ナタリー PowerPush - でんぱ組.inc

これが私の生まれてきた意味 「W.W.D」3万字インタビュー

ファンの人を叱れるようになった

夢眠 私はでんぱ組になる前はディアステのただの従業員の女の子だったから、たぶんそのテンションでいろいろ傷ついたりしちゃってた。自分の意識が低かったのかなとも思うんですけど、全員を絶対100パー笑顔にするみたいな、えいたそが言ってたみたいな気持ちでやってたから、どんどん規模が大きくなるにつれて、当たり前だけど全員っていうのが無理になってきてるのを受け入れられなくてヘコんでたところはあって。お店で会うレベルで楽しんでくれたり、名前を覚えたりができなくなってることにもヘコんで。

──ねむきゅんが言ってていい話だなと思ったのが、ほかのメンバーの悪口を言われるとホントに頭にくるっていうことで。

夢眠 ホントそう! それはなる。

相沢 私、その場で叱っちゃったりするんですよ。「なんでそういうこと言うの?」って。「ヤバい、梨紗ちゃんキレたぞ」みたいになって。「もう知らない!」みたいに私が泣いて帰る、みたいな(笑)。

夢眠 自分のことはわかるんですけど、例えばもがちゃんがどうのこうのとか書かれてたらホントにムカつくし。それを見て落ちてるんだろうなっていうのも気付くから。スクールカーストの話じゃないですけど、私はいじめられてる子をいじめてる子をいじめてたんですよ。

──なるほど(笑)。

夢眠 だから守りたくなってしまって、握手会ですごい言っちゃったりとか。みんな優しいからお客さんには言わないんですよ。私も最初はそんなことなかったんですけど、ある時期からキレキャラっていうのを認めてもらえて、そのときからめっちゃ怒れるようになって。「さっきのダメじゃんね?」「すみませんでした」みたいな感じを握手会の最後の締めで私がやる、みたいなのができてきてから、でんぱ組のファンはみんないい子ばっかりなんで、どんどんいい子になるし。私たちも自分を出せたりとか、反省もするようになって、全体でいい子になっていくっていう。ホント、クラスのやり直しみたいな感じというか。生徒会があって、影のいじめっ子がいて、いじめられっ子もいて、みたいな。

相沢 私たちが入ったときって、ディアステージは普通の社会から比べたら、もっと甘くて優しくて。それよりも、もっと人に会うのが苦手とか、傷つきやすい子たちがいたから成り立ってて。でも、そこからなんとかして飛び出さなきゃってなったときに、自分も変えなきゃいけないし、ファンの人たちの意識も、「私たちこうなりたいんです、よろしくお願いします」って言って変えていくのがすごく大変だった。お店に慣れすぎてたから、甘えてた部分があったんですよ。

夢眠 自分も甘えてたところだよね。

相沢 そこに寄りすぎちゃってたところがたくさんあったから、それに悩んだかもね。変えなきゃ、変わらなきゃ、みたいな。

夢眠 最初からアイドルさんだった人……って言うとまたアイドルコンプレックスみたいに言われちゃうけど、そういう人だったら普通にわかることが徐々にしかわからなかったっていうか。

──アイドルとしては完全に雑草集団ですもんね。

夢眠 ホントに! だってダンスレッスンを受けたこともなかったし、ボイトレもやったことないし。「練習してね」って言われて「はい」って言って、店が始まる1時間前に行って順番で歌うとか、そういうことしかやってなくて。声の出し方も習ったことなかったし、ほかのアイドルさんを見て「すごいね」みたいな。で、未鈴が知ってる知識を、「こっちの肩を上げるとかわいい」とか教えてくれて。

古川 自分が持ってる最大の知識を教えてあげて。

──アイドル知識が一番ありますからね。

夢眠 パンツ見せながら踊るとか。

──そんなアドバイスもあるんですか!

相沢 「ヒラッとさせるんだよ」「なるほど!」みたいな。

夢眠 「スカート、ひらり」みたいな。あとジャンプするときはスカート押さえてピョーンって上がるとかわいいみたいなこと言われて、それみんなやっちゃったり(笑)。ひとつの知識をみんなで分けたりとか、そういうことをしてますね。

この6人は家族っぽい

──でんぱ組って、偶然集まったにしては異常にバランスいいんですよね。

夢眠 5人を経てこの6人になったのがすごいなと思って。5人のときは5人が一番と思ってて、2人が入ったときにどうなるだろうみたいな不安もあったけど、1年過ごしてすごくいいな、みたいな。居心地がいい。

相沢 最近なんか家族っぽいよね。

夢眠 私、お父さん? 嫌だ!

──一番力強い感じありますからね。

夢眠 ゲーッ!

相沢 私が笑いながら「ダメでしょ?」って注意したあとに、それでも聞いてもらえなかったら、「コラッ、ダメだろ!」って。

──お父さんが怒る。

相沢 怒ったあとにお菓子をあげる、みたいな。

夢眠 私、たまに間違ってピンキーに「お母さん」って呼ばれるもん。「おかあ……違う!」みたいな。何回か言ったよね。

藤咲 言った、「お母さん……じゃない」って(笑)。

古川未鈴

──家族だと未鈴さんはなんですか?

夢眠 お兄ちゃんだと思う。

古川 私、男っぽいって言われるんですよね。

夢眠 このグループの中で男は私と未鈴だよ。お兄ちゃんが実は一番権限を持ってるみたいな感じかな。

古川 私、権限持ってるの?

夢眠 未鈴さんは持ってるんですよ。

古川 なんでさん付けなの?

相沢 的を射たことをしっかり言うんだよね。

夢眠 影のドン。

最上 基本的に未鈴ちゃんが言うことに対してはあんまり反論ないよね。やっぱりアイドルとか詳しいっていうのが信頼がおけるところというか。

藤咲 言葉に説得力あるよね。

夢眠 そうそう。

──未鈴さんほめられすぎて、すっかり発言が減ってますよ。

夢眠 だってウチら、めっちゃ崇め奉り候だよ。

藤咲 奉り候だよ。

夢眠 未鈴ちゃん、すごく冷静で感情がブワーってなることがあんまりないの。

──どんどん猫背になってますよ(笑)。

古川 地下アイドル出身というか、1人でずっとやってきたんで、そういうのも多少は。

──今日、口数少ないですよね。

古川 …………。

夢眠 じゃあウチら黙るから、ちゃんとやって。

古川 えーっ? ……………………こんにちは。

──ダハハハハ! そこから?

古川 いや、なんか……聞きたいことがあるなら。

──今まで話したことを含めて、未鈴さん的に何か言いたいことはないですか?

夢眠 そうだよ! でんぱ組に対してとかさ。

藤咲 メンバーに言いたいこと。

夢眠 私のことも個人的になんかあるなら。

古川 ひとつ思うのは、叩かれることに関してなんですけど、例えば「古川未鈴ってブサイクだよな」とか書かれるとするじゃないですか。それってアイドルとして認められたってことなんだって思うんですよ。身内の人は絶対そんなこと言わないじゃないですか。私の知らないところで知らない人が私のことをブサイクって思ってるってことに結構感動しちゃって。すごい、芸能人だって思って。

──そこまで届いたっていう。

古川 そうそうそう、それが結構あって。叩かれて気持ちいいわけではないんですけど、そういう気分はあります。

──次のステージに行った感じがしたわけですね。

古川 そうです。

夢眠 それは未鈴にアンチがいるっていうのは、支持してくれる人も増えたってことだよね。

古川 支持してくれる人もいるっていうのは信じてるんで。私の知らない人がそれを言ってるっていうのが、名前を知ってるっていうのがすごいなと思って。

藤咲 外に出なきゃ名前だって知らないし。

古川 そうそう、そう思って最近それに感動してます。

──ただ引きこもってたままだったら、こうはならなかったわけだし。

古川 そうです。私の名前をわざわざネットに書くって結構すごい労力だと思うんですよ。

最上 すごいことだと思う! 

古川 興味があるってことだからね、よくも悪くも。

残り2割に食い込みたい

──ちなみにボクは自分検索大好きなんですけど。

夢眠 そうですよね、自分検索の鬼ですよね。

──ホントに好きで、3分に1回ぐらいやっていて。

夢眠 やりすぎ! 心が折れたりしないんですか?

──今のとこないけど「情熱大陸」に出ることでどうなるかわかんないっていう。規模が違うじゃないですか。

夢眠 みんなで職人やろうよ。

古川 「すごく賛同できる」とかいっぱい書き込んで(笑)。

夢眠 ヒャダインさんが、すごい大変そうだった。

──またヒャダインさん、密着されたあげく、Twitterで検索してヘコんでる様まで流されてましたからね。

夢眠 そのあげく、でんぱ組のレコーディングも撮影されたけど全カットで。ちゃんとメイクして行ったのに。

──吉木りささんのは流れて。でんぱ組とのイベントにもカメラ入ってましたもんね。

古川 ディアステまで来て撮ったよね。でも使える絵がなかったみたいな感じで。

成瀬 それでまたウチらは、自分たちのトークスキルがなかったんだって思って、とりあえずでんぱ組.incの「情熱大陸」が実現するまでがんばろう、みたいな。

藤咲 そうなんだ。それ聞いて、ちょっと安心しました。

夢眠ねむ

夢眠 8割9割ならいいよね。

相沢 でも残り2割に入りたいよね。

夢眠 そうだよ、食い込みたいよね。

古川 生き残りたい。

夢眠 残っていきましょう。

──この曲でそういう流れになると思いますよ。素晴らしいです、ホントに。

夢眠 キャーッ、うれしい!

相沢 ありがとうございます。

──現時点で2013年の年間ベスト級って言ってますから。取材の時点ではまだ12月なのに。

夢眠 早い! 1月発売ですよ。2013年に残るための王手を、いきなり1月に打つ感じだよね。

藤咲 超必殺技ですよ、これ。

──ワンマンで最初に聴いた時点で完全にヤラれましたからね。

夢眠 ライブで聴き取れましたか?

──だいたいは。

古川 なんとなくですよね。

相沢 でも歌詞がわからなくても、なんかわからないけど迫力で泣いちゃった、みたいな人がいて。

古川 伝えたいことは伝わった、みたいな。

聴くたびいつも泣いてて練習できなかった

夢眠 ワンマンとかだと味方っていうか、好きと思ってくれてる方だけだと思うんですけど、対バンで「W.W.D」をやったとき、「今まででんぱ組の曲をスルーしてたけど、そのときは泣いちゃった」とか言ってもらえて。いきなり心に訴えかけるらしく。

──いきなりわしづかみされますよね。

夢眠 それは私たちも魂を込めないと歌えないことだから、本番まで私ずっと泣いて練習できなくて。聴くと絶対泣いちゃう時期を経て。

藤咲 確かに。

──ボクも最初5~6回は聴くたびに涙腺きてましたよ。

最上 すごい泣くところがあって。えいたそと……。

──そこなんですよ!

最上 あのえいたその「少しでも 力になりたい、なぁんて思ったんだよ」ってフレーズは神だと思って。

──あれ、やられますよね。

最上 でも普通に2人同士の物語があるっていうこと自体がすごい奇跡だなと思って感動しました。あと、落ちサビの「狭いステージから」でもうジワーッてきて。

藤咲 1年間のステージがバーッて走馬灯のように出てきて。

最上 だってウチら、最初いっつも泣いてたもんね。聴くたびに「めっちゃいい!」とか言って。

夢眠 落ちサビからは全部ヤバいよね。1年前のでんぱ組の話もあるし、それぞれ今までソロでやってきた子もいるし、違うところでやってきた子もいる。そういうのも思い出されて、ディアステージのステージすら私にとって最初は大きかったんですよ。でも、今あれを狭いステージって言えて武道館を目指してるっていう、それこそタイムラインの流れみたいなのがブワーッと出てきて。目の前にいるファンの方の数がどんどん増えていく感じとかもすごいブワーッとなってきて。大きいステージでやるときも、ちっちゃいステージでやるときも、ホントに泣けるっていうか。

──歌ってる側も感極まってるのが伝わるんですよね。

夢眠 あれを歌うときの目は本当に世界を目指してる目をしてます。

相沢 ディアステージに立ってたのがちっちゃいなって思うわけじゃなくて、客観的に外から見て、私たちのところってまだまだ小さかったんだっていうことを受け入れられるようになったっていうか。一生懸命やってるつもりだけど、まだまだ自分たちのやってることって外の人たちには伝わってないんだよってことを受け入れることができてからの歌な気がしてて。

古川 私、路上で歌ってたことを思い出したな。

──ああ、キャリアが違う(笑)。

夢眠 ステージですらないもんね。

成瀬 やっぱり芸歴が長いんで。

古川 秋葉原で歌ってたんですよ。そういうの思い出しました。

ニューシングル「W.W.D / 冬へと走りだすお!」 / 2013年1月16日発売 / TOY'S FACTORY / MEME TOKYO
初回限定盤A[CD+DVD] / 1500円 / TFCC-89414
初回限定盤B[CD+DVD] / 1500円 / TFCC-89414
通常盤A[CD+DVD] / 1500円 / TFCC-89416
CD収録曲
  1. W.W.D
  2. 冬へと走りだすお!
  3. W.W.D(Off vocal)
  4. 冬へと走りだすお!(Off vocal)
初回限定盤A DVD収録内容
  1. W.W.D(Music Clip)
  2. W.W.D(Music Clip メイキング映像)
  3. 第1回でんぱ組.inc 台湾観光案内
初回限定盤B DVD収録内容
  1. 冬へと走りだすお!(Music Clip)
  2. 冬へと走りだすお!(Music Clip メイキング映像)
  3. W.W.D(Music Clip Dance shot ver.)
でんぱ組.inc (でんぱぐみいんく)

古川未鈴(みりんちゃん)、相沢梨紗(りさちー)、夢眠ねむ(ねむきゅん)、成瀬瑛美(えいたそ)、最上もが(もが)、藤咲彩音(ピンキー)からなる6人組アイドルユニット。2008年の結成後、秋葉原のライブ&バー「秋葉原ディアステージ」をホームグラウンドに精力的なライブ活動を展開する。2011年11月からはTOY'S FACTORYともふくちゃんの共同設立によるレーベル「MEME TOKYO」に所属。同年12月に1stアルバム「ねぇきいて?宇宙を救うのは、きっとお寿司…ではなく、でんぱ組.inc!」をリリースし話題を集める。メンバーはそれぞれゲーム、アニメ、コスプレなど秋葉原オタクカルチャーに造詣が深く、趣味を生かした課外活動でも知られる。2013年1月16日にニューシングル「W.W.D / 冬へと走りだすお!」をリリース。