ナタリー PowerPush - Def Tech
Shen & Microが明かす情熱と苦悩
当時は怒りでしか音楽をやっていなかった
──言ってみればDef Techって、アーティストとして未成年の段階でいきなりブレイクを果たしてしまったっていう。周りもよく見えないし、信号の渡り方もわからないのに世の中の自分たちが知らない人が自分たちの曲を口ずさむっていうところからキャリアがスタートしてますよね。今振り返るとあの頃の自分らはどうだったんですか?
Micro 今パッと言われて気付いたんですけど、確かに多くの子役俳優さんみたいなところありますよね。赤ちゃんでモデルになって大ヒットしたけど、大人になって辞めちゃうとか売れなくなっちゃうみたいな。
──いや、そこまで言ってないから(笑)。
Micro あはは。そうなっちゃったらヤだなあ。でも、当時は怒りでしか音楽をやっていなかったですね。鹿野さんに代々木公園でインタビューされたとき(2007年)に「君は本当に音楽で世界を変えられたのか?」って訊かれましたけど、その言葉は僕の中にはずっとあって。当時はまだ、肩の力が抜けた純粋な音楽っていうのは作れなかったと思うんですね。反骨心と、世の中の無常とか不条理とか、そういうものに対してどれだけアプローチしたら気付けるのか?っていう、そこだけの勝負で音楽をやっていて。当時の自分の声を聴いていても、本当に怒りから出てきていて……燃え方が違うのか、世の中を変えようとする何かが違うのかもしれないけど。……でも絶対ヤなんですよね、この先歳を取っていく中で丸くなったりするのが。人間的に優しくなるとか、キャパが大きくなるとかっていいことだと思うんですけど、一方で怒りに対してもっと熱くなっていかないといけないと思うし。それは意識的にやっていかないと、自然にまかせて流れていくだけだときっと薄まっていくだろうし、燃える炎もどんどん弱まっていくと思うから。過去の曲たちを聴いて、今それと同じことができるか?って訊かれたら同じことはできないなって思うんです。いい意味でも、悪い意味でもね。
──Shenは解散する前までの音楽を聴いて、若き日の自分にどんな言葉をかけてあげたいですか?
Shen それが面白いんですけど「Golden Age」の中にその答えが完璧にあるんです。今振り返ってみると、ありがたい苦労だったんです。「今までしてきたこと、いろいろありました。今まで俺は問題ばかり抱えていると思ってた。毎日どんな瞬間でも坂を登ってるような苦労をしてた。クリアに見える世界とはほど遠い世界。どんな人と一緒にいてもひとりな感じがしていた。自分の中の最大のエネルギーが、自分の嘘と神話を鼻で笑ってた。僕の中をすごく冷たい風が吹いていた」っていう内容の歌詞なんですけど。
Micro 地獄のような風が吹いていたっていうね。
Shen そう。でもそれがあったからこそ今の自分があって、すごくクリアになっているんです。歳をとると硬くなる感じがするんです。それを見てると、そうなりたくない、いつでも自分を変えれるようにしたい。何かあったらそれが勉強になるだろうし、それがあったからこそ自分の中の悪い部分を変えることができるようにしたいんですね。歳取ると、体が衰えて力がなくなるけど、心の中の意志は強く持って新しいことを試しながら生きていきたいし……ずっと勉強ですね(笑)。だから今から5年後、これを見ていてどう思うか?とか、そういうことを考えるのも大事だと思う。
あのまま辞めないで続けていたら
──一番初めの頃は、本当にそういうふうに反発してく、跳ね返していくっていう怒りだとか孤独が表されていたと思うんですけど、「Catch The Wave」のときには、ちょっと発想が変わってきていて。パワーというか、力みが加わった感じだったと思うんです。で、解散後に復活してからは、どんどん光の中にある強さと優しさみたいなものに気付いて、2人の発想も音楽も変わってきてるなと思うんですけど。「Catch The Wave」当時の「パワーでいくぜ!」みたいな頃ってどういう気持ちだったんだろうね。
Micro 僕は社会に対して向かっていく力っていうのは音楽だけではないと思っていて。でも当時は自分の中には音楽以外何もないから、世に対しての不平も不満も全部をまず音楽にぶつけていこうって思った。でも「音楽じゃ救えない部分もある。だから自分の人生の中でいろいろやっていこう」としたときに音楽へのスタンスがちょっと変わってきたんです。音楽を作っていない時間で世界を変えていかなきゃいけないこともあるし……そういうバランスが変わってきたのかなっていうところはあって。音楽に求めているところと、自分たちの人生において求めていくべきこと。Shenが書いた歌詞で「一族の罠が迫ってきているのがわかるか」っていう内容のものがあるんだけど、当時はまさにそのとおりの状況で。問題がいろいろあって、いったんDef Techを辞めざるを得なかったんだなって……今こうして復活してるから言えるけど、僕自身もShenも壊れそうで、みんなそれぞれが今思うとすごいことになっていたんだなって思う。
──それぐらいプレッシャーも大きかったし、自分たちの怒りの矛先にある世界みたいなものからの圧力も大きかったんですか?
Micro お金の問題もすごかったなって、今振り返ると思いますね。友達だと思っていた人が……とかね。「ヒットして自分が変わったと思わなくても、周りの見方が変わるから、お前変わったよなって言われることが多くなると思うよ」って、それを教えてくれた人でさえも変わっちゃったりして。そういうことを気付かせてくれた一番近い人たちがどんどん変わっていってしまうっていうことも経験したので……どうしてもDef Techが1回壊れないと、あのときは収拾が着かなかったんだなって今振り返ると思います。Def Techとしていろんな関係から時を経て独立することが、魂の独立になったのかなっていうか。それまでお世話になっている人もそうだし、これからも感謝の気持ちと思いを返していくだけなんだけど、あのときそのまま続けていたらもっと大変なことになってたと思う。高いところから飛ぶのは痛いけど、そのぐらいの気持ちで作ったものを壊さないと、本当の自立、独立はできなかったんだろうなと思います。
──Shenも当時はかなりナーバスになっていたし、耐え切れなくてハワイに帰っちゃったわけだけど。
Shen 自分のルーツがどこであるか、見失っちゃったっていうか……。自分がなんであるかがわからなくなって、本当に自分探しをしてました。でもヒットしてそういう状況になったっていうのはありがたいことだし、今自分が自分を100%わかってるかどうかはわからないけど、今もこうしてここにいられるのは、みんなの力が集まってるからだから。それは会社の人だけじゃなくて、一緒に仕事する人も、ファンも、みんなのエネルギーで世界を変えようとしてることまで含めて感謝してます。たまにね、ファンからの「あの歌詞にすごく助けられた」っていう声を聴いたりすると、またやりたくなるし。本当に不思議な……仕事とは言いたくないから言葉が難しいんだけど……不思議なものですね。この音楽の世界っていうのは。
CD収録曲
- Vocaline(新曲)
- My Way
- Pacific Island Music
- High on Life
- Consolidation Song (LIVE MIX)
- KONOMAMA Def Tech reintroducing RIZE
- In Outside
- Power in da Musiq ~Understanding
- Irie Got~ありがとうの詩~
- いのり feat. SAKURA
- Catch The Wave (NEW MIX)
- Broken Hearts
- Get Real
- A-1
- The Come Back
- おんがく♬ MUSIC
- Rays of Light
- Golden Age
- All That's In The Universe
- 4 Eye, for You(新曲)
初回限定盤DVD収録内容
- My Way
- High on Life
- Lokahi Lani
- KONOMAMA Def Tech reintroducing RIZE
- Catch The Wave
- いのり feat. SAKURA
- A-1
- The Come Back
- Rays of Light
- Golden Age
- take it HIGHER!!
- My Way (LIVE)
- Deep Blue (LIVE)
Def Tech "UP" Japan Tour 2012
2012年3月31日(土)宮城県 仙台市民会館
OPEN 17:15 / START 18:00
2012年4月5日(木)東京都 NHKホール
OPEN 17:45 / START 18:30
2012年4月6日(金)東京都 NHKホール
OPEN 17:45 / START 18:30
2012年4月8日(日)愛知県 愛知県芸術劇場大ホール
OPEN 17:15 / START 18:00
2012年4月12日(木)東京都 渋谷公会堂 ※SOLD OUT
OPEN 18:00 / START 18:30
2012年4月14日(土)福岡県 福岡市民会館
OPEN 17:30 / START 18:00
料金:全席指定6000円
Def Tech(でふてっく)
中国生まれハワイ育ちのShenと東京生まれのMicroによる2人組ユニット。「ジャワイアンレゲエ(ジャパン+ハワイ+ジャマイカ)」という独自のサウンドを生み出した彼らは、2005年にアルバム「Def Tech」でデビュー。2006年までに3枚のアルバムを発表し、そのトータルセールスは500万枚以上。インディーズ史上最高の売り上げを記録している。しかし同年から価値観や音楽性の違いにより活動休止状態となり、2007年に入るとそれぞれソロ活動をスタート。同年9月に解散した。その後2010年6月に約4年ぶりに活動を再開し、「Mind Shift」「UP」と2枚のオリジナルアルバムをリリース。2012年4月にはユニット史上初のベストアルバム「GREATEST HITS」を発表する。