男女で歌っているから表現できる曲(DAOKO)
──この曲、歌は米津さんとDAOKOさんの掛け合いもあるし、一緒に歌うところもある。デュエットになっているんですよね。これはどういうアイデアで?
米津 最初はそうじゃなかったんです。なんでそうなったんだっけ?
DAOKO これも川村さんの企みですよ。
米津 そうだ。最初は俺が入る必要はないと思ってたんです。DAOKOちゃんはいい声をしてるし、それで3、4分全然持たせられると思ったし、そもそもそういう曲を作りたいがためにやり始めたんで。映画の最後に俺の声が流れる必要はあるのか懐疑的だったんですけれど、やっていくうちに、だんだんそういうノリもありなのかなと思うようになってきて。それを生かすためにはどうしたらいいかを考え始めて。
──DAOKOさんの感触はどうでしたか?
DAOKO 私もラッパーとして活動してるのでフィーチャリングという形で男性とやることが多かったですけど、ここまでがっつり掛け合いをしたことはなかったので、自分としても新しい挑戦でした。でも、最終的には映画の内容にすごく合うものになったと思います。例えば歌詞もなずなさんと典道くんの関係性を思わせるようになっていたり。男女で歌っているから表現できるところに達したなっていう。
──そうなんですよね。DAOKOさんが歌うパートと米津さんが歌うパートって、同じところを見てるようで見てなかったりする。同じようにはかなさや切なさみたいなものを抱えてるんだけれども、すれ違ってるんですよね。DAOKOさんが歌う一人称の曲だったらこうはなっていないと思うんです。でも米津さんの声が入って、一緒に歌っているけれど別のものを見ているという演出が加わることによって、より映画の主題に寄り添った曲になったという印象があります。
米津 やっぱり声も全然違うから最初は不安だったんですけど、実際やってみたらうまく住み分けができてて。思った以上にきっちりといい具合にハマっていて。結果としていい形に落ち着いた。
DAOKO 歌詞の内容がより心に響きますよね。
本当に米津さんにしか書けない歌詞(DAOKO)
──「打上花火」の歌詞の中で、特に「ここがいい」と思っているところはありますか?
DAOKO メロディと合わせてのフレーズだったら、私は掛け合いのところが本当に好きで。でも、どのフレーズもいいんですよ。全体的にすごく絵が浮かぶ歌詞になっているので、歌っててもイメージしやすいし、かなり言葉に助けられたところはありますね。
米津 サビはよくできたなと思いますけどね。技術的な話ですけど。“パッ”っていう破裂音から始まって、そこがパッと開く感じになっていて。
DAOKO 歌っていて、すごい気持ちいい曲なんですよね。メロディと言葉が相乗効果を生み出していて、メロディありきの言葉だと思います。
──サビや掛け合いの部分の「パッと花火が」というフレーズも、あのリズムとメロディがあるから言葉の響きが生きている。
DAOKO そうですね。本当に米津さんにしか書けない歌詞だと思いました。
「Forever Friends」は半年間歌い込んだ(DAOKO)
──川村さんが携わった映画って、どれも音楽に説得力のある作品が多いですよね。主題歌の果たす役割もすごく意識されている。
米津 確かに川村さんのほかのプロデュース作品を観てもそう思います。音楽が重要な立ち位置になっている。だからこそ、今回も大変だったんですけど。
DAOKO 川村さん、やっぱり音楽が好きなんだと思います。いろんなものを掘っているし、ちゃんとチェックしてるし、毎年「FUJI ROCK FESTIVAL」に行ったりしていて。かなり音楽好きな方なんだろうなっていう印象はありますね。
──シングルのカップリングには原作ドラマの主題歌「Forever Friends」のカバーが収録されています。DAOKOさんはこの曲を歌ってみての印象はいかがでしたか。
DAOKO 原作でもこの曲が流れるシーンが一番印象に残っています。でも、私にとってはカバーも初めてだし、英語の歌詞も初めてで、新しいことだらけで大変でした。半年くらいかなり歌い込んで。最初はもっとネイティブに近い発音にしてたんです。でも、あえて最終的には日本人が歌う英語みたいにして、自分の声や自分の要素がちゃんと届くようにしました。それは何回も歌うことによって自分で曲を消化できたからなのかなと思います。そういうふうに自分のものにして歌うようになるまでけっこう時間がかかったので、思い入れも深いですね。
──今回の映画でも「Forever Friends」が流れる場面、最後に「打上花火」が流れる場面は印象的でしたね。
DAOKO そうですね。すごくいい流れで、本当にぐっときました。最後の主題歌がいい締めになって、それで作品の世界を飲み込む役割を果たしているかな、と。
──お二人は映画の本編はご覧になりましたか?(取材は7月中旬に実施)
DAOKO まだ完成前でしたが、ラッシュを試写で観ました。
米津 俺はまだ観れていないです。曲を作る段階で見れたのが絵コンテとイメージイラストくらいで、それだけですね。
──DAOKOさんは映画を観てどんな感想を持ちましたか?
DAOKO もともとの原作に思ったよりも忠実だなと思ったけど、それでもやっぱりスタッフ陣のそれぞれの色が混ざりあっていて。この布陣だからできるストーリーや演出があって、けっこう攻めてるなと思いました。そこが面白かったですね。あとは電車の中でいきなりおとぎの国に行っちゃうようなシーンがあるんですけど、確かに十代とかってどこかメルヘンな、妄想力で自分の頭の世界に行っちゃう感じっていうのがあって。突拍子もないんだけど、それも含めて十代の夏という感じでした。
米津 絵コンテの段階でも原作と違う部分、ファンタジーみたいな感じがあって、すごく攻めてるなと思ったし、これができあがったらどうなるのかなってワクワクしていたので。早く観たいなという感じですね。
※記事初出時より、一部写真を差し替えました。
- DAOKO「打上花火」
- 2017年8月16日発売 / TOY'S FACTORY
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初回限定盤 [CD+DVD]
1620円 / TFCC-89631 - ©2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会
- CD収録曲
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- 打上花火 / DAOKO×米津玄師
- Forever Friends / DAOKO
- Cinderella step / DAOKO ※通常盤のみ収録
- 初回限定盤DVD収録内容
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- DAOKO 2016 “青色主義” TOUR at 赤坂BLITZ 2016.09.22 ライブ映像
- 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
- 2017年8月18日(金) 全国東宝系ロードショー
- ストーリー
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夏休み、とある海辺の町。 クラスのアイドル的存在・なずなに花火大会に誘われる典道。 なずなは母親の再婚のために2学期から転校しなければならなかった。
「かけおち、しよ」 なずなは典道を誘い、町から逃げ出そうとするのだが、母親に連れ戻されてしまう。それを見ているだけで助けられなかった典道。
「もしも、あのとき俺が……」
なずなを救えなかった典道は、もどかしさからなずなが海で拾った不思議な玉を投げつける。 すると、いつのまにか、連れ戻される前まで時間が巻き戻されていた……。 何度も繰り返される一日の果てに、なずなと典道がたどり着く運命は?
- スタッフ
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原作:岩井俊二
脚本:大根仁
総監督:新房昭之
監督:武内宣之
キャラクターデザイン:渡辺明夫
音楽:神前暁
主題歌:「打上花火」DAOKO×米津玄師(TOY’S FACTORY)
アニメーション制作:シャフト
配給:東宝 - キャスト
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広瀬すず / 菅田将暉 / 宮野真守 / 浅沼晋太郎 / 豊永利行 / 梶裕貴 / 三木眞一郎 / 花澤香菜 / 櫻井孝宏 / 根谷美智子 / 飛田展男 / 宮本充 / 立木文彦 / 松たか子
- DAOKO(ダヲコ)
- 1997年生まれ、東京出身の女性ラップシンガー。ニコニコ動画のニコラップに投稿した楽曲で注目を集め、2012年に1stアルバム「HYPER GIRL-向こう側の女の子-」を発表。ポエトリーリーディング、美しいコーラスワーク、ラップを絶妙なバランスで織り交ぜたドリーミーな世界観で話題を呼ぶ。2015年3月にはTOY'S FACTORYよりアルバム「DAOKO」にて高校生にしてメジャーデビュー。それまで顔を隠して活動していたが、10月にシングル「ShibuyaK / さみしいかみさま」発売のタイミングで顔を公開した。2016年4月にTeddyLoidとのタッグで学校法人・専門学校HAL(東京・大阪・名古屋)の2016年度テレビCMソングを担当。同曲も収めたトリプルA面シングル「もしも僕らがGAMEの主役で / ダイスキ with TeddyLoid / BANG!」を9月にリリースした。2017年2月より初の対バンツアー「“青色時代” TOUR」を開催。8月に映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」の主題歌を含むニューシングル「打上花火」をリリースする。
- 米津玄師(ヨネヅケンシ)
- 男性シンガーソングライター。2009年より「ハチ」という名義でニコニコ動画にVocaloid楽曲を投稿し、総合2位の「マトリョシカ」をはじめ数々のヒット曲を連作。2012年5月に本名の米津玄師として初のアルバム「diorama」を発表した。2013年5月、シングル「サンタマリア」でメジャーデビュー。2014年4月に米津玄師名義としては2枚目のアルバム「YANKEE」を発表し、6月には初ライブのワンマン公演を東京・UNITで開催した。2015年8月には「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2015」で野外フェス初出演を果たす。2016年にはルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」の公式イメージソングとして、新曲「ナンバーナイン」を書き下ろし、同年9月に両A面シングルとして「LOSER / ナンバーナイン」をリリース。10月には中田ヤスタカとタッグを組み、映画「何者」の主題歌「NANIMONO (feat. 米津玄師)」を発表。2017年6月にはテレビアニメ「僕のヒーローアカデミア」オープニングテーマを表題曲とする「ピースサイン」を発表した。DAOKOのニューシングル「打上花火」で表題曲の作詞作曲とプロデュースを手がけたほか、初音ミク「マジカルミライ2017」テーマソングとしてハチ名義の新曲「砂の惑星」を発表。11月からは全国各地を回るワンマンツアー「米津玄師 2017 TOUR / Fogbound」を開催する。