ナタリー PowerPush - DEAD END
MORRIE×清春、MORRIE×HYDE 2つの対談から読み解く超豪華トリビュート
今年メジャーデビュー25周年を迎えたDEAD END。彼らをリスペクトするアーティストたちが一堂に会したトリビュートアルバム「DEAD END Tribute -SONG OF LUNATICS-」がいよいよリリースされる。
DEAD ENDに影響を受けたアーティストは枚挙に暇がないが、かねてから特にMORRIEへの憧憬を公言してきた清春はその代表的な存在だ。彼のソロとしての1stアルバム「poetry」(2004年発売)には、当時表舞台から離れていたMORRIEがなんとギターで客演。一方、昨今のMORRIEのソロライブには清春がゲスト出演するなど、両者が密接な関係にあるのは改めて説明するまでもないだろう。確かな足跡を刻み続けてきた2人の言葉からは、際立った個性の成り立ちが自ずと見えてくる。
取材・文 / 土屋京輔 撮影 / 広川智基
MORRIEさんの唱法に「えっ!?」と驚かされて
──まずはお2人の出会いについてですが、これは清春さんがMORRIEさんの存在を知ったきっかけにさかのぼることになりそうですね。
清春 高校2年生のときですね。同級生の家に下宿していた先輩がいて。その人はロックとかパンクとかのマニアで、レコードもいっぱい持ってたんですよ。家には雑誌もいっぱい置いてあって……気になるバンドがあったら、図書館みたいに「これだよ」って(アルバムを)出してくれるんですね。僕はそこでDEAD ENDの存在を知って「DEAD LINE」(1986年発売1stアルバム)を聴いたとき、歌が恐ろしくカッコいいと。それまでの僕はスライダーズ(THE STREET SLIDERS)とか好きだったんです。パンクというかロックンロールです。だからわりと声が高いボーカルにあまり興味がなかったんですよ。若かりし頃はなぜか、ハイトーンだとあまり男らしくないイメージも僕にあって。でも、MORRIEさんの歌を聴いて、その唱法に「えっ!?」と驚かされて。ハイトーンでありながら、時に歪んだ声だったりもする。そこからのめり込んでいって……今もずっとです。
──最初はやはり「DEAD LINE」なんですね。
清春 そう。それから(シングルの)「Replica」も「Worst Song」も聴いて。そのうちメジャーデビューされて、そのときに名古屋の芸創センター(名古屋市芸術創造センター)にライブを観に行ったんです。そこで「ウワッ」とさらに衝撃を受けました。
──MORRIEさんの歌唱は、それまでどのように培ってきたものだったんですか?
MORRIE いきなりそういう方向に行くの?(笑)
──ちょうどそんな話が出ましたから(笑)。
MORRIE 基本的に「DEAD LINE」のときのギャオギャオした、喉を酷使してナチュラルディストーションをかける歌い方はね、僕が最初にヒントを得たのは、ロニー・ジェイムス・ディオなんですよ。ヒントを得たというか、若い頃は、いいなと思ったらとりあえずコピーするじゃないですか。もちろん、その通りには歌えない。でも、そこでけがの功名的な、「これでも行けるよな?」っていう自分なりの何かに気付くわけですよ。それから、ギャオギャオいってるのとは対照的に、急にきれいな歌い方になるところは、その極端さ、バランスやね。あれは当時、あんまりやってるヤツもいなかったんちゃうかな。僕はいろんな意味で、当時はスタイル重視だったんです。バンドのあり方とか、自分のあり方とか、自分の歌とか。そんなときに今回もトリビュートに参加してくれている、GASTUNKのBAKI(Vo)ちゃんを好きになって、よくライブを観に行ってたんですね。彼は、ある曲はシャウトして吼えている。でも「Dead Song」のような曲では最初から最後まで、しっとりきれいな感じで歌ってて、GASTUNKは曲でメリハリを付けてた。それを僕はあえて1曲の中でやりたいなと思ったんですよ。例えば「Replica」や「Perfume Of Violence」みたいにね。それが僕の唱法について、当時思っていたことですね。
前に進まんからね、無批判にマネしちゃう人は
──MORRIEさんの歌唱は、当時インパクトがありましたよね。こんなスタイルの歌は聴いたことがないと、誰もが感じたと思いますよ。
清春 僕、MORRIEさんがインタビューでGASTUNKの名前を出されてたんで、あとからGASTUNKを聴きましたね。まあとにかく歌だけではないんですけど、僕の周りの人たちも、MORRIEさんに関しては「これは(他のアーティストとは次元が)違う」という捉え方でしたね。
MORRIE 当時はいろいろなジャンルで明確に分けられてたじゃないですか。パッと見たらやっている音楽がわかるし、言いそうなこともわかるし(笑)。まだBOOWYとかXとかが売れる前で、基本的にバンド界隈は外タレ志向が圧倒的だったので、自分の好きなアイドルを見つけたら、何から何までマネするって人ばっかりだったんですよ。そんな中で、ちょっとDEAD ENDは面白かったよね。集まってるメンツもそうやったし。
清春 ジャパメタ(ジャパニーズメタル)の人とかは、髪長くて、ちょっと盛り上がってたりしたんですよね、今のギャルみたいな(笑)。でも、当時MORRIEさんだけは髪を立ててたんです、サイドアップにもして。あれはたぶん……今もこのジャンルに脈々と流れる髪型の原型を作ってますよね。
MORRIE そうなの? あれも伊集院という僕と清春の共通の知り合いがいて、よくライブにも手伝いに来てくれてたんだけど、彼と一緒に「今日はどうしよう、ああしよう」とか2人で毎回微妙に変えていきながら、だんだんできあがっていって。だからなんでもそうやね。これがいいからってすんなりマネするのは、むちゃくちゃ抵抗があってね。やるにしても、絶対に自分なりのアレンジを加える。前に進まんからね、無批判にマネしちゃうという人は。
──でも当時、髪型をはじめ、MORRIEさんのマネをする人は身近にもよくいましたよ。
MORRIE まあ、わかりやすいからさ(笑)。メイクもしてるし、髪の毛もバーッと立てて、衣装も決して地味じゃないし。
清春 ホントにフォロワー率はすごかったですよ。でもカッコよくなかったら、みんなマネしないからなあ。僕もそれにやられましたけど、男子が思う「ウワッ!?」というポイントをすごく持ち合わせてる。もちろん女子もいたんでしょうけど。
MORRIE そうなんや?(笑)
清春 ええ。僕みたいに、今回のトリビュートアルバムに参加した人たちの多くが、学生時代に影響を受けたんだと思うんですよね。
MORRIE DEAD ENDを観て「こんなバンドをやりたいと思った」って人はけっこう多かったね。俺がどうとかじゃなく。それは当時、僕も感じてたことですよ。清春とか、LUNA SEAとか、ラルク(L'Arc-en-Ciel)とかがリアルタイム第1世代で、ガーッとそのあとに出てきて。
- V.A.「DEAD END Tribute -SONG OF LUNATICS-」/ 2013年9月4日発売 / 3150円 / motorod / AVCD-38651
- [CD] 3150円 / AVCD-38651
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収録曲
- Embryo Burning
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:HYDE(L'Arc-en-Ciel / VAMPS)
Guitar:HIRO(La'cryma Christi)
Bass:岡野ハジメ
Drums:Shinya(DIR EN GREY) From The Album “shámbara”(1988) - I Can Hear The Rain
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:RYUICHI(LUNA SEA)
Guitar:咲人(NIGHTMARE)
Bass:SHUSE(†яi¢к / La'cryma Christi)
Drums:shuji(Janne Da Arc) From The Album “shámbara”(1988) - The Godsend / 清春 (Words & Music:MORRIE) From The Album “GHOST OF ROMANCE”(1987)
- Night Song
(Words:MORRIE Music:"CRAZY" COOL-JOE)
Vocal:栄喜(SIAM SHADE)
Guitar:室姫深
Bass:tetsuya(L'Arc-en-Ciel / TETSUYA)
Drums:山崎慶(Venomstrip) From The Album “shámbara”(1988) - Serafine
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:宝野アリカ(ALI PROJECT)
Guitar:SUGIZO(LUNA SEA / X JAPAN / JUNO REACTOR)
Bass:TOKIE(unkie / LOSALIOS)
Drums:ササブチヒロシ(東京酒吐座 / Creature Creature) From The Album “ZERO”(1989) - So Sweet So Lonely
(Words:MORRIE Music:YOU, Hajime Okano)
Vocal:yasu(Janne Da Arc / Acid Black Cherry)
Guitar:Shinobu(Creature Creature / The LEGENDARY SIX NINE)
Bass:人時
Drums:真矢(LUNA SEA) From The Album “ZERO”(1989) - Spider In The Brain
(Words:MORRIE Music:TAKAHIRO)
Vocal:高野哲(ZIGZO)
Guitar:you(Janne Da Arc)
Bass:FIRE(the Badasses)
Drums:MOTOKATSU MIYAGAMI(THE MAD CAPSULE MARKETS) From The Album “DEAD LINE”(1986) - Dress Burning
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:越中睦士(†яi¢к / Λucifer)
Guitar:HIZAKI(Jupiter)
Bass:燿(摩天楼オペラ)
Drums:HIROKI(D) From The Album “METAMORPHOSIS”(2009) - Perfume Of Violence
(Words:MORRIE Music:TAKAHIRO)
Vocal:BAKI(GASTUNK / MOSQUITO SPIRAL)
Guitar:Marty Friedman
Bass:Luna(Eins:Vier / RaFF-CuSS / R2Y+J リリィ・ジョーカー)
Drums:YUKI(Jupiter)
Keyboard:都啓一(SOPHIA / Rayflower) From The Album “DEAD LINE”(1986) - Blind Boy Project / cali≠gari (Words:MORRIE Music:YOU) From The Album “shámbara”(1988)
- Sacrifice Of The Vision
(Words :MORRIE Music:TAKAHIRO)
Vocal:aki(ex Laputa)
Guitar:千聖(PENICILLIN)
Bass:IKUO(BULL ZEICHEN 88 / Rayflower)
Drums:LEVIN(La'crima Christi)
Keyboard:kiyo(Janne Da Arc) From The Album “DEAD LINE”(1986) - 冥合 / Boris (Words :MORRIE Music:YOU) From The Album “METAMORPHOSIS”(2009)
- Embryo Burning
(Words:MORRIE Music:YOU)
Vocal:HYDE(L'Arc-en-Ciel / VAMPS)
DEAD END(でっどえんど)
1984年に結成されたロックバンド。1986年に1stアルバム「DEAD LINE」をインディーズで発表し、当時のインディーズシーンでは破格のセールスを記録する。1987年にはMORRIE(Vo)、YOU(G)、"CRAZY" COOL-JOE(B)、MINATO(Dr)という布陣でアルバム「GHOST OF ROMANCE」でメジャーデビュー。メタルやグラムロック、ゴス、パンク、プログレなどを取り入れた多彩な音楽性と、MORRIEがつづる独特な世界観で人気を博す。1988年に「SHAMBARA」、1989年に「ZERO」とアルバムを発表するも、1990年にMINATOの脱退とともに解散。その後はそれぞれ音楽活動を続けていたが、2009年にMORRIE、YOU、"CRAZY" COOL-JOE、MINATOの4人で再結成を発表。同年8月に開催されたイベント「JACK IN THE BOX2009 SUMMER」で、約20年ぶりに復活を果たした。さらに11月には5thアルバム「METAMORPHOSIS」を発売。以降はMORRIE、YOU、"CRAZY" COOL-JOEにサポートドラマーという布陣で定期的にライブ活動を続ける。2012年3月に6thアルバム「Dream Demon Analyzer」を発表。同年9月にはメジャーデビュー25周年を記念したライブ「Kaosmoscape」を渋谷公会堂などで行った。そして2013年9月、DEAD ENDをリスペクトするアーティストたちが一堂に会したトリビュートアルバム「DEAD END Tribute -SONG OF LUNATICS-」をリリース。
清春(きよはる)
1968年生まれ、岐阜県出身。1991年にロックバンド・黒夢を結成し、ハードかつグラマラスなサウンドで人気を集める。1994年にメジャーデビューを果たし、1999年に活動停止。その後自身のレーベルを立ち上げ新バンド・サッズとして活動を行う。2003年からはソロ活動を開始。また、自身のアパレルブランドを手がけるなど多方面での活動も知られている。
2013年9月5日更新