好きな音楽を自由にやって怒られないんだ
──お二人の音楽のバックグラウンドはフィロのスの楽曲と近いところにあるんですか?
ヤマモト 僕は80'Sでもニューウェイヴやエレクトロミュージックが土台にあって。いわゆるブラックミュージックはそこまで通ってなくて、毎日譜割りやリズムを勉強しています。
宮野 逆に僕は人に言われなくても勝手にこういう音楽を作ってると思います(笑)。最初に加茂(啓太郎。フィロのスのプロデューサー)さんとお話ししたときに、「えっ、好きな音楽を自由にやって怒られないんだ」と驚きました。
ヤマモト 加茂さんから「スティーリー・ダンが一番好きと言ってる22歳の若者に会ったんだよ」と聞いて、「相当面白いやつか、もしくはめんどくさいやつだな」と思いました。結果、どっちでもあったけど(笑)。
宮野 (笑)。僕は影響を受けた音楽を公言するようにしているんです。その音楽をどう解釈して人に伝えるかを意識しているし、自分が関わったものをきっかけにいろんな人にルーツになった音楽を聴いてほしくて。フィロのスの話ではナイル・ロジャースの名前をよく挙げるようにしていますね。タイミングによってより思い入れの強い音楽をモチーフにしていますが。
──ひと言にブラックミュージックと言ってもその中に無数のジャンルがあるわけで、モチーフにできるネタは尽きないのでは?
宮野 そうですね。ネタを探すためにわざわざ聴いたことのない音楽を聴こうとはしないですが、同じ手を2度は使わないと決めています。まあ、次に何に挑戦するかはグループのシチュエーションをもとに考えることが多いですね。
ヤマモト 加茂さんもよく言ってるけど、ライブ中が一番新しいアイデアを思い付くんですよ。このアルバムにもそうやって生まれた曲が多いです。「ライブ・ライフ」は初のバンドセットライブに合わせて作った曲だし、メンバーの成長が我々に影響を与えていると思います。3年前とは明らかにリズムの感じ方が違いますし、「こんなことできるんだ」とよく驚きます。
宮野 想定していたものを上回ってきたり、4人のキャラクターに反したディレクションをしたときに発見があったり。
純粋に歌だけで大人になったことを表現できる
──では、メンバー1人ひとりの成長したと思う部分を具体的に聞かせてください。まずはハルさんについて。
宮野 「FUNKY BUT CHIC」のときに、明らかにどーんと抜けた瞬間があったんですよ。それまでセーブしていたものを解放したのかわからないですけど、突然声量が大きくなって。「VIVA運命」では想定していた上限を超えて機材のメーターがビリビリ震えてました(笑)。
ヤマモト そんなことあったね(笑)。歪んでたけど、「このほうがカッコいいし、のちに伝説になるからそのままでいこう」という話になったんです。そこからハルちゃんの声が武器になると確信して、曲によってはマリリがメインになることもあるけど、ブラックミュージック要素が強い曲は彼女の声を軸に作っていると思います。
宮野 ハルちゃんに求めるハードルがどんどん上がっちゃって、レコーディングのときに特に無茶振りしている気がしますね(笑)。「ハッピー・エンディング」ではアウトロのフェイクを何度も録り直したんですが、レコーディングであんなに鬼になったことはなかったですよ。なんだか僕のネジも外れちゃって、結局1日で終わらなくて。
──奥津さんの歌声もフィロのスの楽曲の軸になっていると思うのですが、どうでしょう?
ヤマモト 特に「ヒューリスティック・シティ」はマリリちゃんの歌があっての曲だと思います。なぜかわからないけど、どんどん声に艶が出てきたんです。アイドルには大人になるべきかどうかというテーマがあって、いろんな方法で大人になることを表現できるわけですけど、純粋に歌だけで表せるのはなかなかなことだと思います。
宮野 最近は本人からの提案も増えましたね。歌詞の物語の人物像を考えきて、その通りに歌ってもらったらハマることがあって。
ヤマモト 歌詞についてよく質問されます。「これ、私のことですよね!?」って(笑)。
宮野 レコーディングでよくディスカッションするし、4人の中で一緒に制作している感覚が一番ありますね。
──最初に「ヒューリスティック・シティ」を聴いたとき、誰か卒業するんじゃないかと眠れなくなったそうですよ。
ヤマモト 別にそういう意図はなかったです(笑)。でも現場に来なくなるお客さんがいたり、スタッフが離れたり、グループには別れが付きまとうもので。この曲ではその別れをどう捉えるかが人の成長につながるということを、平成の終わりに合わせて歌っています。
──ちなみに、ハルさんは「ハッピー・エンディング」の歌詞を見てネガティブな意味だったら歌いたくないと思ったそうです。
宮野 この曲は作り始める段階で、ライブの最後に歌う曲かつアルバムを締めくくる曲にすると決めていたので、終わりに関連するワードがいくつも出てくるんです。
ヤマモト ライブのラストに歌う曲で、あの譜割りだからあの歌詞しかなかったんだけどな(笑)。でも、人生には出会いと同じ数だけ別れがあるわけだから、どんな意味でも歌えるようなってほしいですね。
4人に対する要求のレベルが上がってきた
──次に、おとはさんについて聞かせてください。
宮野 おとちゃんはキャラが強い声質なので、それを考慮したディレクションや歌割りが多かったんですが、「ヒューリスティック・シティ」でわりと落ち着いたトーンもいけることに気付いて。アルバムに入ってる曲では、いろいろなバリエーションで取り組めてよかったですね。
ヤマモト 1stアルバムから順に聴いていくとびっくりしますよ。かわいさや電波ボイスを武器にするというフェイズを超えて、個人ではなくグループとしての歌い方ができるようになっていて。逆に今、電波ボイス全開の曲をやりたいですね(笑)。
宮野 それ、面白いなあ(笑)。あと、ライブ中の表情がめちゃくちゃよくなったと思います。ひょうひょうとしてるイメージですけど、意外とライブの終盤でエモーショナルな表情をしていて、LIQUIDROOM公演では特にそれを感じましたね。
──なるほど。では、最後にまりあさんについて。
宮野 テクニカル部分の成長は著しいですね。あんぬちゃん(佐藤)にコーラスを任せることが多くて、「イッツ・マイ・ターン」ではほぼ彼女が担当しています。ブルーノ・マーズやマイケル・ジャクソンとかR&B系の音楽って和音のままメロディが動くことが多いんですけど、僕もその手法を使って、上と下のあんぬちゃんのコーラスで主旋律を挟むことがあります。リズム感や耳のよさも向上したし、曲になじみやすい声質だし、コーラスはサブ的な役割ではなく、音楽的にしっかりと意味合いを持つものだから自信を持ってやってほしいですね。
ヤマモト 最初はメインじゃないことを気にしていたようですが、コーラスがないと曲が成り立たないですから。レベルの差ではなくて、個性の差なんですよね。
宮野 マリリちゃんやおとちゃんのキャラクターの強い声がケンカしてしまうことがあるので、楽曲の根幹をまとめる役割を担っているし、技術も向上しています。
ヤマモト だからメンバー全員への要求のレベルが上がってきた(笑)。昔と違って音楽的に難しいことを言ってるよね。
──4人の音楽偏差値が上がってきたんですね。
宮野 「もうちょっと歌詞の行間を読んでみてよ」とか、「グルーヴ感っていうはハネなんだよね。ハイハットの音を聴こうよ」とか言ってる(笑)。4人共成長したってことですね。
- フィロソフィーのダンス「エクセルシオール」
- 2019年4月5日発売 / PHILOSOPHY OF THE WORLD
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通常盤 [CD]
3240円 / UXCL-198 -
初回限定盤 / CD
[CD2枚組]
3780円 / UXCL-200 -
初回限定盤 / DVD
[CD+DVD]
4320円 / UXCL-202
- CD収録曲(全形態共通)
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- イッツ・マイ・ターン
- ラブ・バリエーション
- スーパーヴィーニエンス
- ロジック・ジャンプ
- フリー・ユア・フェスタ
- パレーシア
- シャルウィー・スタート
- スピーチ
- バイタル・テンプテーション
- ヒューリスティック・シティ
- ライブ・ライフ
- ハッピー・エンディング
- 初回限定盤付属ボーナスCD収録曲
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Live at Stellar Ball 2018/12/16
- ファンキー・バット・シック
- イッツ・マイ・ターン
- すききらいアンチノミー
- アイム・アフター・タイム
Funk Up Medley
- バッド・パラダイム~ライク・ア・ゾンビ~バイタル・テンプテーション~エポケー・チャンス~バッド・パラダイム(Reprise)
- アルゴリズムの海
- コモンセンス・バスターズ
- ラブ・バリエーション
- はじめまして未来
- ライブ・ライフ
- アイドル・フィロソフィー
- ベスト・フォー
- ジャスト・メモリーズ
- ダンス・ファウンダー
- 初回限定盤付属ボーナスDVD収録内容
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Visions of 2018
Music Video
- ダンス・ファウンダー(Re:Vocal&Single Mix)
- ライブ・ライフ
- イッツ・マイ・ターン
- 夏のクオリア(remixed by ikkubaru)
- ヒューリスティック・シティー
- ラブ・バリエーション WITH SCOOBIE DO
Bonus 映像
- Girls Are Back in Town Vol.1 転換映像1
- Girls Are Back in Town Vol.1 転換映像2
- ヒューリスティック・シティー メイキング映像
ツアー情報
- フィロソフィーのダンス「Bandwagon Vol,1」
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- 2019年4月16日(火)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
- 2019年4月17日(水)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
- 2019年4月23日(火)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- 宮野弦士(ミヤノゲント)
- 1994年生まれ、東京都出身の作曲家。 2015年春に音楽専門学校を卒業し、音楽活動をスタートさせた。1970、80年代の音楽を主なバックグラウンドとして、楽器演奏、作編曲、ミックス、マスタリングと複数の分野での制作を行う。 フュージョンバンドでのギタリストを務めているほか、アイドルやアーティストへの楽曲提供も行っている。
- ヤマモトショウ
- 1988年生まれ、静岡県出身の作詞家、音楽プロデューサー。東京大学文学部思想文化学科を卒業したあと、バンド・ふぇのたすのギタリスト、作詞作曲担当として2012年にデビューした。バンド活動のかたわらシンガー、アイドル、声優などのプロデュース、楽曲提供を行う。2015年9月のふぇのたす解散後に本格的に作詞、作曲家として活動をスタートさせた。
- フィロソフィーのダンス
- 2015年に結成された、加茂啓太郎がプロデュースを手がけるアイドルグループ。「Funky But Chic」をキーワードに活動しており、宮野弦士が編曲、ヤマモトショウが作詞を担当するソウルフルな楽曲で注目を集めている。2015年12月に会場限定シングル「すききらいアンチノミー」を発売。2016年11月に東京・原宿アストロホールで初のワンマンライブ「Do The Strand VOL.1」を開催したほか、1stアルバム「FUNKY BUT CHIC」をリリースした。2017年11月に2ndアルバム「ザ・ファウンダー」を発表。2018年6月に東京・LIQUIDROOM で初の生バンド編成でのライブを行い、同月から6カ月連続で7inchシングルをリリースした。同年10月に東京・東京キネマ倶楽部でSCOOBIE DO とのツーマンライブを、12月には東京・ステラボールでホーン隊を加えたバンドセットライブを開催。2019年4月に3rdアルバム「エクセルシオール」をリリースし、全公演バンドセットの東名阪ツアーを行う。