でんぱ組.incがニューシングル「いのちのよろこび」をリリースした。玉屋2060%(Wienners)が楽曲提供し、もふくちゃんがプロデュースを担当したこの曲は、アフロファンク調のビートやオペラ風の歌唱など多彩な要素を混ぜ合わせた、でんぱ組.incならではの生命賛歌。大胆なギャル風メイクと斬新な衣装、原始時代を思わせるミュージックビデオも話題を集め、彼女たちはこの曲でグループの魅力を更新することに成功している。
音楽ナタリーでは古川未鈴、相沢梨紗、成瀬瑛美、藤咲彩音、根本凪、鹿目凛の現体制メンバー6人にインタビューを行い、新曲の話題から全国ツアーへの意気込みまで大いに語ってもらった。
取材・文 / 大山卓也
ねむパートを受け継ぐプレッシャー
──この6人体制になってから、早いものでもう5カ月が経ちました。
古川未鈴 え、まだ5カ月なんだっけ?
成瀬瑛美 もう1年くらい経った気分(笑)。
──そういう感覚なんですね。それだけ密度の濃い時間を過ごしている?
成瀬 そうかもしれないです。MVの撮影で朝から晩まで一緒にいることが多いし、ダンスレッスンもいっぱいやってるし。
古川 毎日踊ってる気がするよね。
──夢眠ねむさんの卒業後、グループを取り巻く状況は変わりましたか?
古川 いい意味で、みんながねむさんの卒業を受け入れてくれたのもあり、あまり変わっていないのかなと感じます。こないだの東名阪ツアーはファンの方の反応がめちゃくちゃ気になって、Twitterでエゴサして感想を見てたんですけど、みんな「思ったよりいいじゃん!」っていう感想が多くて、少し安心しました。
成瀬 あとアンコールで初披露した「いのちのよろこび」も評判よくて、それで自信が持てました。
根本凪 お客さんの反応もよかったけど、ねむさんの反応が一番よかった。
相沢梨紗 ふふふ(笑)。ライブに来てくれたねむが楽しそうで、うちら的には一番安心したよね。
古川 ダメ出しもされたけどね(笑)。
──6人になったことで歌のパート割りも大きく変わりましたよね。
鹿目凛 ねむさんから引き継いだ歌割りがいろいろあるんですけど、私は歌が苦手なので、足を引っ張んないようにしなきゃって日々思いながら練習してます。
成瀬 そうなんだよね。歌のパートを引き継ぐのはけっこうプレッシャーで、ねむちゃんは独特の、すごくいい感じの歌い方をしてたんで。
藤咲彩音 例えば「プレシャスサマー!」の「ちょっと格別なこの夏を」の部分は私が引き継いだんですけど、毎回「ねむさんどうやって歌ってたの!?」ってなる。私らしく歌おうと思ってもちょっと違うし、ねむさんっぽく歌ってもちょっと違うし……みたいな。
──ねむきゅんパートと言えば、目立つフレーズをねもさんがたくさん引き継いでいますね。
根本 やらせていただいております……。
──実際歌ってみてどうですか?
根本 ねむさんはアニメキャラクターみたいに完成しているので、それを次にやらせていただくっていうのは、やっぱり難しくて毎回手探りで。特に「Future Diver」のサビの「よよよよよよよよよ」のところ。まだまだ全然、うまく歌えない(笑)。
相沢 でもあれ、ねむもかなり苦戦してたからね。
成瀬 そうだよ! あと、私はねもちゃんの「えいたそさんは元気だな~」(「でんでんぱっしょん」)も好き(笑)。
根本 でもねむさんの声めちゃくちゃかわいいじゃないですか。そこを受け継ぐプレッシャーがすごくて。
──大山のぶ代さんのあとを継いだ水田わさびさんのような?
古川 ねむさん=ドラえもんだったのか。
藤咲 ちょっとしっくりくる(笑)。
古川 あと、引き継いだってことで言うと「エバーグリーン」という曲で「キミがくれた今を これからも生きていくよ」という歌詞があって、今そこを私が歌ってるんですけど、歌う人によって意味合いが変わってくるんですよね。ねむさんが歌ってたときはやっぱり卒業に向けた気持ちを込めてたと思うけど、私が歌うと「ねむさんがくれたものを受け継いで私はこれからも生きていくよ」という意味合いになる。最初は意識してなかったんですけど、本番で歌ったときにお客さんの反応とかでそれに気が付いて。1つ受け継いだ瞬間だったなと、ちょっと思いました。
「いのちのよろこび」はナンバリングタイトル
──そして新曲「いのちのよろこび」はアフリカンビートを取り入れて、かなり大胆に攻めた楽曲ですね。
古川 うん、宇宙とかいろいろ回った果てに、こういう大きなところにたどり着くんだなって。普通のアイドルソングとは違う、今のでんぱ組.incだからこそ歌えた曲なのかなと思います。
──一見コミカルですが、実は生命と愛をテーマにした壮大な曲ですよね。
相沢 でんぱ組.incって最初は「楽しい電波ソングをお届けしたい!」みたいなところから始まったわけですけど、そこからいろんな出会いや別れもあって、楽しいことも悲しいこともあって、いろんな歴史を重ねてきて、だからこそ今この曲を歌えるんだと思うんです。それを考えると泣けてきちゃいますね。
鹿目 生きててよかったなって思える。
藤咲 人類も動物も、自然も草木もつながってるからね。
根本 私たちが全部いなくなっても、ずっと歌い継がれていってほしい曲ですね。
古川 しかもこの曲は“ザ・でんぱ組.inc”というか、でんぱ組.incのメインタイムラインにある楽曲だと思うんです。「いのちのよろこび」は「W.W.D」から続く、でんぱ組.incのナンバリングタイトルみたいな感じで。
相沢 うん、この曲ってパッと見はふざけてるみたいだけど……。
古川 でも奇をてらってるわけではないんです。
相沢 この曲で「W.W.D」の次に行きたいし、行けるんじゃないかなって思ってます。
「D.A.M.P.A.」問題
──そして「いのちのよろこび」と併せて公開された、ガングロギャル風のメイクや衣装も衝撃的でした。
古川 もしかしたら嫌がる人も出てくるかなと思ってたけど、思ったよりみんな面白がってくれて、さすがでんぱ組.incのファンだなと。
根本 「これだよこれ!」っていう意見もあって「え、これなんだ?」って(笑)。
古川 あのメイク、最初は自分たちでもギョッとしたんですけど、不思議なものでスタッフさんもだんだん「かわいいね」と言ってくれるようになってきて。
根本 私は勉強のためにギャルの動画を観たりしました。ギャルの生態を知りたくて。
古川 ねもちゃんがこのメイクをすると、いきなり態度が大きくなるんですよ。
根本 ヤマンバギャルになりたくて(笑)。メイクをしたら別人みたいな気持ちになれました。
成瀬 でもオタクとギャルって実は親和性が高くて、教室の隅っこでマンガ描いてるオタクと、教室からあぶれてイエーイってやってるギャルはちょっと仲良かったりするんですよね。
古川 はみ出しもの同士だ(笑)。
──ところで「いのちのよろこび」のミュージックビデオで、りさちーが斧を振り下ろすシーンですが、歌詞は「D.E.M.P.A.」なのに映像は「D.A.M.P.A.」になっていますね。あれは何か意図があるんでしょうか?
成瀬 あっ!(笑)
藤咲 それね、うんうん!
相沢 そこは我々も詳しく聞いてないんですけど……「あれ?」って思いますよね。
古川 気付いたファンの人もいろいろ考察してくれてるみたい。
──あの文字はCGですか?
相沢 そうです。撮影のときは何もなくて。
──監督は「Future Diver」「キラキラチューン」も手がけた山崎連基さんですね。
古川 監督がわざとやってる可能性はありますね……。
成瀬 あえて?
相沢 そうかも。監督は作るときに何百回も観てるからさすがに気付くと思うんで、私もわざとなんじゃないかなと思って。でも「わざとだよ」って言っちゃうとそれで終わっちゃうからあえて教えてくれないのかな。モヤモヤするけど、そういう気持ちもちょっとわかる(笑)。
古川 そう、だから真相は闇の中なんです。
次のページ »
映像が付いた瞬間に微熱になる