ナタリー PowerPush - Def Tech
Shen & Microが明かす情熱と苦悩
音の破壊力と次へ向かうなんとも言えないエネルギー
──その前の、総決算としてのこのベスト盤っていうのもあるのかもしれないね。最後に「4 Eye, for you」っていう新曲を置いているのも、明日につながる道筋のようなものだと思うんですが、ここへの思いを訊かせてもらえますか?
Micro 最近、僕がダブステップ、グリッジホップしか聴いてないんですよ。僕の中のヒーローはSKRILLEXで、「Rock n' Roll」と「First Of The Year」っていう2曲のPVがすごく好きで。実は僕、12月に喉の手術をしたんです。ポリープが9個ぐらいあって、去年の武道館とかもほとんど歌えない状況ではあったけど、そこは関係ないっていう気合でやって。今は調子がいいんですけどね。で、SKRILLEXの彼もFROM FIRST TO LASTっていうバンドをやっていたんだけど、喉がダメになって。それが原因でバンドを辞めてソロになった今、あのサウンドで世界中を沸き上がらせてるんですよね。あのドリルの音が使われるような彼の音楽を、なんで自分は喉から手が出るほど欲しがってるんだろうって思ったとき、彼の音の破壊力と次へ向かうなんとも言えないエネルギーに突き動かされてたからだなって思うんですよ。背中を押してくれたり、行動につながるような、日々を支えてくれた音楽だったんです。で、最初聴いてたときにみんなから「売れないよ」って言われてた彼が、今年2つグラミー獲ってくれて、スカッと心が晴れたっていうのもあります。「4 Eye, for You」は彼に近づきたいっていうよりも、彼が表現してくれたものに対してというか……次への階段として作った曲なんですよね。
──とてもガチでハイな曲ですよね。
Micro 言葉なくしても無条件でアガり、かつそこに自分たちの思いがワンワードでも乗ってきたら、もっとひとつひとつのメッセージが重くなっていくんじゃないかなって。自分たちの思想、哲学っていうものが、ちょうど符合したんですよね。とってもライトだし、今はやっぱり暗いもの、重たいものを作れないっていうのもあって。
Shen それと共に、僕はこれを今年の夏の曲にしたかった。しかもこのメッセージがすごくいいと思う。自分のためなんだけど、それは実はあなたのためっていう。僕たちは目を4つ持っていて、僕たちの見ていることはあなたのためですよっていう。みんながそういう感じで動いていたら、世界がすぐ変わると思うんだよね。自分のためにちゃんとやってる、それはほかの人のため……それは2012年に大事なメッセージだと思う。地震もあって何があるかわからない状況。日本だけじゃなくて、イラクだったりアメリカだったり、全体がぐしゃぐしゃな状況でみんながそういうことをやったら変わると思う。まあそれはシンプルな考え方かもしれないけど、まず簡単なことから始めないと何もならない。今は何にしても超複雑だから逆にシンプルから始めようっていう。……例えば車運転してるときに怒りを感じても、そう考えておくと「どうぞ」って譲れたりするし(笑)。この寒い東京の中で、こういう暖かい音の曲っていうのは、ちょうどいいタイミングだと思う。
──しかもバウンシーなビートでね。
Shen そう! 超アップですね。もうちょっとBPM抑えてもいいんじゃないかなって思うぐらい(笑)。アガるよね。
ドメスティックで終わっちゃいけない
Micro 思ったんだけど、「We are Japan」っていうのが面白いなと思って。「I am Japan」っていう人がいないなって思って。がんばろうっていういろんなメッセージがあった中で、日本人が日本をもっと誇りに思って……こんな中でもたくさんの外国の人たちがどんどん日本に訪れてきてるじゃないですか。そんな中で日本人である僕らが謙遜ばかりするのは自分たちを卑下することになっていると思うし。アメリカの人は言うと思うんですよね、「僕はアメリカだ」って。
──「Born in the USA」(ブルース・スプリングスティーンのヒット曲)みたいな。
Micro あははははははは(笑)。
Shen そうそうそう。
Micro でも日本人は言わないし歌わないですよね。今、愛国心を持とうと考えたときに、最も世界平和に近いのは……。戦後から66年経ったこの日本は、戦争なくしてこれだけ繁栄しなかったっていうことで。だから今の日本は世界にとって重要なキーになる国だと思う。なのでもっと日本を伝えたいなって思いますね。
──想像以上に去年から世界が日本を意識してて。それは憐れみや悲観論かもしれないけど、でもこれってチャンスだと思うんですよ。言ってみれば第2次世界大戦で敗戦して以来のチャンスで。あの敗戦を狡猾に生かした国だから、ここはなんとか自分たちの力でって思ったりしてるんだけど。そのカルチャーの中で、そういう意識を一番実のあるものにしたいなって思うんですよね。
Micro すごくわかります。やっぱりShenと一緒にいるっていう意味でも、ドメスティックで終わっちゃいけないと思うし。世界に行けば行くほど、日本って改めて素晴らしい国だなって日々思うんですよね。「Powers of Ten」っていう映画があるんですけど、人からどんどん離れて地球を飛び出して闇を感じると宇宙の果てまで辿りつき、逆に人間の体に入っていくとこれまた宇宙だっていう映画で。世界の果てに行ったとしても宇宙だし、内面を突き抜けても宇宙だと。科学は外を解明していくけど、芸術、音楽はもっともっと内面を掘り下げていくものだと思う。それを世界に広げていくっていう両面を突き抜けていけたらいいなと思います。
──このベスト盤を出して、もう一回世の中がDef Techの音楽をどう聴いてくれるのかを感じること。あと今日話してくれたような新たな悩みを含めて、ここにあるカオスをどういうバイブスにしていくかっていうのが、今年のDef Techのテーマなのかもしれないですね。ぜひ、答えを出してほしいな。
Micro はい、がんばります!
Shen もっとがんばります!!
Def Tech - Vocaline
CD収録曲
- Vocaline(新曲)
- My Way
- Pacific Island Music
- High on Life
- Consolidation Song (LIVE MIX)
- KONOMAMA Def Tech reintroducing RIZE
- In Outside
- Power in da Musiq ~Understanding
- Irie Got~ありがとうの詩~
- いのり feat. SAKURA
- Catch The Wave (NEW MIX)
- Broken Hearts
- Get Real
- A-1
- The Come Back
- おんがく♬ MUSIC
- Rays of Light
- Golden Age
- All That's In The Universe
- 4 Eye, for You(新曲)
初回限定盤DVD収録内容
- My Way
- High on Life
- Lokahi Lani
- KONOMAMA Def Tech reintroducing RIZE
- Catch The Wave
- いのり feat. SAKURA
- A-1
- The Come Back
- Rays of Light
- Golden Age
- take it HIGHER!!
- My Way (LIVE)
- Deep Blue (LIVE)
Def Tech "UP" Japan Tour 2012
2012年3月31日(土)宮城県 仙台市民会館
OPEN 17:15 / START 18:00
2012年4月5日(木)東京都 NHKホール
OPEN 17:45 / START 18:30
2012年4月6日(金)東京都 NHKホール
OPEN 17:45 / START 18:30
2012年4月8日(日)愛知県 愛知県芸術劇場大ホール
OPEN 17:15 / START 18:00
2012年4月12日(木)東京都 渋谷公会堂 ※SOLD OUT
OPEN 18:00 / START 18:30
2012年4月14日(土)福岡県 福岡市民会館
OPEN 17:30 / START 18:00
料金:全席指定6000円
Def Tech(でふてっく)
中国生まれハワイ育ちのShenと東京生まれのMicroによる2人組ユニット。「ジャワイアンレゲエ(ジャパン+ハワイ+ジャマイカ)」という独自のサウンドを生み出した彼らは、2005年にアルバム「Def Tech」でデビュー。2006年までに3枚のアルバムを発表し、そのトータルセールスは500万枚以上。インディーズ史上最高の売り上げを記録している。しかし同年から価値観や音楽性の違いにより活動休止状態となり、2007年に入るとそれぞれソロ活動をスタート。同年9月に解散した。その後2010年6月に約4年ぶりに活動を再開し、「Mind Shift」「UP」と2枚のオリジナルアルバムをリリース。2012年4月にはユニット史上初のベストアルバム「GREATEST HITS」を発表する。