音楽ナタリー PowerPush - DAOKO×☆Taku Takahashi(m-flo)
若い才能をフックアップしたメジャーシーンの先輩と対談
自分の一番やりやすい環境で録った「DAOKO」
☆Taku 今回のアルバムを聴いて、いい意味でメジャーに行っても変わってないと思ったのね。何か自分の中で変化はある?
DAOKO 一応、メジャー感っていうのは意識してますね。大衆に向けてというか、もうちょっとキャッチーで、陰の部分とか毒っぽさはスパイスくらいに抑えた感じにしようって。あと、今までは宅録の音源が世に出てたけど、メジャーになってからは宅録したものがデモになって、今までの本番レコーディングが仮レコーディングになって、そこからまたレコーディングっていうふうになりました。
☆Taku 宅録っていう部分がDAOKOちゃんの世界の根源にあると思うから、今回、最初のデモからスタジオで作りますというふうになっていたら、アルバムの仕上がりはまた違うものになってたかもね。
DAOKO たぶんそう。それだと全然書けないと思います。リリックは1人でこもらないと書けないから。
☆Taku こもるっていうのはどういうこと? 宅録の様子を知りたいんだけど、自分の部屋でやるの?
DAOKO そうです。6畳くらいの部屋で机にパソコンが置いてあって。机といっても勉強机なんですけど、椅子に座ってカタカタやってます。で、机の横にマイクスタンドを立ててっていう。
☆Taku 座りながら歌うの?
DAOKO 録るときは座りながら歌います。今回のデモも全部座って録りました。
☆Taku 本番のレコーディングも座って録ったの?
DAOKO 全部座って録りました。宅録に近い気持ちでやりたかったから。
☆Taku 立つとやっぱり違う?
DAOKO そうですね。あと、録ってる姿を見られるのが恥ずかしいしなんだかそわそわしちゃうからブースのカーテンを閉めて、完全に声だけを聴いてプロデューサーの方にディレクションしてもらったんです。それがよかったですね、リラックスしてできたから。
──「IRONY」のときも座って録ったんですか?
DAOKO いや、立って録りました。
☆Taku 言ってくれれば椅子くらい用意したのに(笑)。
DAOKO そのときはレコーディングっていうものがまだよくわかってなかったから、そういうもんかなと思ってました。それに立って録れないわけじゃないんです。でも、今回は自分のアルバムっていうことで、自分の一番やりやすい環境でやらせてもらおうと思ったんです。
悩んだ末にできた曲もあります
☆Taku トラックメーカーはどういうふうに決めていったの? 誰かと一緒に探しながら?
DAOKO 厳選されたトラックメーカーさんのトラックが用意されてて、その中で自分の好みのトラックをやらせてもらったんです。
☆Taku リリックを書くときに「うわー、なかなか出ないなあ」っていうことはあったりした?
DAOKO けっこう悩んだものもあります。トラックメーカーを自分で選んでない分、慣れてない曲調だったり、すごくポップなトラックだったりして、これにどういうふうに乗ったらいいんだろうって。
☆Taku やっぱりポップなものは難しい?
DAOKO LOW HIGH WHO?のときは、アンダーグラウンドじゃないけど、どちらかというとそういうものが多かったし、インディーズ最後のアルバム「Dimension」は自分の好き勝手にやってアングラなテイストになったんですよ。で、「Dimension」を作り終えて1カ月経たないうちに「DAOKO」の制作が始まったから切り替えが難しかったっていうのもあって。
☆Taku さっき言ってたけど、毒を若干抜くとかスパイス程度にするっていうチャレンジもあるしね。
DAOKO そうなんです。だから、まずはトライしてみようって。で、悩んだ末にできた曲もありますね。ひとつハードルを越えて成長できたような気がして自信にもつながりました。
ロジックタイプの☆Taku、動物的タイプのDAOKO
──「DAOKO」はキャッチーでありながら実験性に富んだアルバムと思うし、m-floもそれまでのJ-POPにダンスミュージックを取り入れて実験的なものを作ってきたグループだと思うんです。だからこそ聞きたいんですが、お2人が考えるJ-POPってどういうものですか?
☆Taku その質問から、逆にDAOKOちゃんに質問したくなるんだけど、僕は物事をシステマチックに考えるというかロジックを重要視するタイプなのね。ブロックを集めて、それを重ねて、何かを作っていく。まあ80%はロジックで、20%はインスピレーションというか動物的な部分なんだけど、DAOKOちゃんは自分でどういうふうに分析してる? 動物的な部分が強いのかなっていう印象を持ってるんだけど。
DAOKO 音楽を始めたキッカケは、「やってみたいからやってみる」みたいな衝動だったし、プロセスとかロジックとか全然わかってなくて、音楽を作るってどういうものなのかっていうのをやりながら知っていったから、動物的な部分が強いのかなって思います。それは今も変わらないですね。自分からにじみ出るものというか、本能的にインスピレーションが変換されて曲が生まれてくるから、絵を描くことと同じくらいの感覚ですね。
☆Taku 絵を描くにも、まず1回鉛筆で下書きしてそれをペンで清書するタイプもいるじゃん。でもDAOKOちゃんは最初からペンで書いちゃうタイプな気がして。
DAOKO そうですね。だから曲作りも勢いで「えーい!」みたいな。「いっちゃえー!」みたいなところはありますね(笑)。
──キャンバスに向かって絵の具をどっしゃーん!みたいな(笑)。
DAOKO そう(笑)。振り返ると、細かい作業というかぬり絵とか苦手だったなあって思うから。
──枠の中に色を塗ることに抵抗があったと(笑)。
DAOKO あはは(笑)。そう考えると機械的じゃないというか、カチッとしてはいないんだろうなって。
☆Taku そこもDAOKOちゃんの作品の魅力につながってるんじゃないかな。俺はどういう効果が得られるかとかを考える、どっちかというと演出家タイプだから。
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- DAOKO メジャー1stアルバム「DAOKO」2015年3月25日発売 / TOY'S FACTORY
- 初回限定盤 [CD2枚組] 2500円 / TFCC-86507 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 2000円 / TFCC-86508 / Amazon.co.jp
収録曲
- 水星
- かけてあげる
- 一番星
- ゆめうつつ
- 流星都市
- ぼく
- きみ
- 嫌
- ミュージック
- JK
- ないものねだり
- 高い壁には幾千のドア
初回限定盤 INDIES BEST盤 収録曲
- ME!ME!ME! feat. daoko_pt.1 / TeddyLoid
- BOY
- キラキラ
- Fog(new mix)
- 試験一週間前
- 脳内 DISCO
- Mind Surf feat. daoko / ★ STAR GUiTAR
- 戯言スピーカーRap.ver
- 放課後校庭にて feat. daoko / COASARU
- 夕暮れパラレリズムfeat. daoko / ESNO
- IRONY / m-flo + daoko
- そつぎょう
DAOKO(ダヲコ)
1997年生まれ、東京出身の女性ラッパー。ニコニコ動画のニコラップに投稿した楽曲で注目を集め、2012年にLOW HIGH WHO? PRODUCTIONから1stアルバム「HYPER GIRL-向こう側の女の子-」を発表。ポエトリーリーディング、美しいコーラスワーク、ラップを絶妙なバランスで織り交ぜたドリーミーな世界観で話題を呼ぶ。2015年2月にはインディーズ最後と銘打ったアルバム「Dimension」を発表し、同年3月にTOY'S FACTORYからメジャーデビューアルバム「DAOKO」をリリースした。
☆Taku Takahashi(タクタカハシ)
DJ、プロデューサー。1998年にVERBALとm-floを結成。ソロとしても国内外アーティストのプロデュースやリミックス制作を行う。「Incoming... TAKU Remix」でbeatportの音楽賞「beatport MUSIC AWARDS 2011 TOP TRACKS」を日本人として初めて獲得し、その実力を証明。2010年にはアニメ「Panty&Stocking with Garterbelt」のサウンドトラックも監修する。国内外のDJが最先端の音と情報を発信するインターネットラジオ「block.fm」を2011年に設立。2014年12月にはフジテレビ系ドラマ「信長協奏曲」の音楽を手がけ、オリジナルサウンドトラックもプロデュースした。