ナタリー PowerPush - Def Tech
Shen & Microが明かす情熱と苦悩
Def Techが仕事になったらヤバいな
──復活してから、そういう強さとか優しさが自分たちのメッセージ、音楽にも表れるようになったっていうことは、むしろDef Techの音楽のパブリックイメージにどんどん近づいているような気がしてます。
Micro そうですよね。でもそれと同時に、僕のモチベーションは下がってきてますね。
──なんで?
Micro 人生のモチベーションっていうことじゃなくて。……僕は音楽を仕事って考えたことがないんです。だけど音楽だけをこの先ずっとやり続けていくのかって考えたら、仕事になっちゃうのかなって思ってしまって。例えばライブをするにしても、同じループにハマってしまうんじゃないかって……今まではループしてても、自分の中ではループとは感じずに常に新しい発見があったんです。ただこの先10年続けていくとしたら、もっと忍耐が必要だろうし、人生においても音楽でやるべきことも変わっていかないと。僕はDef Techが仕事になったらヤバいなっていう危機感があるんです。今日は素直にそれを鹿野さんには伝えなきゃと思って。……ライブすればみんな集まってくれて、喜んでくれてっていう。そういう状況に慣れちゃうなら、Def Techをやりたくないなっていうのはこのベスト盤と同時に感じてきていて。もっと実験的に作れないかなって思うんです。
──去年「UP」っていうアルバムを出して、あれはタイトルどおり、3月11日以降いろんなことがあるけど心の底からハイになっていこうよっていう気持ちをストレートに表したメッセージアルバムだったわけじゃない? そういうものも出してみて、いろんなことも全部含めてそこが一段落したっていうことなのか、逆に世の中にそういう優しいメッセージは当たっていかないなって思ったのか、どういう感じなの?
Micro 本当にやるべきことってなんなんだろうって……思うんですよね。うち、親父が12年ずっと寝込んでいて……親父は親父で自分の好きなことだけをずっとやり続けてきて、サーフィン業界で日本一と言ってもいいほどの本当にカッコいい人で。今年62歳になるんですけど、新しい挑戦としてお店を出すんですね。でもそういう世代の、自分の好きなことを貫いていく人たちもやっぱり今は破綻しちゃう。ひとりの人間を見ても、国を見ても、壊れなくちゃいけないっていうのを目の当たりにして。僕は音楽はすごく好きだけど、親父のサーフィンみたいなものとして捉えたくないなってずっと思ってきてたから。もちろんDef Techを辞めるつもりだとか、そういうのではなくて。23歳ぐらいのときに感じた音楽への期待……音楽の価値もそうなんですけど、音楽のメッセンジャーとしての手段を、音楽だけじゃなく広げていかないと、音楽だけやっていたらモチベーションが上がらないだろうなっていうことがわかってきたのかもしれない。
──あえて言うけど、音楽と自分の距離感とか、もっと後先考えないでやっちゃえばいいと思いますよ。活動を始めたばかりの頃、それこそ売れる前とかは、山手線のホームでも気分がノるとブレイクダンスしちゃうような、自分にとってはリズムってそういうものだったわけじゃない。Microにとって自分たちがブレイクしていったってことは、パワーゲームかマネーゲームかはわからないけど、意外性を含めてきっと楽しかっただろうし、興奮に満ちていたものだと思うんだよね。いろんな時期にそういうことがあって、今は一周した感じとか落ち着いた感じ……簡単に言うと飽きちゃったんじゃないかなと思うんだよね。だからDef Techだからとか、スタッフがいるからとか、あんまり何も考えないで、前と同じように後先考えないでやればいいじゃん。
Micro ありがとうございます。自分たちの中にあるDef Techらしさだとか、Def Techぽいからやるとか、その方程式ができてきちゃってるのかなって思う。それを壊さないと、「それはDef Tech的じゃないよ」と自分たちで言ってる時点で違うんじゃないかなっていう思いが、このベスト盤のタイミングと同時に浮上してきたんですね。だから次に関しては、鹿野さんが言ってくださってるように、その曲に海の匂いがするからとか、Def Techらしさはこうだからとか、こうしたらツボだろう?とか、そういうことじゃなく、なりふりかまわずやらないと自分がぶっ壊れそうだなと思っていて。……一昨日PVを作っていたんですけど、本当にこの日本はアートが生まれにくいなと思うんです。例えば街を映せないとか、人が映ったらダメだとか、規制ばっかりで……なんだろうなって。そういうのをどうやったらぶっ壊せるんだろうなって、映像の絵コンテを描いてるときから思ってて。自分たちの遊び場もどんどんなくなってきてるし、自分たちの概念も、いつのまにかできているステレオタイプな考え方も含めてぶっ壊さなきゃいけないんじゃないかなって思う。これやったらこう思われるんじゃないかなって考えること自体も壊していかないと。
──やれるよ。だって1回やれたんだから。
Micro はい!
ネガティブにならないとポジティブの良さはわからない
──Def Techが世の中に出てきた当時、音楽業界がバブルが終わることにうろたえていたと思うんだよね。でもそういう時代に、あれだけアッケラカンと聴こえる、ふたつの声だけで勝負する音楽で、音楽シーンを変えていけたっていうのは相当気持ち良かったじゃない? それをやれたんだから、またやれるんじゃないかな。
Micro ありがとうございます(笑)。本当にそうですね。……それを考えたらモチベーション、上がります。
Shen でも僕たちが何を出しても、どんな変化を起こしても、それでDef Techらしいと思うし、どんなにイカれてても、どんなに変になってもDef Techっぽくなるから(笑)。音楽はあんまり関係ないというか……それをわかってる上で動くとすごく変わると思う。でも聴いたことない音、イカれてる音はすごく欲しいです。今まで音楽シーンに対していろいろやってこれたこともあるけど、これからのシーンはまた違うし、今のシーンは違う角度からいかないと変わらないと思う。CDに対してとかダウンロードミュージックに対してだけじゃなく、音楽に対してというか。僕たちのレーベルはインディーズレーベルだけど、そういう、インディペンデントなものがポピュラーになってもいいと思うし。きっとそこからですね、僕たちが音楽を使っていろいろ言えるようになるのは。いつもポジティブでもいいけど、ネガティブにならないとポジティブの良さはわからないし。
──Def Techとして全く新しいシステムにしたいんだね。
Micro そう! そうですね。
CD収録曲
- Vocaline(新曲)
- My Way
- Pacific Island Music
- High on Life
- Consolidation Song (LIVE MIX)
- KONOMAMA Def Tech reintroducing RIZE
- In Outside
- Power in da Musiq ~Understanding
- Irie Got~ありがとうの詩~
- いのり feat. SAKURA
- Catch The Wave (NEW MIX)
- Broken Hearts
- Get Real
- A-1
- The Come Back
- おんがく♬ MUSIC
- Rays of Light
- Golden Age
- All That's In The Universe
- 4 Eye, for You(新曲)
初回限定盤DVD収録内容
- My Way
- High on Life
- Lokahi Lani
- KONOMAMA Def Tech reintroducing RIZE
- Catch The Wave
- いのり feat. SAKURA
- A-1
- The Come Back
- Rays of Light
- Golden Age
- take it HIGHER!!
- My Way (LIVE)
- Deep Blue (LIVE)
Def Tech "UP" Japan Tour 2012
2012年3月31日(土)宮城県 仙台市民会館
OPEN 17:15 / START 18:00
2012年4月5日(木)東京都 NHKホール
OPEN 17:45 / START 18:30
2012年4月6日(金)東京都 NHKホール
OPEN 17:45 / START 18:30
2012年4月8日(日)愛知県 愛知県芸術劇場大ホール
OPEN 17:15 / START 18:00
2012年4月12日(木)東京都 渋谷公会堂 ※SOLD OUT
OPEN 18:00 / START 18:30
2012年4月14日(土)福岡県 福岡市民会館
OPEN 17:30 / START 18:00
料金:全席指定6000円
Def Tech(でふてっく)
中国生まれハワイ育ちのShenと東京生まれのMicroによる2人組ユニット。「ジャワイアンレゲエ(ジャパン+ハワイ+ジャマイカ)」という独自のサウンドを生み出した彼らは、2005年にアルバム「Def Tech」でデビュー。2006年までに3枚のアルバムを発表し、そのトータルセールスは500万枚以上。インディーズ史上最高の売り上げを記録している。しかし同年から価値観や音楽性の違いにより活動休止状態となり、2007年に入るとそれぞれソロ活動をスタート。同年9月に解散した。その後2010年6月に約4年ぶりに活動を再開し、「Mind Shift」「UP」と2枚のオリジナルアルバムをリリース。2012年4月にはユニット史上初のベストアルバム「GREATEST HITS」を発表する。