曲名はすべて、わかる人にはわかる用語です
──「遠い未来の世界。暗殺者の少女が出会ったのは、壊れたアンドロイドだった。二人で過ごす時間が少女を変えていく」というコンセプトはどのようにして生まれたのですか?
RYU 今回の作品はコンセプトアルバムになっていて、曲と曲の間にドラマパートを挟みながら進行していく構成になっています。当初は曲だけの内容だったのですが、こっこちゃんのよさをより引き立たせようと、そして今までにないものを作ろうと考えて、こういう形になりました。
小岩井 通常と順序が逆なんですが、できあがった曲を聴いていくうちに、この世界観を伝えるためにもストーリーを付けようというアイデアが上がったんです。私もそれには大賛成でした。ストーリー付きだと、このアルバムがよりアルバムとしての意味を持つ気がしたので。
RYU ドラマパートのストーリーは、原案をこっこちゃんが考え、シナリオライターさんが昇華させてくださりました。「暗殺者の少女と壊れたアンドロイド」という設定は、小岩井ことりとRYUに重ね合わせられることもできるんじゃないかなと思います。想像はあなた次第です! ちなみに途中の会話で、アンドロイドがギターで答えている箇所もあるのですが、あれは実際にギターを弾いて表現してみました。物語にはSFやSci-Fi感があり、DAWのサウンドとリンクできるようになっています。
小岩井 具体的なシナリオやセリフ、キャラクター、世界観の設定はライターさんが作ってくださるとのことだったので、私からは「コールドスリープものが好き」というリクエストを伝えさせていただきました(笑)。次のアルバムを作れたらストーリーや世界観も自分で考えてみたいです。
──朗読パートのタイトル「UAD」はUADプラグインとかけていますよね?
RYU おっしゃるとおりです。実は曲名はすべて2人の共通点であるDTM関連の用語になっているんです。わかる人にはわかると思います。それでドラマパートもそうしようと思い、「Universal Alter Dimension」の略として「UAD」にしました。ちなみに「Dimension Expander」は僕がよく使っているシンセ「MASSIVE」のエフェクトの名前です。DAWの曲の7割ぐらいは「MASSIVE」を使っています。
──アルバムタイトルを「ALTER EGO」にした理由は?
RYU 変革、変えるという意味の“ALTER”と、自我意識という意味の“EGO”という意味で付けました。僕の中では“DUAL”という言葉が省略されています。僕ら2人はこの先、さまざまな変革された世界を見ることができると思います。
キャラクターとして歌うことを意識せずに自分らしく
──今回のコンセプトのように、なんらかのストーリーおよび主人公が設定されていたほうが、小岩井さんは声優として演じやすい=歌いやすい、というようなことはありますか?
小岩井 日頃の声優の仕事では、自分自身として歌うことはないので、確かにキャラクター設定があるとすごく歌いやすいのは間違いないです。ですが、今回はストーリーを付けることになったのがレコーディングよりあとだったので、あまりキャラクターとして歌うことを意識せず、自分らしく歌ったところが多い気がします。
──小岩井さんは一連の楽曲の歌詞、および朗読パートのセリフに、共感する部分やご自身と重なる部分などはありますか?
小岩井 私もだいたい1人でやってきたので、最近になっていろんな方々と一緒に力を合わせるということを学んでいる最中で(笑)。主人公のそういう境遇には共感しました。
──楽曲制作において、小岩井さんのボーカルを生かすために留意したことなどはありますか?
RYU まず譜割りですね。1人何役もこなせるこっこちゃんですから、何が来てもいいようにボーカルラインを考えました。こっこちゃんも積極的にボーカルパートをアレンジしてきますので、僕も俄然やる気になりますね。僕が全曲でミキシングエンジニアも担当しているのですが、こっこちゃんもDTMに精通しているので、何も言わなくてもわかるというところが本当にスムーズです。「あ、これこれ!」っていうデータが上がってくるので、制作は本当にストレスがありません。
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ボーカルの音域は通常ではありえないほど高い