ナタリー PowerPush - DECO*27
ボカロP再始動のためのベストアルバム
ミクをキレイに聴かせるためのカーリー・レイ・ジェプセン
──先ほどの言葉を聞くに、新作はサウンドの肌合いがけっこう変わりそうですね。
変わりますね。音楽の趣味も最近ガラッと変わりましたし。
──以前はBlink-182やSum 41みたいなパンキッシュなバンドが好きだって言ってましたよね(参照:DECO*27「ゆめゆめ」インタビュー)。あと「名前に数字が入ってるバンドが好きだから自分の名前にも数字を入れてみた」とも(笑)。
あはははは(笑)。今はもっと大衆向けというか、カーリー・レイ・ジェプセン、ジェイソン・デルーロ、One Direction、5 Seconds of Summer、R5とかを聴いてますね。
──確かにけっこうな変化ですね(笑)。
なんか最近、歌がちゃんと聞こえてくるミックスや音作りをしたほうが自分自身に響くなと思って。まあ洋楽だから歌詞の意味が完璧にわかっているわけじゃないんですけど、それでも歌詞は丸々聴き取れる。そういう歌を大事にしているサウンドってやっぱりいいな、と。僕の場合は生身のボーカルじゃなくてミクなので「ミクの声をキレイに聴かせたいな」って考えるようになったんです。みんなミクが歌う歌が好きだと思うし。
壁を取っ払いたい
──DECO*27って名前がここまで売れても「ボーカロイドが歌ってるからみんな自分の曲を聴きに来る」って感覚なんですか。
そうですね。1周した感じがしています。ボーカロイドプロデューサーとして活動を始めて、顔を出してライブをやって、いろんな人とコラボして、いろんな世界を見てきた結果、今自分が本当にやりたいのはボーカロイドなんだなって。みんながボカロのことやシーンのことを愛していて、力を合わせて盛り上げようとしているこの世界なんだな、と。僕がニコ動に上げた新曲をきっかけにボーカロイドの存在を知る人もいるだろうし、逆にボーカロイドファンの人が、ニコ動に上がっているいろんなボーカロイド曲を聴いたことをきっかけに、知らなかったジャンルの音楽を知ることもあるだろうし。そうやってボーカロイドという存在によってジャンルの壁が取っ払われたり、リスナーの人の趣味の世界が広がったりしたらすごく楽しいじゃないですか。
──壁を取っ払いたいって言っちゃうあたりはBlink-182やSum41を聴いていた頃のまま。パンクスとして立派な態度だと思います(笑)。
あはははは(笑)。
このDJ、いやらしいなあ
──「DECO*27 VOCALOID COLLECTION 2008~2012」は2枚組27曲入りと大ボリュームなんですけど、これはあくまでDECO*27作品の一部。それこそ「みんなが愛しているボーカロイドシーン」でリリースしてきた楽曲中から厳選された27曲なんですよね。
そうですね。自主制作盤の楽曲も含めると倍以上の曲数があって。自分で「DECO*27だから27曲入りにしよう」って言ったんですけど、もう本当に泣く泣く選曲しました。心が痛かったです(笑)。だから27曲のチョイスは僕なんですけど、曲順はレーベルのスタッフにお任せしちゃいました。
──いかがですか? “DJレーベルスタッフ”のつなぎは?
いやもうこのDJ、いやらしいなあと(笑)。特にDISC 1が「愛言葉」から始まって「愛言葉II」で終わっているあたりがすごくいやらしい(笑)。
──キレイなトラックリストですよね。ポップでラブリーな「愛言葉」から始まって、その後アゲめ曲がどんどん続いていって、終盤「愛迷エレジー」「モザイクロール」「弱虫モンブラン」っていうキラーチューン3連射あたりでピークを迎えて。そしてまた「愛言葉」と世界を同じくする「愛言葉II」に帰ってくる、と。
リピートするともう1回ループする感じもいいなと思ってます。聴いている人が「あれ?」ってなりそうで。ただ「このDECO*27って人、怖いな」とも思ったんですよ。「愛言葉」みたいなかわいい曲もあれば、すっごい勢いで「死ね!死ね!ブッ殺すぞ!」みたいなことを言ってる曲もあるし「この人大丈夫かな」って(笑)。まず3曲かわいいのが続いたと思ったら、そのあとの2曲でとんでもなく暗くなって、6、7曲目あたりで「前向いて行こうぜ! イエーイ!」って言ってたかと思ったら「二息歩行」以降、なんかすごくトンガったのがバーッと続くし。
──でもとっ散らかってる感じはないですよね。
「ここはかわいいコーナー」「ここはちょっと落ちてもらうコーナー」って感じで、曲が分類、整理されていて、しかもちゃんと全体的に物語性もあって流れもある。1枚のアルバムとしても成立してますよね。だからホントにウチのスタッフはいいDJだな、と(笑)。
- ベストアルバム「DECO*27 VOCALOID COLLECTION 2008~2012」 / 2013年12月18日発売 / U/M/A/A
- 初回限定盤
- 初回限定盤 [2CD+DVD] / 3500円 / UMA-9030
- 通常盤 [CD] / 2500円 / UMA-1030
DISC 1(全仕様共通)
- 愛言葉 feat.初音ミク
- 僕みたいな君、君みたいな僕。 feat. 初音ミク
- 相愛性理論 feat. 初音ミク
- 心壊サミット feat. 初音ミク
- 罪と罰 feat. 初音ミク
- ゆめゆめ feat. 初音ミク
- むかしむかしのきょうのぼく feat. 初音ミク
- 二息歩行 feat. 初音ミク
- キミ以上、ボク未満。 feat. 初音ミク
- 愛迷エレジー feat. 初音ミク
- モザイクロール feat. GUMI
- 弱虫モンブラン feat. GUMI
- ペダルハート feat. GUMI
- 愛言葉II feat. 初音ミク
DISC 2(初回限定盤のみ)
- 砂時計 feat. 初音ミク
- 恋距離遠愛 feat. 初音ミク
- ハルイチ。 feat. 初音ミク
- オートスコピー feat. 初音ミク
- 隠恋慕 feat. 初音ミク
- No You, No Me feat. 初音ミク
- 愛 think so, feat. 初音ミク
- ダミーダミー feat. 初音ミク
- ラヴゲイザー feat. 初音ミク
- 帰想本能 feat. 初音ミク
- ショコラビーツ feat. 初音ミク
- リノリウム feat. GUMI
- 僕の名前は feat. GUMI
初回限定盤 DVD収録内容
- モザイクロール feat. GUMI [MV]
- 相愛性理論 feat. 初音ミク [MV]
- 弱虫モンブラン feat. GUMI [MV]
- トリノアイウタ feat. GUMI [MV]
- No You, No Me feat. 初音ミク [MV]
- 愛 think so, feat. 初音ミク [MV]
- ペダルハート feat. GUMI [MV]
- むかしむかしのきょうのぼく feat. 初音ミク [MV]
- ゆめゆめ feat. 初音ミク [MV]
DECO*27(でこにーな)
1986年12月生まれの、福岡出身の男性アーティスト。父親の影響で13歳でギターを手にし、14歳からオリジナル楽曲を作り始める。その後、ボーカロイドを使って制作した作品をニコニコ動画に投稿すると、乾いたギターサウンドが特徴的なバンドアレンジ耳目を集める存在となる。2010年4月、1stアルバム「相愛性理論」でデビュー。同年12月、2ndアルバム「愛迷エレジー」をリリースした。ほかのアーティストへの楽曲提供も行っており、中でも柴咲コウに提供した「無形スピリット」でのコラボレーションが縁で、柴咲とTeddyLoidとのユニット「galaxias!」を結成したことは大きな話題となった。2012年4月、「DECO*27 feat. 初音ミク」名義として初のシングル「ゆめゆめ」を発表し、7月には中川翔子、声優・悠木碧らが参加の3rdフルアルバム「ラブカレンダー」をリリース。またKOTOKO、Buono!、MEGらへの楽曲提供など、ソングライターとしての活動も積極的に展開する。2013年9月には単独では1年8カ月ぶりとなる新作ボカロ曲「妄想税」を発表。以来「愛言葉II」「音偽バナシ」と毎月連続で新曲を発表している。そして12月にはボーカロイドナンバーのベストアルバム「DECO*27 VOCALOID COLLECTION 2008~2012」をリリースした。