音楽ナタリー Power Push - DAOKO

覚醒を経て見つけた、自分なりのポップス

小悪魔的な志向を持った自分で書いてみた「BANG!」

──3曲目の「BANG!」もORESAMAの小島さんとの共作で、ずいぶんかわいいポップスに仕上がりましたが、どんなモノを目指して作ったんですか?

冒頭に話した「ライブで一体感を味わえる曲」っていうお題が前提にあって。クラップをみんなでして、踊り出したくなるような曲を作ってみたいなと思ったときに最初に取りかかった曲なんです。

──歌詞は、これまでのDAOKOになかったタイプのラブソングですね。

恋愛って「うれし、たのし、大好き」っていう陽な部分だけじゃなくて、怖い部分とか陰の部分も同じくらいあると思っていて、そっちにフォーカスしたラブソングを作ってみたんです。どんな歌詞を乗せようかと考えたときに、“クラップソング”だからといって「明るく元気で楽しい!」みたいな歌詞はもともと自分には書けないし(笑)、そういう歌詞を乗せたとしてもあまり世の中に響かないだろうなと思って。順接的より逆説的なほうがパンクで面白いなと思ってるから、そういう曲調に対して生死の匂いがする、相反する要素を入れることによってDAOKOらしさが出るかなと。そう考えて取り組んだ最初の一投なんです。

──男性に対していたずらっぽくモーションをかけて、駆け引きを楽しんでる小悪魔っぽい女の子を描いていますが、そういう部分がDAOKOさんにもあるということですか?

そうですね。100%そういうタイプではないですけど、女性って1人の中にいろんな女性がいると思っていて。特に私はそうだと思います。小悪魔キャラの自分もいれば、素直な恋愛してる自分がいたり、もっと悲観的になってる自分がいたり、いろんな自分がいて。その中でも小悪魔的な志向を持った自分で書いてみたっていう感じです。

──歌詞には、DAOKOさんがもともと持ってるちょっとエロチックな要素も出てますよね。特に2ヴァース目には「ホテル」っていう直球のワードが出てくるし。

そうですね。“ホテル”と“火照る”ですからね(笑)。

──その韻はちょっとオヤジギャグ的だからあえて触れないでおいたのに(笑)。

あはは、すいません、自分から突っ込んでいっちゃった(笑)。けど、エロティックというか、生々しさですよね。清潔そうなだけっていうのはあんまり人間らしくないと思うし、ちゃんと情景が浮かぶとか、生々しさ、肌の感じ、匂いまでもが伝わればいいなと。

──あと、この曲のポイントは「ズキュン」ですよね。あのアニメ声には、「どうした、DAOKO!?」と思いました(笑)。

あはは!(笑)

──あれは小島さんとやりとりしている中で入れることになったんですか?

「ズキュン」は自分から入れたんです。サビのメロは決まってて、どんなワードを入れていこうかいろんなパターンを考えていて、一番しっくり来たのが「BANG! BANG! BANG!」だったんです。それを歌いながらいろいろ遊びで入れていったら「ズキュン」が意外と一番よかったっていう。

──レコーディングでは照れずに「ズキュン」を歌えました?

レコーディングは私、鶴の恩返し状態なんで。「中はどうか見ないでください」っていう(笑)。ブースの中の様子は誰にも見せないんです。だから、DAOKOモードじゃないときに「やれ」って言われるとちょっと戸惑うかも(笑)。でも「ズキュン」があることによって、そのあとの「BANG! BANG! BANG!」が引き立つというか、その2つは相乗効果があると思うので必要な言葉だったと思ってます。

ボーカリストとしての成長

──4曲目の「FASHION」は、今までの作風から一番遠いところにある曲調ですよね。今回のシングルで一番新味かも。

DAOKO

そうですね。これは1990年代のアシッドジャズをストリングス、ホーン、そしてバンド構成で生録音しました。すべて生録りのトラックは初めてです。新しい試みでしたね。

──あと今回のシングルは全体的にボーカルの成長がすごく感じられたんです。発声がしっかりしてきたなって。

ボイトレに通い始めたんですよ。ウイスパーな声質を生かしながら、音量を大きくしたり、パワーを付けていくためのトレーニングをしていて、それがレコーディングにも生かされたと思います。

──低い音程がしっかり出るようになったと思うし、それがもっとも感じられるのが「FASHION」でした。

「FASHION」はアシッドジャズの雰囲気に合わせてアダルティな感じでやってみたいなっていう挑戦がありました。フロウもレコーディングしているときにサウンドプロデューサーの片寄明人さんに「DAOKOはいろんな人の声が出るね、DAOKOの声にはいろんな人物像が見えるね」って言ってもらえて「なるほど」と思って。それまであまり自覚したことがなかったんですけど、確かに「ズキュン」みたいな声もあるし、幼い声もあるし、ウイスパーもあるし。今回のシングルではそういうところをいろいろ試せたし、意識して使い分けできるようになれたのも大きな変化です。

ラップシーンが盛んな韓国へ

──今回のツアーでは韓国公演2DAYSが含まれています。なぜ韓国に行くことにしたんですか?

韓国にDAOKOの音楽をすごく好きだと言ってくれるイベンターさんがいらっしゃって。初の海外ライブだから慎重に考えてたんですけど、打ち合わせをしたいと言ったら翌日韓国から来日しちゃう、みたいな熱意のある方だったし、私も海外でやってみたい気持ちがあったので、初海外、韓国でライブを行うことを決意しました。

──プライベートで韓国に行ったことはあるんですか?

ないです。そもそも海外自体、あんまり行ったことがないんです。でも最近、海外に行きたい欲は高まってます。国が違えば音楽も違うし、いろんな国の音楽を生で体験してみたい。そうすれば新しいヒントをもらえたり、何か吸収できることがあると思うので。今回の韓国公演がそのキッカケになればいいなと思ってます。

──韓国では何が楽しみですか?

なんだろう……本当、未知の世界すぎて。違う星に行くくらいの気持ちですね(笑)。

──日本から一番近い外国ですけどね。

DAOKO

でも文化が全然違うじゃないですか。韓国のアイドルソングを聴いてても、日本のアイドルとは全然違うし。あと、韓国はラップシーンに活気があって「フリースタイルダンジョン」レベルじゃないくらい盛り上がってるらしいんです。しかも今回ライブをやる「ホンデ(弘大)」っていう街は、ヒップホップが一番盛んらしくて楽しみです。クラブが多い街らしいので、どんな音楽がクラブで鳴ってるのかも気になるし。あとは、やっぱりごはんが楽しみですね(笑)。

──ちなみに、どんなものを食べてみたいですか?

辛いものが好きだから、日本でも韓国料理をよく食べに行くんです。だから本場でおいしいお店を教えてもらって食べに行きたいな。昨日、韓国語ができる友達に「おなか空いた」っていう韓国語を教えてもらってメモしたところなので、対策もばっちりです(笑)。

DAOKO Triple A Side 2nd Single「もしも僕らがGAMEの主役で / ダイスキ with TeddyLoid / BANG!」 2016年9月14日発売 / TOY'S FACTORY
初回限定盤A [CD+DVD] / 2160円 / TFCC-89601
初回限定盤B [CD+DVD] / 1728円 / TFCC-89602
通常盤 [CD] 1296円 / TFCC-89603
CD収録曲
  1. もしも僕らがGAMEの主役で
  2. ダイスキ with TeddyLoid
  3. BANG!
  4. FASHION
  5. もしも僕らがGAMEの主役で(Instrumental)
  6. ダイスキ with TeddyLoid(Instrumental)
  7. BANG!(Instrumental)
  8. FASHION(Instrumental)
DVD(初回限定盤A)収録内容

DAOKO THE FIRST TOUR 2016 at SHIBUYA O-EAST 2016.01.15 ライブ映像

  • INTRO / 高い壁には幾千のドア / ミュージック / かけてあげる / さみしいかみさま / ShibuyaK / ゆめみてたのあたし / OUTRO
DVD(初回限定盤B)収録内容
  • BANG! -MUSIC VIDEO-
  • FASHION -Reebok CLASSIC Furylite WEB Movie-
  • JK -DAOKO THE STUDIO LIVE From Aobadai Studio-
  • FASHION -DAOKO THE STUDIO LIVE From Aobadai Studio-
DAOKO(ダヲコ)

DAOKO

1997年生まれ、東京出身の女性ラップシンガー。ニコニコ動画のニコラップに投稿した楽曲で注目を集め、2012年に1stアルバム「HYPER GIRL-向こう側の女の子-」を発表。ポエトリーリーディング、美しいコーラスワーク、ラップを絶妙なバランスで織り交ぜたドリーミーな世界観で話題を呼ぶ。2015年3月にはTOY'S FACTORYよりアルバム「DAOKO」にてメジャデビュー。それまで顔を隠して活動していたが、10月にシングル「ShibuyaK / さみしいかみさま」発売のタイミングで顔を公開した。2016年4月にTeddyLoidとのタッグで学校法人・専門学校HALのCMソングを担当。同曲も収めたトリプルA面シングル「もしも僕らがGAMEの主役で / ダイスキ with TeddyLoid / BANG!」を9月にリリースする。