音楽ナタリー PowerPush - DAOKO×☆Taku Takahashi(m-flo)
若い才能をフックアップしたメジャーシーンの先輩と対談
自分を表現してるだけ
──曲を作っていくときに、DAOKOさんはその曲のゴールが見えてたりするんですか?
DAOKO 全然見えてないです。普段から私は未来の想像ができないタイプで、この曲がどうなるかとか本当にもわーんとしてる感じ。でも、とりあえず出てくるものはあるからそれを作ってみて、それが世の中に出たら、あとは聴いた人が解釈してくれればいいっていう気持ちが大きいんです。自分に伝えたいことがあって書いたとしても、聴いた人は違うふうに感じるかもしれないじゃないですか。でもそれが面白いし、それでいいと思ってるんです。これを伝えたいから曲をこうしておこうっていう作業もそれほどしないし、本当に自分を表現してるだけっていう感覚が強いですね。
☆Taku 僕はゴールが見えてるんだけど、そこにたどり着いたことがなくて(笑)。必ず思ってた方向と違うものになって、これはこれでいいんじゃんってなるタイプ。ロジカルに考えようとするんだけど、そんな器用じゃないんだよね(笑)。器用だったら、こうこう、こういうカタチにしてこういうふうに作るっていうのができるはずだから。
──イメージしたプロセスを機械的にたどっていけばいいわけですから。
☆Taku そう。だけど、いい曲ができるときって事故が起きたときで。予想してないことが起こっちゃったとか、そういうときに生まれることが多いんだよね。そのために事故をわざと起こそうとしたりもするんだけど(笑)。普段、右手でボール投げてるところをあえて左で投げてみよう、みたいな。
2人のJ-POP観
──先ほどの質問に戻すと、☆TakuさんはJ-POPを作ってるという認識が自身にありますか?
☆Taku 正直、ここ3枚のm-floのアルバム(「FUTURE IS WOW」「NEVEN」「SQUARE ONE」)は、自分の中の「キャッチー」とか「ポップに聞こえる」っていうもの以外は、まったくと言っていいくらいJ-POPシーンというのを無視して作ってました。それによっていい思いもすれば、痛い目にも遭ったし(笑)。というか、そもそも僕はJ-POPっていう言葉が嫌いなんです。1回Twitterで「Fuck J-POP」って書いて海外ですごい炎上したことがあったんだけど。
──あれは2年くらい前ですかね?
☆Taku 3年くらい前かな。要は、カテゴライズされるのがすごくイヤなんですよね。自分の作品とか日本で生まれた自分の好きな作品がJ-POPになるっていうのは好きなんです。J-POP、ひいてはポップスっていうのは結果じゃないですか。こういう方法でこういうふうに作ればJ-POPになるよねっていうフォーマットはあるんだろうけど、そうじゃないやり方で新しいモノが生まれてきて、それが結果的にJ-POPになるっていうのは大歓迎なんです。だからこそDAOKOちゃんの作品を聴いてすごく刺激を受けたし、これがJ-POPになっていくのはすごくうれしいと思った。
──DAOKOさんは自分でJ-POPを作ってると思っていますか?
DAOKO どうだろう……J-POPがなんだかあんまりよくわかってないし、音楽のジャンルっていっぱいありすぎて、「メジャーなのがJ-POP」っていう感じですかね。
☆Taku 最高の答えだけどね、それが。
DAOKO でも逆に、全部ごちゃ混ぜだと聴く人がどれを聴いていいかわからないから、J-POPって目印みたいな感じじゃないかなって。TSUTAYAに行って日本の音楽が聴きたかったら「J-POP」のところに行けばそれが聴けるっていう。そういう意味で便利かなあと思うけど、J-POPの中にもいろいろあるから、あくまでおおよその目安っていうか、聴く人側が認識しやすいモノっていう。そもそも私のCDはJ-RAPにも置かれてるし、J-POPにも置いてもらってるから、なんでもいいんじゃないかなって思うし。
「I Love J-POP」「DAOKO」「#UareMissingALot」
☆Taku これは本当タイムリーな話題なんだけど、2週間くらい前かな。今度はTwitterに「I Love J-POP」って書いたんですよ(参照:Taku Takahashi(@takudj) | Twitter)。「どうしたの?」ってまた外人から突っ込まれたけど(笑)。
──それはどんな意図でツイートしたんですか?
☆Taku そのあとに「DAOKO」「tofubeats」「Sugar's Campaign」と書いて、ハッシュタグで「#UareMissingALot」って書いたの。「お前ら見逃してるよ」って。
──☆TakuさんはDAOKOさんをJ-POPの希望の存在だと考えてる?
☆Taku 僕には2つの自分がいて、それはblock.fmというインターネットラジオをやってる自分と、アーティストの自分なんです。block.fmの自分からしてみると希望っていう言葉はぴったりだと思う。リスナーたちもマンネリ化してきた音楽表現の中から刺激的なものが出てきたって歓迎すると思う。で、アーティストの自分としては、刺激を与えてくれる人ですね。誰かの曲に敗北感を抱くと自分の音楽がもっとよくなるから、刺激を与えてくれる人ってやっぱり大事なんですよ。
──敗北感っていうのはその曲のよさに打ちのめされる、みたいな。
☆Taku そう。「うわー、すっげえいい曲だあ」って思わされたり、完全にその曲にハマったり。キャリアを積んでいくと年下の人がだんだん増えてきて、中にはいい作品を作ってる人がいるんだけど、自分の知識も増えてきているから「これは〇〇風ね」とか、そういう聴き方をしちゃう自分がいるんですよ。
──ついつい分析しちゃう。
☆Taku そう。でも、分析しちゃうのは、自分が守りに入っちゃってるからだと思ったんです。自分を肯定するためにやってることだと感じたの。
──深イイですね、その話。
☆Taku tofubeatsの曲を聴いて「アレのオマージュだね」とか言っちゃってる自分がいる。でも、僕が10代、20代のときにそういう聴き方をしてたか?っていうとそうではないし、そういうときの刺激ってすごく大きい。だから、もっと素直に、守りの鎧を取っ払って、「カッコいい!」と思ったらとことんそれに刺激されちゃえって最近思うようになってるんです。そういう意味でDAOKOちゃんの音楽は超カッコいいし、今回のアルバムも「ヤバイな、うかうかしてられないな」って思うから、刺激を受けてます。
──そういう新星が現れると音楽作りも楽しくなってくるでしょうね。
☆Taku うん。要は、憧れって僕の中で大事なエネルギーなのかなって。自分より年下にはなかなか憧れにくかったりするけど、アーティスト=表現者っていうのは何歳であっても同じ土俵の上に立っていて、先輩後輩とかじゃないじゃんって。だから、後輩の子たちにも憧れる気持ちっていうのが今の自分にはすごく大きなエネルギーになってるかなって思う。反対にDAOKOちゃんは「若いねー」って言われるのをどう感じてるの?
DAOKO 若いですけども……って思います。
☆Taku だよね。そうなるよね。
DAOKO でも、若いからこそできる音楽というか、今の年齢にしかない感性っていうのは絶対あるから。それを作品として残すことは生きてる証になるからしたいと思っているし、別にそれは音楽じゃなくて、なんでもいいんだけど、今はこの場所にいさせてもらってるから、音楽で爪跡を残したいというか、パッと花を咲かせることができたらいいなって思います。
──最後に、これからメジャーでやっていくDAOKOさんに、メジャーで15年以上やっている先輩の☆Takuさんからアドバイスを。
☆Taku 契約書はよく読むように。
DAOKO あはは!(笑) 正しい!
☆Taku 大事だよ、日本のアーティストは読まなすぎだから。あと分配率を勉強するといいですよ。
DAOKO なるほどー。勉強します。
☆Taku 勉強して損することはないからね、何事も。
- DAOKO メジャー1stアルバム「DAOKO」2015年3月25日発売 / TOY'S FACTORY
- 初回限定盤 [CD2枚組] 2500円 / TFCC-86507 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 2000円 / TFCC-86508 / Amazon.co.jp
収録曲
- 水星
- かけてあげる
- 一番星
- ゆめうつつ
- 流星都市
- ぼく
- きみ
- 嫌
- ミュージック
- JK
- ないものねだり
- 高い壁には幾千のドア
初回限定盤 INDIES BEST盤 収録曲
- ME!ME!ME! feat. daoko_pt.1 / TeddyLoid
- BOY
- キラキラ
- Fog(new mix)
- 試験一週間前
- 脳内 DISCO
- Mind Surf feat. daoko / ★ STAR GUiTAR
- 戯言スピーカーRap.ver
- 放課後校庭にて feat. daoko / COASARU
- 夕暮れパラレリズムfeat. daoko / ESNO
- IRONY / m-flo + daoko
- そつぎょう
DAOKO(ダヲコ)
1997年生まれ、東京出身の女性ラッパー。ニコニコ動画のニコラップに投稿した楽曲で注目を集め、2012年にLOW HIGH WHO? PRODUCTIONから1stアルバム「HYPER GIRL-向こう側の女の子-」を発表。ポエトリーリーディング、美しいコーラスワーク、ラップを絶妙なバランスで織り交ぜたドリーミーな世界観で話題を呼ぶ。2015年2月にはインディーズ最後と銘打ったアルバム「Dimension」を発表し、同年3月にTOY'S FACTORYからメジャーデビューアルバム「DAOKO」をリリースした。
☆Taku Takahashi(タクタカハシ)
DJ、プロデューサー。1998年にVERBALとm-floを結成。ソロとしても国内外アーティストのプロデュースやリミックス制作を行う。「Incoming... TAKU Remix」でbeatportの音楽賞「beatport MUSIC AWARDS 2011 TOP TRACKS」を日本人として初めて獲得し、その実力を証明。2010年にはアニメ「Panty&Stocking with Garterbelt」のサウンドトラックも監修する。国内外のDJが最先端の音と情報を発信するインターネットラジオ「block.fm」を2011年に設立。2014年12月にはフジテレビ系ドラマ「信長協奏曲」の音楽を手がけ、オリジナルサウンドトラックもプロデュースした。