音楽ナタリー Power Push - Def Tech

8作目で提示する2人の“インフィニティ”

ピースフルな雰囲気を音楽で表現し、今や日本だけでなく世界でも知名度が上昇しているDef Techが、最新アルバム「Eight」をリリースした。東京でレコーディングしたという全10曲は彼ら独特のリラックスしたムードにあふれながらも、都会的なエレクトロビートも巧みに取り入れた、エンタテインメント性の高い内容に。だが完成までは紆余曲折、さまざまな困難が彼らのもとに押し寄せていたという。音楽ナタリーではこの作品の完成までの道のりをMicroとShenに聞いた。

取材・文 / 松永尚久 撮影 / 小坂茂雄

どこにいても“ハワイバイブス”を表現できる

──前作「Howzit!?」を2015年6月にリリースしてから本作「Eight」を発表するまでの1年は、2人にとってどんな時間でしたか?

Micro 去年から、夏にアルバムを発売して、その後にツアーをするという活動の流れにしたんです。年に1枚のペースでアルバムを出すということを、僕たちのライフワークにしよう、と。それが今、すごくいい感じになっていて。なんだか人生のクオリティが上昇している気がしています。と同時に、作る音楽の質も上がっているのかなって。

Shen うん。今はすごくいいサイクルができているなって思えますね。でも、作る音楽に関してはマンネリにならないように、常に新しいと思えるものを発信していかないといけないので、アルバム制作は決して簡単とはいえない作業です。

Micro

Micro 最近Shenは、以前から「やりたい」と話していたモデルの活動をスタートさせたし、僕も俳優の仕事をちょっとだけやらせていただくなど、お互いに今までとは違う仕事をしながら、音作りも進めていました。常に一緒に行動しているわけではなかったから、スタジオに入って一緒に作業をしているとモチベーションが上がったというか。「そんなプレイどこで覚えてきたの!?」みたいな驚きがいっぱいありましたね。

Shen ははは(笑)。

Micro また、Shenはいつも僕に発破をかけてくれるんですよ。「ただ悩んでいたって何も生まれない、とにかく曲を作ってみようよ」って。その言葉もレコーディングに大きな影響を与えてくれましたね。

Shen お互い30半ばになって、もう子供じゃないから。これまでよりもっと音楽の本質に迫るような姿勢をアルバムに残したかったんです。

──今回のアルバムは、全曲東京でレコーディングされたんですね。

Micro はい。これは時間や予算といった問題ではなくてね。ここ最近Shenのウクレレの技術が上がっているんです。アーニー・クルーズJr.さんやジェイク・シマブクロさんとの共演などによって本格的に演奏に取り組むようになって、それによって面白い楽曲がどんどん完成していった。また、僕らが信頼を寄せるスタッフのレベルも上昇しているんです。そういったみんなの力によって、どこにいても“ハワイバイブス”を表現できることがわかったので。

Shen 今回は、ハワイへ行くという話はひと言も出ませんでした。行く必要性を感じていなかったから。

Micro 前作をハワイで制作したらあまりにも気持ちよすぎて、ユルい内容になってしまったかな?と思ったんですよ。東京で聴くにはちょっと違和感があったのかなって。今回は東京、湘南、千葉などで普段生活をする中で、浮かぶアイデアを音にしてみたかったんです。

「8」は僕らを表す数字

──そして完成したアルバムが「Eight」。通算8作目のアルバムという意味もあるとは思うのですが、このタイトルにはほかにも思いが込められていますか?

Shen そうですね。「8」は僕らを表す数字じゃないかなって思ったんです。

Micro 「8」って、上下で丸の大きさが違うじゃないですか。上が小さくて、下が大きい。その形が僕らに見えるなって。また、数字を横にするとインフィニティ(無限大)にも見えるし。さらに「8」で画像検索したらいいデザインがいっぱいあって、これはツアーグッズでもうまく使えるぞって(笑)。

──ビジネスマンですねえ(笑)。

Micro ほかにも、スケートボードのことを「SK8」と略して表現することもある。現在、東京オリンピックの正式種目の候補としてサーフィンと共にスケートボードが挙がっているじゃないですか。それを応援する思いも込めていますね。

Shen

Shen あと、最近「Def Tech聴いていました」って過去形で話しかけてくる人が多いんですよ(笑)。現在も音楽を作り続けていて、もう8枚もアルバムを出していますよ、ということを知ってもらいたいという思いもあります。最後まで聴いたら、また最初からリピートして聴きたくなる無限の魅力があるアルバムという意味も。

──いろんな思いのある「8」なんですね。ではアルバムの構成に関しても、相当な思い入れがあるのでは?

Micro 僕らの場合、先にコンセプトを決めて制作してしまうといろいろ考え込んでしまう。自由に楽曲を作っていく中で、最後にダルマに目を入れるみたいに収録曲を決める感じにしたほうが性格に合っているので、構成に関しては特に強い思い入れはないんです。だから「Eight」ってタイトルなのに、8曲じゃなくて10曲も収録しちゃっているし(笑)。

──なるほど(笑)。ではアルバム作りのきっかけになった曲はありますか?

Micro 1曲目の「LOL」かな。これは年明けにサビの部分ができていたんですけど、そこから長い時間をかけて楽曲が完成していったことで、アルバムの全体像が見えてきましたね。

──この曲、Microさんは4カ月もの時間をかけて作詞をしたと伺いました。

Micro サビはできていたのに、それをつなぐ部分がまったく浮かんでこなかったんです。どうしても、自分の中から言葉を紡ぎ出すことができなかった。制作当時に熊本で地震があって、東日本大震災のときもそうだったんだけど、そういう大変な時期にどういう言葉を伝えたら人の励みになるんだろう?って、考え込んでしまった。また、プロデューサーからは「常套句は使わないで」とも言われていたし……。って僕が悩んでいる隣でShenは次々と自分のパートを完成させていくし、その姿を見て焦って、何度も音楽辞めようって考えました。二代目Micro、三代目Microを募集しなきゃなと(笑)。

──その混沌とした状況をどうやって切り抜けたんですか?

Def Tech

Micro 当初、僕はこの曲で家族、恋人、そしてDef Techなど、いろんな「2人」の関係性をつづり、あらゆるリスナーの心に伝わるものを作りたいと強く思っていたんです。でも、特定の相手を想定して作ったほうが、伝わりやすいのでは?と考えるようになってから光が見えましたね。

──では「LOL」では具体的にどんな相手を想像して書いたんですか?

Micro 以前お別れしたんですけど、今年になって再会して、ヨリが戻りそうになったんだけど……ちょっと停滞している彼女のことを思い浮かべながら。これは書いてくれて大丈夫です。僕は恋多き男なんで!(笑)

──そうだったんですね。ではShenさんは、隣で歌詞作りに悩むMicroさんを見ていてどんな気持ちでした?

Shen Microは芯が強いから、絶対に困難を克服するって思って見ていましたよ。また、これまでも同じことがありましたけど、結果いいものを作り出していたから信じて待っていました。ときどき「こうしたら混沌から抜け出せるのでは?」と思ったヒントなどを提示しながら。

Micro 本当に根気強く待ってくれましたね。自分が逆の立場なら、絶対にキレますよ。

Shen いつもすごく心に刺さる歌詞を書いてくれるから、どんなに時間がかかってもストレスにはなりませんね。

ニューアルバム「Eight」2016年7月6日発売 / 2000円 / 2VOX-002 / 2VOX
「Eight」
Amazon.co.jp
収録曲
  1. LOL
  2. Journey
  3. Town & Country
  4. SK8 'N' LOVE
  5. The Force
  6. Booty Clap
  7. Vacation
  8. One Hope
  9. Journey(Tropical Juice Mix)
  10. Shaka!
Def Tech Special Summer Live
  • 2016年8月20日(土)大阪府 大阪城野外音楽堂
  • 2016年8月21日(日)大阪府 大阪城野外音楽堂
  • 2016年9月4日(日)山梨県 河口湖ステラシアター
Def Tech Zenkoku Tour 2016
  • 2016年10月7日(金)新潟県 新潟LOTS
  • 2016年10月8日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2016年10月10日(月・祝)富山県 MAIRO
  • 2016年10月15日(土)宮城県 Rensa
  • 2016年10月17日(月)愛知県 DIAMOND HALL
  • 2016年10月19日(水)大阪府 なんばHatch
  • 2016年10月21日(金)東京都 新木場STUDIO COAST
  • 2016年10月29日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2016年10月30日(日)静岡県 SOUND SHOWER ark
  • 2016年11月5日(土)香川県 高松festhalle
  • 2016年11月6日(日)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2016年11月11日(金)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2016年11月16日(水)北海道 札幌PENNY LANE24
  • 2016年11月18日(金)台湾 Legacy Taipei
  • 2016年11月22日(火)宮崎県 MIYAZAKI WEATHERKING
  • 2016年11月23日(水・祝)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2016年11月26日(土)沖縄県 ミュージックタウン音市場
Def Tech(デフテック)
Def Tech

Def Techハワイ出身のShenと東京出身のMicroによる“Jawaiianスタイル”のユニット。2005年にアルバム「Def Tech」でデビュー。200万枚を超えるセールスで当時の国内インディーズの売り上げ記録を塗り替えた。以後、活動休止や一時解散を経ながらも自由なスタイルの音楽活動を繰り広げ、2015年には自身初となる単独野外ライブを開催。ほかにもハワイや台湾などで公演を行う。2016年7月に8枚目のオリジナルアルバム「Eight」をリリース。