「のんのんびより」の宮内れんげ役や「アイカツ!」の大地のの役などで知られる声優の小岩井ことりと、世界的に活躍するヘヴィメタルバンド・BLOOD STAIN CHILDのギタリストであるRYUが、新ユニット・DUAL ALTER WORLDを始動。1stアルバム「ALTER EGO」をリリースした。
難関のMIDI検定1級に合格するほどのヘビーなDTMユーザーであり、ほかの声優への楽曲提供やラジオのジングル制作なども手がけている小岩井と、コンポーザーとしてBLOOD STAIN CHILDのほぼすべての作曲を担当しているRYU。2人はどういう経緯でユニットを結成し、このアルバムを作り上げたのか。音楽ナタリーでは多忙な2人にメールインタビューを行い、DUAL ALTER WORLDの実態に迫った。
質問文作成 / 須藤輝
メタルは永遠なんですよ!
──小岩井さんはメタルというジャンルになじみはありましたか?
小岩井ことり メタルは実は大好きでした! Nightwishの「Ghost Love Score」を聴いて衝撃を受けたのがきっかけです。木管、金管、ストリングス、そしてドラムやギターやベースの上に、ボーカリストであるターヤ(・トゥルネン)の歌声が重なって、それまで聴いたことがないほど壮大な音楽がそこにあったので。なかなか普通のポップスにはないバンド編成だったり、メロディ、ハーモニー、リズムなどにメタルならではの要素があったりするのが大好きです。楽曲ができた経緯やバンドの歴史を知りたくなるような名曲が多いんですよ。Primal Fearの「Metal is Forever」なんてタイトルからしてもう“漢メタル”ですよね! メタルは永遠なんですよ! Stay Metal! ライブ前とかにテンション上げるためによく聴いています(笑)。
──小岩井さんの周囲には、ほかにもメタルを好きな人がいたんですか?
小岩井 好きになってから気付いたんですが、メタルに詳しい方々が意外と身近にいっぱいいらっしゃって。メタラーの皆さんって本当に親切なんですよね。「メタルの歴史でわからないところがあるんです」と質問させてもらったエンジニアさんなんて、資料まで作ってくださって、感激しました! メタルも、メタルを大好きな皆さんのことも、より大好きになりました。
──DUAL ALTER WORLDを結成した経緯をお聞かせください。
RYU 最初は僕からこっこちゃん(小岩井)にコンタクトを取ったんです。以前から2人でユニットをやりたいなと思っていたんですね。そして僕は普段の楽曲制作のお仕事で声優さんとご一緒することがあって、そのたびに声優さんの表現力や歌唱力に感動していたんですよ。それで「声優さんで誰かいい人いないかな」と探していたところ、“メタル好きの声優さん”としてまとめ記事まで作られていたこっこちゃんにたどり着いたんです。
小岩井 メタルはもともと好きで聴いていたのですが、ある日事務所から、BLOOD STAIN CHILDのRYUさんから「一緒にメタルをやりませんか?」とオファーをいただいていると連絡があって。突然のことで本当に驚きました。そもそもメタルボーカリストへの憧れはずっと抱いていたので「ぜひやりたいです!」と即答しました。
RYU 僕もBLOOD STAIN CHILDというメタルバンドをずっとやっていますし、やるならメタルかなと考えていたので、もうこれ以上ないボーカリストだと思っています。実際、一緒に制作や現場で話していても、2人に“メタル”“DTM”“アニメ”という共通の趣味があるからとても打ち解けやすかったですし、楽しく活動できています。
──バンド名の「DUAL ALTER WORLD」にはどんな意味を込められたのですか?
小岩井 2人共DTMで作曲編曲をするという点から、DTMに使う「Digital Audio Workstation」と頭文字が同じになるようにしました。お互いが作曲も編曲も録音もできるからこそ産み出せるサウンドになるんじゃないかというのは、結成のときから期待していました。
RYU 2人のDAWのスキルは高く、作曲から編曲、ミックスまでできるレベルのDAW使いということもあり、略称がDAWになるように考えていきました。そしてDUAL(2人)でALTER(変革)し、WORLD(世界)を作り上げていくという意味を強く込めています。
1曲の中で1人2役とか、まるで別人のように歌える
──小岩井さんから見て、RYUさんのアーティスト / クリエイターとしての魅力はどんなところにありますか?
小岩井 まず素晴らしいのが、“デジタル×メタル”の先駆者というところですね。そしてギターのプレイスタイルが本当に幅広くて! 今回の「ALTER EGO」でもいろんな演奏を楽しんでいただけると思います。驚いたのは、作曲も編曲もスピードがすごく速いこと。「1日で何曲あがってくるんだ!?」と驚きました。特に編曲は手がけるジャンルの幅が広く、メロデス、メロスピからシンフォニックまですべて魅力的に仕上げてくれます。
──RYUさんから見て、小岩井さんのボーカリストとしての魅力はどんなところにありますか?
RYU 表現力がとても豊かで、歌詞の一語一語に繊細で美しい声が乗っているところに胸を打たれますね。そして1曲の中で1人2役とか、まるで別人のように歌えるというところも大きな魅力です。これは必聴ポイントだと思います。皆さんびっくりすると思いますよ。あと女性声優さんとしては前代未聞な、グロウルができることも強い武器ですね。
──小岩井さんはご自身で作詞・作曲・編曲もなさる方ですが、DAWの楽曲制作にも関わっているのですか?
小岩井 今回は全曲の作詞と、1曲の作曲を担当させていただきました。作曲させていただいた「Veracila」はずいぶん昔に作った曲です。今回こうして皆さんに聴いていただけてうれしいです。作詞は、RYUちゃんが仮曲の段階からタイトルを付けてくれていたので、そのタイトルを基にして膨らませました。ボーカルのレコーディングは自宅で1人で行いました。
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