でんぱ組.inc|古川未鈴と成瀬瑛美が振り返るえいたそ卒業公演、転換点にいる2人の新たな目標

成瀬瑛美のでんぱ組.inc卒業公演「ウルトラ☆マキシマム☆ポジティブ☆ストーリー!! ~バビュッといくよ未来にね☆~」が2月15、16日に東京・チームスマイル・豊洲PITで行われた。このライブをもって成瀬はグループを卒業し、愛川こずえ、天沢璃人(RITO / meme tokyo.)、小鳩りあ、空野青空(ARCANA PROJECT)、高咲陽菜が新たに加入。新メンバー5人は成瀬の卒業公演のラストに登場し、突然の10人編成による新体制お披露目でファンを驚かせた。

音楽ナタリーでは1月に妊娠を発表した古川未鈴、グループ活動を終えた成瀬にリモートでインタビュー。大きなターニングポイントを迎えた2人に、公演を振り返りながらそれぞれの今後についてじっくり語ってもらった。

取材・文 / 大山卓也

集大成みたいなライブにはしたくない

──まずは2月16日に行われたえいたそ卒業ライブを振り返ってみたいと思います。とてもハートフルな温かいライブになりましたね(参照:成瀬瑛美でんぱ組.incに「ポジティブ☆ストーリー」の置き土産、メンバーは10人体制で未来へ)。

成瀬瑛美 ありがとうございます。自分でも大成功だったなって思います。観てくれた人の中には寂しい気持ちもあると思うんですけど、それ以上にハッピーで面白くて楽しい印象を植え付けられたんじゃないかと思っていまして。ハッピーでしたよね?

──ハッピーでしたね。えいたそらしいステージでした。

古川未鈴 私の中で、卒業式は今までの集大成を見せつける盛大なライブというイメージがあったんですけど、最初にえいたそが「集大成みたいなライブにはしたくない」って言っててビックリしたんですよね。でも実際やってみたらめちゃくちゃいいライブになって、たそちゃんが目指していた世界はこれだったんだなって。

成瀬 みりんちゃんに伝わってすごいハッピーです。私そもそもアイドルの卒業式をあんまり観たことなくて、ただただ自分らしくやったらこの形に落ち着いたというか、めちゃくちゃコンセプチュアルになってしまった。

「ウルトラ☆マキシマム☆ポジティブ☆ストーリー!! ~バビュッといくよ未来にね☆~」の様子。

──えいたそが描いたマンガのストーリーに沿って進行していく内容でしたね。

成瀬 MCもマンガの流れに沿って進んでいくから、みんなすごく練習してくれて。

古川 お客さんが声を出せない状況なので参加型のライブじゃなく鑑賞型のライブを目指したほうがいいということで。こっちのMCで流れを作っていく感じでしたね。

最後にみんなでグダグダできた

──ダブルアンコールで6人がTシャツ姿で再登場して、えいたそがメンバーへの手紙を読むコーナーがアットホームでよかったです。

古川 卒業ライブとしてはけっこう異例の構成だと思うんですけど、実は新メンバーの高咲陽菜ちゃんが年齢の制限で夜遅くにライブができないという事情もあって時間配分が難しかったんですよね。だったら新メンバーお披露目のアンコールのあとにえいたそがまた出てくればいいんじゃね?って。

成瀬 でもそれがコンセプト的にもしっくりきたんです。本編がストーリー仕立てだったから素の言葉で話せる時間があんまりなくて、最後にみんなでグダグダできたのはまた奇跡起きちゃった!って感じでした。

古川 ホントすんごいグダグダだったと思うよ、あのパート(笑)。

成瀬 だってあれみんなガチ部屋着でしょ? 私のは昔ねむきゅん(夢眠ねむ)にもらったお気に入りのジャージです。みりんちゃんのズボンなんだっけ?

「ウルトラ☆マキシマム☆ポジティブ☆ストーリー!! ~バビュッといくよ未来にね☆~」の様子。

古川 あれユニクロよ。私は部屋着っていうか、その日リハで履いてたズボンなんで。本編とアンコールでめっちゃいい衣装を着させてもらったのに、一番いいところでなぜかただのジャージっていう(笑)。

成瀬 いいんですよ、その雰囲気がまたね。

──あの構成のおかげで、ファンも卒業の余韻を感じながら終わることができてよかったと思います。

成瀬 確かに新メンバー登場でそのまま終わってたら相当ビックリですもんね。そりゃそうか(笑)。

泣くと歌えなくなっちゃうから

──当日のセットリストはえいたそが中心になって考えたんですか?

成瀬 はい、やりたい曲はいっぱいあったんですけど、今回は明るく前向きな曲に絞って、1つ決めてたテーマはマイナー調の曲を入れないってこと。

──なるほど。

成瀬 例えば「ブランニューワールド」はやめとこうとか、「ちゅるりちゅるりら」もやりたかったけど明るくハッピーというよりはエモい方向だったので悩んだあげく入れられなかったりとか。

──そしてライブ本編の最後を飾ったのは、えいたそが作詞で参加した「ポジティブ☆ストーリー」でした。あの曲を歌っているときはどんな気持ちでした?

成瀬 卒業を発表した11月の配信ライブのときはとにかく必死で、一緒にステージに立っていた5人に「私のポジティブを分け与えたい!」みたいな気持ちだったんですけど(参照:「Future Diver」から丸9年!でんぱ組.inc、夜の秋葉原で1stアルバム完全再現)、でも今回はなんか「この5人は絶対大丈夫だな!」と思いながら歌えました。

でんぱ組.inc

古川 衣装を着て歌うのはこの「ポジティブ☆ストーリー」が最後だったんで、10年8カ月一緒にでんぱ組.incをやってきた人とこれでお別れなんだなって、ちょっと感極まったところもありましたね。

──えいたそが本番中に泣かなかったのはちょっと意外でした。

成瀬 実は前日にでんぱ組.incのMVをガーって観て思いっきり泣いてきたんです(笑)。だから当日はすごくすっきりした状態で。泣くと歌えなくなっちゃうから、それはどうしても避けたかったんですよね。

古川 卒業発表の日の落ちサビが歌えなかったのが悔しかったんだよね。

成瀬 うん、やっぱり最後はしっかり歌いたかったので!