この4人ならもっと行ける、武道館も見える
──レーベル移籍をしてからはライブの本数も増え、活躍の場が広がっていきましたね。
早川 去年は結束力が増した1年だったと思います。ライブの本数が増えたことで、誰か1人がダメになりそうなときはほかの3人ががんばるみたいな。そういうチームっぽい感じが自然とできるようになってきて。
伊原 ライブスケジュールの組み方も自分たちにとってよかったよね。なんと言うか、すべてのライブに意味があったと言うか。だからライブの内容をどんどんアップデートすることができて、それに伴ってファンも増えて。
──11月に行った東京・WWWでのワンマンライブではMONJOEさんが「日本武道館のステージに立ちたい」と発言していました(参照:DATS、満員のWWWワンマンで新たな目標掲げる「武道館のステージに立ちたい」)。以前のDATSはそういう大きな目標を口にするイメージがなかったので驚きました。
MONJOE もっとトガッてると思っていたんですか?
──そうです。いつ頃からそんな意識が芽生えたんですか?
MONJOE 具体的に武道館に立ちたいと思ったのは「Mobile」を出して、いろいろライブをやって、TSUTAYA O-nestでのワンマンがソールドアウトしたくらいですかね。武道館ワンマンってロックバンドの夢だと思うんですよ。初めてのワンマンを成功させたときに、さらにその先もこの4人で見てみたい。この4人で、そこにたどり着くまでのストーリーを歩みたいと強く思うようになったんです。
大井 理由の1つにバンドメンバーの結束があると思います。「武道館でライブをやりたい」なんて、自分たちがやっていることに自信がないと言えないことだと思うので。
伊原 結局そこなんだよね。「先を見たい」「もっと行ける」と思える自信が初ワンマンで付いたのは、自分たちが大きくなる姿、ビジョンを描くことができたから。それができなかったら口には出せなかったと思う。
──DATSはメンバーが安定しない時期もあったので、MONJOEさんに「この3人となら武道館まで行ける」という自信が付いたのはすごく頼もしいことのような気がします。
MONJOE 僕らの関係は学校でできた親友みたいな感覚なんですよ。音楽を通して得た友情。本当にそれだけなんですけど、信じられるなと思えたんですよね。
新しいものを取り入れて面白いものを
──メジャーデビューが決まり、今回リリースされる「Digital Analog Translation System」には、これまでの作品とは違って日本語の歌詞が多く採用されています。
MONJOE 僕はアメリカで生まれて、日本で育ったんですけど、自分が日本語を歌ってもうまくいかないというコンプレックスを克服したくて今回日本語の歌詞に挑戦しました。「英語で歌って海外っぽいサウンドで、なんとなくオシャレでイケてる」みたいな枠に収まりたくなかったんです。日本語の歌詞は「その枠に留まるつもりはないぞ」っていう自分たちのステイトメントです。
大井 インディーズ時代は英語の歌詞で、カッコいい洋楽を参照した音楽をやっていたのに、メジャーデビューしたら日本語の歌詞を歌って「さあ売れていこう!」みたいなケースもあると思うんです。僕らはタイミング的にやってることは同じなんですけど、そこに至ったプロセスが違うんですよね。僕らは洋楽と邦楽の架け橋になりたいと思っていて、アルバムタイトルでも「デジタルとアナログのトランスレーションをするシステムです」って言い切っているのは、洋楽とか邦楽とかそういう区分じゃないんだよってことを訴えたいから。単純に英語以外の言語も使うようになったというだけなんですよ。
MONJOE この1枚を1つの表現物として受け取ってくれればそれでいいんです。本当にそれぐらいのテンション。先行配信で聴いてくれている人も、ナチュラルに受け入れてくれたようでよかったです。まあ「DATSは日本語を取り入れたから聴くのをやめよう」って人がいるのならそれはしょうがない(笑)。
伊原 それこそMONJOEが言っていた実験の1つなんだよね。
MONJOE そう。僕のアウトプットからすると、日本語の歌詞にトライできるのはDATSだけ。
伊原 今作はギターの音をたくさん取り入れたんですけど、それは去年のライブでシンセのパートを早川が弾いたら好評だったからなんです。新しいものをどんどん取り込んで、面白いものを作っていきたいんですよね。
大井 DATSはそのときどきにいいと思うものを取り入れた作品を出して、代謝して進んでいくバンドなので。
この4人であることがDATSの一番の魅力
──先ほどの話では「シティポップが好きな若者というパイが少ない」とお話していましたが、今作はロックバンドが好きな層も、クラブミュージックが好きな層もどちらも好きになれそうな作品ですよね。
大井 ロキノン系リスナー、クラブミュージックリスナー、洋楽リスナー、邦楽リスナーみたいな枠組みを決めたのはリスナーじゃなくて、そこに対して売っていこうとする人たち……つまりは音楽業界の人たちが勝手に振り分けたものじゃないですか。だからそれに僕らが囚われていちゃダメなんです。このアルバムで僕らのスタンスが確立できたと思っていて。「Digital Analog Translation System」というタイトルの通り、DATSの4人がシステムの一部として稼働して、音楽やいろんな物を作り出していますよということなんです。だからDATSは作品ごとに異なる魅力はありつつも、この4人自身……つまりはこのシステムこそがDATSの一番の魅力ですよと伝えたいんです。
MONJOE 僕らはパイが少ないものをどうやったら増やせるかに興味があって。少ないものを増やすためにメジャーデビューしたと僕は思ってますし。DATSとはどういう存在なのかを追求していくための第1フェーズの段階でメジャーデビューのチャンスを得たのであれば、それを僕らはきちんと追求すべきだと思ったんです。
伊原 そういうアイデアの1つがリミックス盤を付けたことなんですよね。ロック好きな人がリミックス盤に興味を持ってくれたり、逆に「アルバムにリミックス盤を付けるいかついバンドがいるぞ」ってクラブミュージック好きな人が手にとって、オリジナルを聴いて「こういう音楽もあるんだ」って知ってくれたらうれしいです。まあ、リリースしたあとはお任せしますと言うか、勝手に広まっていったらいいなと思っています。
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この4人でしか起こせない何かを作るのがアーティストとしての使命
- DATS「Digital Analog Translation System」
- 2018年6月20日発売 / SME Records
-
[2CD]
3456円 / SECL-2296~7
- DISC 1
-
- Memory
- 404
- Dice
- Interlude
- Cool Wind
- JAM
- Alexa
- TOKYO
- Pin
- Heart
- DISC 2
-
- Memory(MIRU SHINODA Rework)
- 404(Licaxxx Remix)
- Dice(Dos Dub Remix)
- Interlude feat. Pecori & SunBalkan(踊Foot Works)
- Cool Wind(Yoshinori Sunahara Remix)
- JAM(starRo Remix)
- Alexa(GARDEN CITY MOVEMENT Remix)
- TOKYO(Kai Takahashi Remix)
- Pin(WONK Pin-Funk Remix)
- Heart(Hidefumi Kenmochi Remix
- DATS(ダッツ)
- MONJOE(Vo, Syn)、早川知輝(G)、伊原卓哉(B)、大井一彌(Dr)からなる4人組バンド。2013年に結成された。2015年に「DIVE」でUK.PROJECTよりデビュー。2017年にRALLYE LABELに移籍し、3月にタワーレコード限定シングル「Mobile」を発表した。同年は「FUJI ROKC FESTIVAL」、「SWEET LOVE SHOWER」、「RUSH BALL」などさまざまな音楽フェスに出演したほか、6月にはアルバム「Application」をリリースし、初めてのワンマンライブを東京・TSUTAYA O-nestにて実施。11月にはツアーファイナルとして、東京・WWWにてワンマンライブを行い、チケットをソールドアウトさせるほどの盛況っぷりを見せた。2018年2月にはCD「Message」をリリースし、6月にアルバム「Digital Analog Translation System」でSME Recordsからメジャーデビュー。