この4人でしか起こせない何かを作るのがアーティストとしての使命
──前作の「Application」はスマホ世代の現状を切り取った風刺的な部分もテーマにあったと思いますが、今作のテーマはどういうものでしょうか?
MONJOE デジタルとアナログの二面性みたいなところですかね。例えば1曲目「Memory」は言葉のテーマで言うと、デジタルではCPUのメモリ、アナログでは記憶とか思い出とか、そういう意味です。1つの言葉で2つの意味が共存することができると言うか、10曲の共通点はそういうところですね。
──「Cool Wind」は伊原さん加入時にセッション映像を公開した曲なんですよね。
大井 懐かしいね。
MONJOE 「we clove our way through the air」「we love our way through despair」と歌っているように、この4人でたどってきた道のりはつらかったこともあったけど、それも含めて愛しいということ、だからこの4人で歩んでいくんだっていう意思表示の歌なので。それをこのメジャーデビュー作に入れたかったんですよね。
──ほかに自分たちの意思表示的な曲で言うと、どの曲になるんでしょうか?
MONJOE 「Dice」ですね。夜遊びの歌ではあるんですけど、比喩的に自分たちがメジャーという新しいフィールドに行くことは1つの覚悟の象徴だということを歌っていて。
──サウンドで意識したところはありますか? 例えば電子音とバンドサウンドの割合だとか。
MONJOE いや、特には。
早川 でもちゃんと半分くらいずつになっているのは、MONJOEの潜在的なものなのかね?
大井 ルールを設けないからこそ自然とこうなったんじゃないかなと僕は思います。歌詞も仲間同士でディスカッションして作っているし。
──日本語の歌詞はDosMonosのTITANさんや荘子itさんと共作されていますよね。
MONJOE そうなんです。今作はDATSのステイトメントを発表する場であったと同時に、より僕らしさを出さないといけないと思ったんですよ。アメリカで生まれて日本で育ったというのは僕のアイデンティティの1つで、英語と日本語の両方を使えるのは強みなんです。個人としての背景をしっかりここに投影させることも、DATSをDATSたらしめる要素の1つじゃないかなと考えて。日本語の作詞にトライするのが初めてだったので、僕のことをよく理解してくれていて、伝えたいことをちゃんと日本語に置き換えてくれる存在の彼らと共作したんです。
──MONJOEさん率いるDATSにしかできないことが詰まったアルバムになったんですね。
MONJOE そうですね。この4人でやっていくぞというステイトメントなのであれば、この4人でしか起こせない何かを……僕1人じゃ予想できなかったものを作らないといけない、それを作るのがアーティストとしての使命だと思っているので。これからもDATSにしかできないという縛りの中でいろいろとトライしていきたいと思っています。
バンドの成長と一緒に大きくなっていくフェスをやりたい
──最後にDATSがこれから目指すところ、ビジョンを聞かせていただけますか。
伊原 DATSはロックバンドであることが強みだし、またロックバンドらしくない考えを持っているのも強みだと思っていて。しっかりツアーで全国を回るけど、演出にこだわったライブもいろいろ展開していきたいんです。今はサラウンドシステムとか照明を持ち込んでライブをしてますけど、ライブハウスという規模に囚われたくないと言うか……。
MONJOE まあ平たく言うと、赤字に恐れずトライしていくスタンスは持っていますよっていう(笑)。ワンマンの回数を重ねるごとに新しいアイデアが生まれていくので。
大井 サービス精神旺盛なバンドなんですよ。幸せなことに僕らのバンドは照明やPA、テック系のチームが充実していて。僕らのシステムの一員になってくれる賛同者がすごく多いんですよね。そういう人たちを総動員すれば、ライブハウスじゃない場所でもライブができるんじゃないかなと思っています。例えば大きな廃墟に音響システムを設置してライブをしたりとか。
伊原 僕ら自身が“Digital Analog Translation System”になっていくことが目標なんです。
──DATSがその略称とは言われていますけど、それって後付けなんですよね?(笑)
MONJOE 今では「元からそうでした」って言うくらい、僕らのスタンスにその言葉がフィットしてます(笑)。
伊原 あとはMONJOEの叶えたい夢が1つあるよね。
MONJOE 主催フェスをやりたいんです。要はカタログをちゃんと作りたいと言うか……そう言うと仰々しいですけど、カタログ的な見せ方をバンドが先陣を切ってやりたい。それは今の日本の音楽シーンに必要なことのような気がしていて。
伊原 どのことに対してもミクスチャーでいたいと思っている自分たちを一番よく表現できる場所が、フェスを開くことなんですよね。いろんなアートを取り込んで、出演者もバンドもDJもラッパーもいて……それって全部フェスでできること。
早川 “Digital Analog Translation System”としてやりたいことの集大成がフェスを開くことなんじゃないかなって思っています。
──最初に話していた、日本の音楽シーンにとってプラスになることの1つがフェス開催なのかもしれないですね。
MONJOE それも1つですね。“伝説のレイヴパーティ”みたいな話をよく聞くんですよ。「こんな場所でレイヴパーティやってたなんてヤバいよね」みたいな。自分たちはまたそういうものを作りたいと思っています。いきなり大規模なものはできないので、ライブハウスを借りて小さなパーティを開くところから始めようかと。こういうのってバンドがデカくなってからやるんじゃ意味がないなと思うので、バンドの成長と一緒に自分たちのフェスを育てていきたいなと思っています。
- DATS「Digital Analog Translation System」
- 2018年6月20日発売 / SME Records
-
[2CD]
3456円 / SECL-2296~7
- DISC 1
-
- Memory
- 404
- Dice
- Interlude
- Cool Wind
- JAM
- Alexa
- TOKYO
- Pin
- Heart
- DISC 2
-
- Memory(MIRU SHINODA Rework)
- 404(Licaxxx Remix)
- Dice(Dos Dub Remix)
- Interlude feat. Pecori & SunBalkan(踊Foot Works)
- Cool Wind(Yoshinori Sunahara Remix)
- JAM(starRo Remix)
- Alexa(GARDEN CITY MOVEMENT Remix)
- TOKYO(Kai Takahashi Remix)
- Pin(WONK Pin-Funk Remix)
- Heart(Hidefumi Kenmochi Remix
- DATS(ダッツ)
- MONJOE(Vo, Syn)、早川知輝(G)、伊原卓哉(B)、大井一彌(Dr)からなる4人組バンド。2013年に結成された。2015年に「DIVE」でUK.PROJECTよりデビュー。2017年にRALLYE LABELに移籍し、3月にタワーレコード限定シングル「Mobile」を発表した。同年は「FUJI ROKC FESTIVAL」、「SWEET LOVE SHOWER」、「RUSH BALL」などさまざまな音楽フェスに出演したほか、6月にはアルバム「Application」をリリースし、初めてのワンマンライブを東京・TSUTAYA O-nestにて実施。11月にはツアーファイナルとして、東京・WWWにてワンマンライブを行い、チケットをソールドアウトさせるほどの盛況っぷりを見せた。2018年2月にはCD「Message」をリリースし、6月にアルバム「Digital Analog Translation System」でSME Recordsからメジャーデビュー。