異色だから友達が増えた

MAH　僕らみたいなライブハウスでずっとやってきたバンドは横のつながりが本当にすごいんですけど。でもギターロックとか違うジャンルのバンドと対バンして「誰と仲いいんですか？」って聞いてもあんまり出てこないんですよね。例えばクリープの尾崎くんも「ずっとワンマンやってたからなあ」って言ってて。そういうバンドが多いから、僕らがつながりを広げられるのがこっちもうれしくて。

──こないだのSiMのツアーにもキュウソネコカミとかクリープハイプとか、ギターロックのバンドがたくさん出てましたよね。

MAH　そうですね。基本3バンドでツアーを回るようにしていて、例えばクリープハイプを呼ぶときは、クリープと合いそうな歌モノのパンクバンドを一緒にしたりして。それがクリープと彼らのツーマンだったらよくわかんないけど、間にSiMがいるんだったら「ああ、まあ納得だね」くらいに思えるかなって。僕らも音楽的には、レゲエもあるしスカもあるし、パンクもあるし、重たいのもあるから、ドストライクなジャンルって意外となくて。ずっと、どこにいっても異色な感じだったんですよ。だからこそ逆に友達が増えて、そこをつなげられるのが僕らなのかなと。対バンとか選ぶときの根本にあるところですね。

──SiMだったらワンマンツアーとかもできるだろうに、あえてそこは対バンツアーなんですね。

MAH　やっぱり「AIR JAM」が念頭にあって。「AIR JAM」はジャンル関係なく、パンクバンドとスカバンドとミクスチャーバンドが一緒にツアーしてるのが当たり前だった。それ以降ジャンルが細かく分かれていって、まあバンドが増えたのかもしれないですけど、スカだったらスカで集まって、みたいな感じになったじゃないですか。それが僕的にはちょっと退屈だなあって気がしていて。「AIR JAM世代」と呼ばれるシーンの2010年代バージョンみたいな感じで、「ロック」とか「バンド」くらいの大きい括りでできればいいんじゃないかなと思いますね。最終的には「音楽」で括れるようになるのがいいと思いますけど。すごい小さなジャブかもしれないけど、こういうのを続けていけば何か変わるのかなというのは思います。

「勝たなくていいから負けるな」

綾小路　SiMの新しいシングル「ANGELS and DEViLS」聴かせてもらったんですけど……どうやってあの音を出してるんだろう。本当にすごいなって思って。

MAH　ありがとうございます。

綾小路　1曲の中にいろんなことが凝縮してあって、あれだけ重い音を出しながら、でもすごく強いメロディがあって。ビビりました。こういうジャンルの音楽が、ポピュラリティを持つようになったのはSiMの影響がすごく強いと思うので、すごいなあって思います。僕ら、音楽はものすごく古くて、「ギターのあの音どうやって出すんだろう」とか全然ついていけてないんで……。ライブ楽しみですね。モッシュに巻き込まれて死なないようにがんばりたいなと思います（笑）。

MAH　僕は高校3年生くらいからバンドをしっかりやるようになって、そこからは自分のことで精一杯であんまり音楽を聴かなくなったんですよ。つまり氣志團の「One Night Carnival」とかあのへん以降から今までの音楽が僕の中でけっこう空白で。でも氣志團をフェスで観てるとどの曲も聴いたことある曲ばっかりで、そういうメロディセンスとかすごいなと思います。翔さんは「古い」っておっしゃってましたけど、それが1周まわって新しく聞こえるっていうか、それがすごいなって。僕らのお客さんの前でやってる氣志團を観るのが楽しみです。

綾小路　氣志團の一番すごいところは“セコい”というところなので（笑）。生まれて一度も勝ったことはないんですけど、なんとか負けずに生きて帰るっていうテーマでいつもやっております。当日はこの強力なメンツの中でどうやって命からがら生き抜くのかっていうのを今からドキドキしながら考えております。

MAH　さっきから翔さんがおっしゃること、僕にすごいヒットしてて。実際MCとかでも言うんですけど、それこそ「勝たなくていいから負けるな」とか僕いつも思ってることで。今聴いてて、ロックな考えを持った方なんだなあって今まさに実感しています。

綾小路　僕はもうちょっとインチキな感じですけどね（笑）。「DEAD POP FESTiVAL」のファンたちの前で、さあどうしたもんか、と緊張しますよ。足を引っ張らないようにがんばります。今まで対バン相手の曲をいきなりカバーしたりしてきたんですけど、SiMの曲をね、俺たちの持っている古い変な楽器で鳴らせるのかっていう（笑）。世界一迫力のないSiMの再現をすることになるのか、そこらへんもお楽しみいただければ……。あきらめる可能性もありますし。ちょっといろいろ考えたいなと思ってます。SiMを愛する皆さんにも伝わる何かを。

MAH　おお、それは期待ですね。

──SiMはどんなライブになりそうですか？

MAH　若い子、特に地元・神奈川の若い子たちに夢を与えたくて。僕らは湘南の辻堂っていう小さい街で生まれ育って、僕に至っては高校をドロップアウトしてるんです。そいつがこんなデッカいステージに立てるんだ、しかも自分で作れるんだ、っていうのを、地元の若いバンドマンとか、バンドもやってない将来の夢を探しているような子に見てもらいたい。それでその子たちが何か感じてくれるようなでっかいライブをしたいなと思ってますね。でもいろんな出演者の人に支えてもらえるんで、何かやれることないかなと考えてます。