドに乗せて、「叶えたい大きな夢」についてまっすぐな表現で歌った楽曲だ。
新メンバー5名の一斉加入という、グループにとっての大きな転機を迎えてから約1年。その間にメンバーはそれぞれが自分自身と向き合いながら成長を続け、新しいでんぱ組.incの形を示してきた。音楽ナタリーでは今回、古川未鈴と根本凪を除く8人にインタビューを実施。新体制になってからのグループの変化や、現在の8人体制でのライブ活動など、さまざまなトピックについて話を聞いた。
取材・文 / 大山卓也
アイドルは夢を持たなきゃいけない?
──「ドキ+ワク=パレード!」は夢をテーマにしたポジティブな歌詞が印象的です。でんぱ組.incがこんなにまっすぐな曲を歌うのは珍しいですね。
藤咲彩音 初めて聴いたときすごくストレートだなって思いました。「夢」という強いワードがまっすぐ入ってくる感じもびっくりしたし。
愛川こずえ 冒頭のセリフ部分で「私たち 自分のことで精一杯で聞き忘れてたけど / 君の夢のこと 教えてほしいんだ」って呼びかけてるのが新しいですよね。曲調もゆったりしていて、「好感Daybook♡」「初体験」(いずれも配信限定シングル)からつながる流れの集大成なのかなと思います。
天沢璃人 わしは最初に聴いたとき「自分が歌っていいのかな」と思ってしまって……。自分が夢というものをあんまり持ってないし、夢=なんだか壮大なものだと思ってたので。でもYumiko先生(振付演出家)と曲について話していくうちに「止まっている自分を次の目的地に動かす何か」のことを「夢」って表現してるのかなと思うようになって。家を出てジュース買いに行くとかでもいいんですけど、動くことによって自分が変わる。夢を持つことは自分を救うための行動なんだって今は理解してます。
小鳩りあ 私も夢という言葉にはあんまり前向きな印象を持ってなかったんです。大きい夢を持つのは素敵なことだけど、同じくらい苦しくて大変な道のりでもあるので。だけど夢があるから今まで生きてこられた部分もあるのかなって。
──夢が自分の支えになっていた?
小鳩 私は上京して6年になるんですけど、地元の福岡に凱旋して大きいライブをするのがずっと夢だったんです。今度ツアーで福岡に帰れるから夢が叶うんですけど、同時に道しるべがなくなる不安もあって。でもこの曲を聴いて「大きい夢は素敵だけど明日生きるための小さい夢も毎日ちゃんと持って生きていけたらいいよね」と思うようになりました。
藤咲 うん、そんなに気負わなくていいんですよね。特に今はコロナ禍ということもあって不安な日々で、自分もそうだからわかるけど、夢を持つことは怖いし失敗もしたくないという人が多い気がして。だからもうちょっと夢のハードルを下げてみてもいいと思う。
──アイドルは夢を見せる仕事だと言う人もいますが、そんな意見についてはどう感じますか?
相沢梨紗 これまでも夢という言葉は自然に口にしてきたし、私たちが夢を掲げればファンのみんなはついてきてくれると思うんです。でも自分たちの夢にファンのみんなを巻き込む以上その夢は叶えなきゃいけないし、みんなのためになる夢じゃないといけない。夢には責任が付いてくるんだって、こんなに明るくて元気な曲を聴きながらそのことにハッと気付いて衝撃を受けたんですよね。自分自身「アイドルは夢を持たなきゃいけない」みたいな言葉にぐるぐる縛られてたのかもしれないなって。ヒャダインさんはいつも必要なタイミングで私たちに必要な歌詞を書いてくれるんです。
電波ソングで秋葉原の血が騒ぐ
──カップリングの2曲は「ドキ+ワク=パレード!」とは対照的に、どちらも古き良きスタイルの電波ソングですね。
高咲陽菜 すごく好きです(笑)。
空野青空 今だからこそやる意味があるよね。
藤咲 私は1歳からコスプレ会場に通ってたから、こういう曲を聴くと秋葉原の血が騒ぐんですよね。あの頃の恥ずかしさとうれしさと中二病感が走馬灯のようにやって来て最高です。
──「でんぱせいばぁ☆」の歌詞には「ゆんゆん」といういにしえの電波ワードも織り込まれています。
空野 私「ゆんゆん」って知らなくて、意味を調べてまた改めてアキバの歴史の深さを知りました。「MIKATAせずにはいられないっ!」も高速すぎてライブで歌えるのかめちゃくちゃ不安だし。
愛川 「MIKATAせずにはいられないっ!」は私も早口パートを多めにいただいたんで、ライブではがんばりたいです。古き良き電波ソングを今のでんぱ組.incで歌えるのがうれしいですね。
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「箱庭の掟」は明るい「W.W.D」?