Deep Sea Diving Club「Left Alone feat. 土岐麻子」インタビュー|常に新しいことに挑戦したい4人が土岐麻子と奏でる最新型シティポップ (2/2)

土岐麻子さんは本当に神でした

──7月には鳥飼さんの作詞作曲による「フーリッシュサマー」がリリースされましたね。

 ずっと福岡で制作していたんですけど、「フーリッシュサマー」からは東京でレコーディングし始めたんです。外部のアレンジャーの方にも入ってもらって。

出原 かなり変化しましたね。

 以前やっていた環境もよかったんですけど、スタジオのサイズや機材の量なんかが全然違っていて。スタッフの仕事もめちゃくちゃ早いんですよ。

出原 スピード感がすごくて、追いつけないです(笑)。

 これまでは自分たちが1つひとつ指示を出しながら進めていたんですけど、こちらの意図を汲んで、どんどん作業を進めてくれて。すごく新鮮だし、刺激も受けてますね。

──そして9月28日にはニューシングル「Left Alone feat. 土岐麻子」をリリースされます。作詞とボーカルで土岐麻子さんをフィーチャリングゲストに迎えた楽曲ですが、これも大きなターニングポイントになりそうですね。

 そうですね。この曲は大井ちゃんのデモ音源が起点になっています。

大井 僕が作ったデモをみんなに聴いてもらったら、「コラボが合うんじゃないか」という話になったんですよ。アルバムにもコラボ曲があって、その流れを続けていきたいということもあって。コラボ相手の候補として、一番に思い浮かんだのが土岐麻子さんだったんです。もともとCymbalsが好きで、カバーもしていました。

大井隆寛(G, Cho)

大井隆寛(G, Cho)

鳥飼 俺もカバーしてました。Cymbalsは渋谷系と言われる音楽にハマるきっかけだったんですよ。

大井 この曲には土岐さんが合うだろうなと思って、ダメ元でお願いしてみたら、すぐOKしてくださって。

 まさにドンピシャでした。

土岐麻子のアーティスト写真。

土岐麻子のアーティスト写真。

──作詞は谷さんと土岐さんの共作ですね。

 自分が一番の歌詞と最後のサビのフレーズを書いて、曲の説明と一緒に土岐さんに送って。「Left Alone」という曲名も最初からあって、男女のデュエット曲というか、カラオケで歌えるような歌謡曲的な歌詞にしたかったんです。ストーリーとしては、男性と女性がお互いに離れようとしていて。2人とも「相手が自分から離れようとしている」という様子を描きたかったんですよね。あと、土岐さんの「美しい顔」のイメージもありました。ちょっと難解な歌詞なんですけど、それがすごくよくて。

──土岐さんとのデュエットはどうでした?

 すごかったですね。ニュアンスの付け方が本当に素晴らしくて。

出原 本当に神でした。

 今までの発声では表現できないフレーズもあったので、土岐さんの歌い方を参考にさせてもらった部分もあって。

大井 サビの後半に颯太くんと土岐さんの掛け合いがあるんですけど、そこに土岐さんの案でハモを入れたら、それがすごくよかったんですよ。歌のメロディとハーモニーがどっちもメインに聞こえて。

鳥飼 あれはすごい技だった。

 2番のAメロも土岐さんに作ってもらったんですけど、それもすごくカッコよくて。

鳥飼 うん。言葉とメロディの当て方が独特なんだよね。

 キャリアの差を感じたというか、大変勉強になりました。

Deep Sea Diving Club
Deep Sea Diving Club

「まずやってみよう」が口癖

──高品質ポップと呼びたくなるようなサウンドも素敵ですね。

出原 ハイブリッド感があるんですよね。新しいテクニックにもトライしているんですけど、ドラムに関しては、生と打ち込みの両方を使っていて。具体的に言うと、ハイハットはすべて生で、バスドラは打ち込み。スネアは生音で録音したものを貼り付けてるんですよ。ベースも同じように、生とシンセベースを融合させていて。

鳥飼 シンベを本格的に使ったのは初めてですね。しかもベースはスラップ奏法なので、かなりのトライでした。

 「今までのDeep Sea Diving Clubと違う」という印象を持ってもらえるとしたら、シンベの存在が大きいと思います。往年のシティポップ、2000年代以降のダンスミュージック、今現在のシティポップとか、いろんな要素が混ざっていて。

出原 うん。東京じゃないとできなかった音だと思いますね。

──懐古的ではない、新しいシティポップですよね。土岐さんご自身も、常に“今”のポップミュージックを志向されている方なので。

 そうなんですよね。土岐さんの「PASSION BLUE」(2019年10月発売)というアルバムがすごく好きで。バンドサウンド、打ち込み、ラップもフィーチャリングの曲もあって。あれだけのキャリアがあって、今も新しいことをやっているのが素晴らしいなと。

鳥飼 自分たちも「新しいことをやる」というのは結成したときから一貫していて。

鳥飼悟志(B, Cho)

鳥飼悟志(B, Cho)

出原 それがなくなったら終わりだと思ってるんですよ。

 「まずやってみよう」が口癖になってますからね。「見る前に飛べ」じゃないけど、とにかく「やってみてから考えよう」というのは全員に共通しているので。自分が飽きっぽいというのもありますね。常に新しいことをやってないと嫌というか。

鳥飼 新しいことへの挑戦を続けることで、自分たちのスキルアップにもつながりますからね。

出原 やってないことを取り入れる、受け入れることも大事だし、それを自分たちの中でしっかり咀嚼することも同じくらい大事で。すごく細かい違いだったりするんですけど。指摘されないとわからないくらいの差異が音楽には大事だったりするので、そういうこだわりを持つことは必要ですよね。

──その姿勢がこのバンドの核なのかもしれません。「Left Alone feat. 土岐麻子」のあともポップな曲が続きそうですか?

 みんな好きですからね、ポップな曲は。

出原 あとは踊れることかな。アルバムの収録曲も“踊れるかどうか”が基準だったので。

鳥飼 そこはこだわってましたね。ポップなもの、踊れる曲は幅広いリスナーに届くだろうし、今後も出していきたいと思っています。

 この前もバンド内コンペをやったんですよ。

大井 メンバー全員で曲を持ち寄って。

鳥飼 バンドメンバーは仲間であると同時にライバルなので(笑)。

──ポップで踊れるバンドが軸になると、フロントマンの存在も重要では?

 そうなんですよ。もともと目立ちたがりなんですけど、このバンドを始めてからは、「僕だけじゃなくてメンバーも見てほしい」という気持ちが強くなって。でも、ワンマンライブをやるようになってからは、「やっぱりボーカルはボーカルだよな」と。ステージの上で人を惹きつけられる人間になりたいんですよね、やっぱり。

鳥飼 いいこと言うやん。颯太くんが動いてくれると俺らも動きやすくなるし、お客さんの雰囲気も柔らかくなるんですよ。

出原 うん。最近は「4人でスターになろう」と言い合っています(笑)。

Deep Sea Diving Club

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プロフィール

Deep Sea Diving Club(ディープシーダイビングクラブ)

谷颯太(G, Vo)、出原昌平(Dr, Cho)、鳥飼悟志(B, Cho)、大井隆寛(G, Cho)が2019年に結成した、福岡を拠点とする4人組バンド。2020年10月に配信シングル「cinematiclove」を発表。2021年5月に「フラッシュバック'82 feat. Rin音」、7月に「SUNSET CHEEKS feat. Michael Kaneko」、10月に「Just Dance feat. kiki vivi lily」と、フィーチャリングゲストを迎えた配信シングル3部作をリリースした。この3部作も収録された1stアルバム「Let's Go! DSDC!」を2022年3月にリリース。同年9月に土岐麻子をフィーチャーした「Left Alone feat. 土岐麻子」を配信リリースした。現在FM FUKUOKAでは毎週金曜深夜に冠ラジオ番組「Deep Sea Diving Clubの深く潜って」を放送中。