「THANK YOU BLUE」は青との訣別
──DAOKOさんがいろんな人とのコラボで得たものって、どういうものだと思いますか?
コラボレーションする、誰かと一緒に作品を作るっていうのは、インプットだと思います。本を読むとか映画を観るとか、そういったものと同じように栄養だなと思うので。創作物に触れることで自分の感性が刺激されて、それが血となり肉となっていくという。それに、コラボするってことはその人のロジックを見れちゃうと言うか、一緒に「こういうふうに作ってるんだ」という過程を体感できるので。そういう意味ではいろんな栄養を得てると思います。
──そうやって完成したアルバムに「THANK YOU BLUE」というタイトルが付いているわけですが、この言葉はどういう象徴なんでしょうか?
素直な「ありがとう」という意味と、今後どうしていくかっていうことを考えて、1つ完結させたい気持ちで作ったアルバムなんです。いろんなコラボを経て、今、自分で曲を作りたい、自分自身の100%で構成された曲ってどんな曲なんだろうっていう気持ちになっているんです。「Cinderella step」も初めて自分主導で作詞作曲して、編曲で素晴らしくなったところもあるんですけど、自分もすごく自分の表現に感動できたんで。今まではトラックの形にできなかったんですけど、自分の頭の中で鳴っている音を自分自身で表現したいんです。そういう、自分が美しいと思うものしか入ってない曲を作りたいという気持ちがあって。だから、「ありがとう」と「さようなら」の2つですね。終わったわけじゃないですけど、青との訣別と言うか。
──メジャーデビュー以降、青をキーカラーにしていましたよね。そのタームを終わらせて次のステップに行きたいという思いもある。
何色にも、青にも縛られない、自分の色を表現したい、みたいな意味ですね。そういう意味で、ジャケットも何物にもとらわれないというイメージで篠山紀信さんに撮ってもらったんです。もともと私が書いた絵がもとになっていて、それがたまたま裸に見える絵だったんですけど。着飾らないというか、もっと自然に表現したいみたいな気持ちですね。
──コラボでいろいろなものを吸収したからこそ、自分自身の純度が高いものも表現したいという。
そうですね。本当にそんな感じで、今後もいろんな人とコラボしていこうと思うんですけど、自分1人で表現していくこともすごく面白いんじゃないかなって思っています。勉強しないといけないんですけど(笑)。でも、今は1人だけで100%作れないということがコンプレックスでもあるので。そこを解消していったら、音楽的にも誰もやってないことができる自信があると言うか。面白い音楽を作れると思うんです。
メジャーでもアンダーグラウンドでもなくありたい
──ちなみに、初回限定盤には「チャームポイント」というDVDが付属します。これはもう1つミニアルバムが入っているかのような充実した中身ですが、この7曲はどういう位置付けなんでしょうか。
ライブでやってる今までの曲を、リアレンジメインで生まれ変わらせたものですね。映像監督の佐伯雄一郎さんっていう、デビューから映像周りを全部やってくれてる方が総監督で。トラックメーカーの選出はこだわってイメージしました。「BOY」はstarRoさんだし、「ぼく」はSTUTSさん、「Fog」はGOTH-TRADさんというダブステップの世界では伝説的な人で。個人的にもすごく好きな人だし、かなり挑戦的でカッコよくなったと思います。
──「歌舞伎町の女王」のカバーもすごくよかったです。
「歌舞伎町の女王」は江島(啓一)さんにお願いしたんですけど、初めて江島さんと一緒にやった曲なんです。大好きな椎名林檎さんの曲なんで、改めて真摯に向き合いました。
──この先に関してはどういうイメージがありますか? お話を聞いていると、DAOKOさんって、音楽を含めたさまざまなカルチャーのハブと言うか、いろんな人が結び付く結び目のようなものになっている感じがあるんですが、それをより能動的にやっていくような目論見もあるんじゃないかと思います。
面白いことをやりたいっていう気持ちですね。メジャーになりすぎても、アンダーグラウンドになりすぎても自分を見失うと言うか、どっちかに寄りすぎてしまうことはつまらないなと思うので、どちらでもなくありたいなという感じはあります。
──大きな話で言うと、ジャスティン・ビーバーとビョークの両方でありたい、と言うか(笑)。
そうですね(笑)。
──つまりポップスターとしていろんなヒット曲に参加しつつ、先鋭的なクリエイターをフックアップするような存在になりたいという。そういう目標。
そうですね。なかなかいないですもんね。そういう気持ちはすごいあります。世の中に知られてなくてもすごく感動するものっていっぱいあると思うので、積極的にそういう人たちと一緒にやりたいなと思ってますね。普段ポップミュージックを聴いてる人が自分を通してアンダーグラウンドな音楽に出会ってしまうのはすごくうれしいし。そういうことをしていきたいです。何がポップかの基準はわかりにくいけど、全然知られてないものをポップミュージックにしちゃいたいと思います。
- DAOKO「THANK YOU BLUE」
- 2017年12月20日発売 / TOY'S FACTORY
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初回限定盤 [CD+DVD]
3888円 / TFCC-86624 -
通常盤 [CD]
3024円 / TFCC-86625
- CD収録曲
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- 打上花火(DAOKO×米津玄師)
- ステップアップLOVE(DAOKO×岡村靖幸)
- Juicy
- さみしいかみさま
- ShibuyaK
- BANG!
- ダイスキ with TeddyLoid
- 拝啓グッバイさようなら
- 同じ夜
- GRY
- もしも僕らがGAMEの主役で
- ゆめみてたのあたし
- Cinderella step
- ワンルーム・シーサイド・ステップ
- 初回限定盤DVD収録内容
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チャームポイント
- チャームポイント
- 歌舞伎町の女王
- BOY(Re-Arrange)
- ぼく(Re-Arrange)
- okay!
- さみしいかみさま(Re-Arrange)
- Fog(Re-Arrange)
- Cygames presents DAOKO TOUR 2017-2018 "THANK YOU BLUE"
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2018年1月11日(木)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
※終了分は割愛
- DAOKO(ダヲコ)
- 1997年生まれ、東京出身の女性ラップシンガー。ニコニコ動画のニコラップに投稿した楽曲で注目を集め、2012年に1stアルバム「HYPER GIRL-向こう側の女の子-」を発表。ポエトリーリーディング、美しいコーラスワーク、ラップを絶妙なバランスで織り交ぜたドリーミーな世界観で話題を呼ぶ。2015年3月にはTOY'S FACTORYよりアルバム「DAOKO」にて高校生にしてメジャーデビュー。2016年4月にTeddyLoidとのタッグで学校法人・専門学校HAL(東京・大阪・名古屋)の2016年度テレビCMソングを担当。同曲も収めたトリプルA面シングル「もしも僕らがGAMEの主役で / ダイスキ with TeddyLoid / BANG!」を9月にリリースした。2017年8月には映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の主題歌を含むニューシングル「打上花火」を発売。10月に岡村靖幸とのコラボレーションによるシングル「ステップアップLOVE」を発表し、11月に配信限定リリースされたBeckの楽曲「Up All Night × DAOKO」にも参加した。12月に約2年9カ月ぶりのフルアルバム「THANK YOU BLUE」をリリース。1月11日まで全国ツアー「Cygames presents DAOKO TOUR 2017-2018 "THANK YOU BLUE"」を開催している。