ナタリー PowerPush - でんぱ組.inc
これが私の生まれてきた意味 「W.W.D」3万字インタビュー
ラジオ以外の情報源は何もなかった
夢眠 私も結構いいふうに見えるんですけど、前山田さんが「暗すぎて書けなかった」って言ってて、「やぶれかぶれ」止まりにしてくれてたり、結構そういう思いやりもありつつ、含みはある、みたいな。
最上 徐々に出していこうね。
──ちなみに、相沢さんが「ラジオだけが友達」だったときはどんなのがお好きだったんですか?
相沢 文化放送が大好きで。
──ああ、アニメ関係の。
相沢 はい。でもアニメだけじゃなくて、部屋にテレビもなかったんで1週間全部聴いてたんですよ。なので、文化放送、QRっ子でしたね。たまに林原(めぐみ)さんがやってるからって(チャンネルを)替えたりとかはやってたんですけど。私が「この曲好きなんだ、なんで聴いたんだっけ?」っていうと全部ラジオなんですよ。ラジオ以外からの情報源が何もなくて。それくらいラジオばっかりでした。
古川 そんなに昔からテレビがなかったの?
相沢 全然なかった。ちっちゃいときから部屋にテレビなくて、パソコンもなくて。
夢眠 自分の部屋ってことだよね?
相沢 自分の部屋に。引きこもりがちだったし、テレビって自分の観たいものが観れなかったから、つまんないなと思って部屋に引きこもって、まんだらけで買ってきたマンガばっかり読んでたんです。首とか取れるヤツ。そういうの読んだり、あと美術部だったんですけど、そういう絵ばっかり描いて親に心配されたり。
最上 首取れるヤツ(笑)。
古川 そりゃ心配されるよ。
相沢 コスプレ衣装ばっかり作って。でもあんまりラジオのこととか趣味のことを語れる子がいなかったんです。なので1人でずっとこもって聴いてたし、深夜のアニメばっかり観てたんで、また語れないんですよ。「最近のこの『ジャンプ』のアニメが」みたいなこと言われても、「『ジャンプ』のアニメはあんまり観てないんで、深夜の何時からやってるナンチャラカンチャラが……」「何それ知らない」みたいな。
古川 ディアステいいよね、語れる人いっぱいいるもんね。
夢眠 ディアステすごいよ!
アニメを観るって文化がなかった
相沢 私、一番ビックリしたのが、声優さんのヲタがメチャメチャいたんですよ。私が「この曲好きです」って言うと、「わかってるね、素晴らしいよ」って言われて。こんなに知ってる仲間がいるんだと思ってビックリしました。
成瀬 ……聞いてもらってもいいですか?
──どうぞ。
成瀬 私、ちっちゃいときからずっとオタクで、アニメとかマンガが大好きだったんですけど、アニメの放送がそもそもなくて。
──ああ、地域的に。
成瀬 そうなんです。福島県だったんですけど、ラジオの放送もなくて。私、小学校のときに林原めぐみさんが好きだったんですけど、文化放送がどうしても入らなかったんですよ! だからすごい全然聴こえない音声の中、かすれた林原さんの声を聴いて、「あーっ、聞こえないよう!」って感じで苦しんで聴いてたり。梨紗ちゃんも学校にそういう子がいなかったと思うんだけど、私の地元はそもそもアニメを観るっていう文化がなかったの。「アニメ……『クレヨンしんちゃん』?」みたいな。「サザエさん」と「クレヨンしんちゃん」と「ドラえもん」と「アンパンマン」ぐらいで、だから周りからはすごく変な目で見られてて。
古川 その話を聞いたあとにえいちゃんのソロパートの歌詞を聴くとまたあれだね。
成瀬 ね、そうなの。
夢眠 「アニメ マンガ 田舎で 憧れてた」。
成瀬 一見明るく見えるんだけど。
相沢 私、えいちゃんがどうしてもそのアニメが観たかったから、福島から親戚の家にお金を握りしめて観に行ったみたいな話を聞いたことがあって。
成瀬 それは小学校低学年の頃なんですけど、どうしても「ポケモン」の第1話が観たくて。でも福島県だと2週間遅れなんですよ。「ポケモン」の第1話って、登場したポケモンの数を数えて「コロコロコミック」かなんかに応募すると特殊なアイテムがもらえるっていうのがあって。
夢眠 ヤバーイ! 絶対観なきゃだよね。
成瀬 「ウチでは締め切りまでに放送がない!」って思って、泣きながら家を飛び出して。
夢眠 泣ける!
成瀬 そしたら親がメチャメチャ心配して。
最上 そりゃ心配するよ。
成瀬 「あんたはそんなことまでしてアニメが観たいの? バカ!」って、メチャメチャ怒られました。
夢眠 泣ける!
成瀬 そういうコンプレックスがすごいあったんですよ。
夢眠 東京っ子にはわからんもんね、そういうの。
成瀬 そうなんだよね。
相沢 じゃあ一緒にチバテレビとかWOWOWとか観たかったね。うちチバテレビも埼玉もなんでも映ったの。で、WOWOWも入ってたしキッズステーションも入ってたから。
成瀬 梨紗ちゃんと同じクラスだったらよかった、小学校のとき。「昨日観た?」みたいな。
過去の屈折をバネにできてよかった
夢眠 でも今って、ディアステージもそうなんですけど、たぶん理想のクラスを体感してて。趣味も違えど、別にDISられないし、みんながそれぞれ認め合ってるっていうか。で、みんな求め合ってるし、っていうのが結構理想の状態だよね。
成瀬 そうだね。みんなそれぞれ得意分野がわかるから訊きやすい。未鈴ちゃんにはゲームのことめっちゃ訊いたりとか。
──確実にみんな過去の屈折がバネになってますよね。
夢眠 ちゃんとバネにできてよかったっていうか。家にいる状態だったら屈折のままだった(笑)。
相沢 バネが錆びて終わり(笑)。
古川 この「W.W.D」を歌って、バネにできてるんだなっていうのがより実感できたっていう感じはあるね。
夢眠 口に出せてよかったっていうね。
古川 若干見返せてるんじゃないかって。
夢眠 「見返してやるしー!」って。
古川 歌ってるし(笑)。
相沢 この歌詞で結構おおっぴらに自分のことさらけ出してるんですけど、私ホントに自信がない人間だったんですよ。うまく自分の話ができなくて。自分の話をすると、面接とかオーディションでも泣いちゃったんです。たぶん今この現場でもその状態だったら話ができなかったと思うんですよ。だけどそのことを今歌ってるっていう自分がすごいなと思って。「こんなことになるなんて」っていうのはホントにこういうことだなと思って。
──公開リハビリですよね、これ。
夢眠 ホントにそう!
相沢 ホントに。人に自分のことを話すのが大嫌いでしたね。
3次元は裏切るから
夢眠 梨紗ちゃんと同じ声優さんの学校に通ってたことがあるんですけど、そのときにそれぞれ自己紹介やらなくちゃいけなくて、そしたら梨紗ちゃんワーワー泣いてて。「私、なんかわからないんです」みたいな感じだったんです。私はベラベラベラベラ訊かれてないことまで話してたんですけど。
──なんで涙腺スイッチ入っちゃったんですか?
相沢 なんか、聞きたくもなさそうなことを言わなきゃいけないことがつらかったんです。
──「私に興味ないでしょ?」みたいな。
相沢 そう、「なんでてめえらにこんなこと言わなきゃいけないんだ」的な。
──ダハハハハ!
相沢 思い出したらホントつらくなっちゃうんですけど。私、怒っちゃうんですよ。「なんでそんなこと君たちに言わなきゃいけないの、興味もないのに!」みたいな。
夢眠 泣くな!
相沢 悔しいんですよ、なんか。
夢眠 「マニュアルだから訊いてんだろ」みたいな感じだよね。
相沢 「別に興味ないんでしょ?」みたいな。
最上 今はファンの人がいて、みんな興味を持ってもらえるから歌えるんじゃない? もしかしたら。
相沢 聞いてくれる人がいれば話せるんですけど。
夢眠 でんぱ組って、ホントに今の豪さんみたいに「聞いてあげるよ」って人がいるとブワーってしゃべるんですよ。
──ボクほとんど質問してないのに勝手に話してますからね。みんな話したくてしょうがないって感じで。
夢眠 それって今まで話を聞いてくれる人がいなかったプラス、話したい人がいなかったっていうことなんですよね。アイドルになってから「話を聞かせてください」って人が来てくださるじゃないですか。だからみんなずっとしゃべっちゃうんですよね。
相沢 話すことが更生じゃないけど……。
──リハビリですよ、これも。
相沢 そうなんですよ、ホントに。話すというか人と会うのがホントに嫌だったから。
──ダハハハハ! そうなんですか(笑)。
相沢 3次元は裏切るから。
成瀬 3次元は裏切る!
古川 裏切るね。
最上 でも2次元も連載止まったりする。
相沢 早く概念になりたいよ、私。
成瀬 概念にならないとヤバいよ。
──マイナスからのスタートすぎますよね。
最上 えぐれてる(笑)。
- ニューシングル「W.W.D / 冬へと走りだすお!」 / 2013年1月16日発売 / TOY'S FACTORY / MEME TOKYO
- 初回限定盤A[CD+DVD] / 1500円 / TFCC-89414
- 初回限定盤B[CD+DVD] / 1500円 / TFCC-89414
- 通常盤A[CD+DVD] / 1500円 / TFCC-89416
CD収録曲
- W.W.D
- 冬へと走りだすお!
- W.W.D(Off vocal)
- 冬へと走りだすお!(Off vocal)
初回限定盤A DVD収録内容
- W.W.D(Music Clip)
- W.W.D(Music Clip メイキング映像)
- 第1回でんぱ組.inc 台湾観光案内
初回限定盤B DVD収録内容
- 冬へと走りだすお!(Music Clip)
- 冬へと走りだすお!(Music Clip メイキング映像)
- W.W.D(Music Clip Dance shot ver.)
でんぱ組.inc (でんぱぐみいんく)
古川未鈴(みりんちゃん)、相沢梨紗(りさちー)、夢眠ねむ(ねむきゅん)、成瀬瑛美(えいたそ)、最上もが(もが)、藤咲彩音(ピンキー)からなる6人組アイドルユニット。2008年の結成後、秋葉原のライブ&バー「秋葉原ディアステージ」をホームグラウンドに精力的なライブ活動を展開する。2011年11月からはTOY'S FACTORYともふくちゃんの共同設立によるレーベル「MEME TOKYO」に所属。同年12月に1stアルバム「ねぇきいて?宇宙を救うのは、きっとお寿司…ではなく、でんぱ組.inc!」をリリースし話題を集める。メンバーはそれぞれゲーム、アニメ、コスプレなど秋葉原オタクカルチャーに造詣が深く、趣味を生かした課外活動でも知られる。2013年1月16日にニューシングル「W.W.D / 冬へと走りだすお!」をリリース。