音楽ナタリー Power Push - CYNTIA
大きな試練の先に見えた、4人の新しいスタートライン
メンバー全員が自分の思いをぶつけ合った結果がこの作品
──アルバムの制作はいつ頃から始まったんですか?
AYANO レコーディングは今年の9月くらいからですね。
SAKI その前からずっとデモは作ってたんですよ。「どんなに忙しくてもデモは出してね」っていう決まりがあるので、アルバムを作れるという状況になったときは、ストックが100曲分くらいあって。「みんな、がんばってるな」って思ったし、モチベーションは高かったですね。
AYANO デモを並べてみたらピンキリだったけどね(笑)。スタジオでレコーディングする前の準備期間として、メンバーの中でアレンジを練る時間もたっぷりあって。
SAKI 今回はほぼセルフアレンジなんです。めっちゃ時間がかかったけど、その分、思い入れもひとしおですね。
──アルバムの全体的なテーマに関しては?
SAKI 今までは先にテーマがあったんですよね。例えば「女性目線の曲を中心にしよう」というところから「WOMAN」というアルバムができたし、「私たちの激しい部分に焦点を当てよう」というテーマで「Limit Break」というアルバムを作ったし。今回はそういう指標がまったくなくて、ストック曲の中から「これはCYNTIAっぽい」とか「この曲をやりたい」って欲望のままに選ぶところから始めたんです。
AYANO その後も「これを外して、こっちを入れよう」とか、取っ替えたりして。リリースできない時期も続いていたし、「このアルバムを出したときに、自分たちはどこに立っていたいか?」「それをファンの皆さんにどうやって届けるか?」ということを、みんなで何度もミーティングしたんですよね。もっとたくさんの方にCYNTIAを知ってほしいという気持ちも強くなっていたし、メンバー全員が自分の思いをぶつけ合った結果、この9曲になったっていう。
YUI そのぶん1曲1曲に対する思いも強くて。それはギターのアレンジ、演奏にも出てますね。3カ月連続ワンマンで培ってきたものも含めて、今の自分を自由に表現できたかなって。
AZU 客観的な視点を持てるようになったのも大きいですね。私は途中からバンドに加入したんですけど、去年から今年にかけて、自分がいなかった時期の曲も改めて聴き直す機会があって。そこで「CYNTIAのベーシストとは?」ということをもう1度考えたんです。新曲のベースラインを考えるときもCYNTIAらしさを今まで以上に意識するようになって。それはメンバーとも話してましたね。
AYANO ベースラインを入れたデモが送られてきて「どうかな?」って相談されたり。一番客観的に聴いてるのはSAKIだと思いますけどね。
SAKI 「それはやりすぎ」って言うときもありました(笑)。
AZU 「エモすぎる」って言われたこともありますね(笑)。なんて言うか、CYNTIAっていう1つの人格みたいなものがあると思うんですよね。今回はそれをみんなで構築し直した感じもあります。活動を続けていると、それぞれ好きな音楽が変わってきたり、やりたいことが変わってくることもあると思うんです。でも今回のアルバムは、今までCYNTIAが歩んできた軌跡を振り返りつつ、新しい軸になるようなものにしたくて。いろんなジャンルの曲があるけど、どれもCYNTIAだよねっていう。
「CYNTIAらしい」とは何か
──音楽的な軸になっているのは、やはりハードロック、ヘヴィメタルなんでしょうか?
AYANO そこが難しいんですよね。まだ答えは出ていないんですけど、1つだけわかったのは、「“これは自分たちらしい”と思って4人で音を出せば、それはCYNTIAの音楽になる」ということで。
SAKI うん。確かに始まりはハードロック、ヘヴィメタルだったし、それは今も根底にあると思うんです。でも、今もそれが軸になってるかと言えば「……???」なんですよね。今回のアルバムにも激しい曲は入ってますけど、全体を通して聴くと、そうじゃない曲もけっこうあって。そのすべてを総じてCYNTIAということですね。ぼんやりした答えで申し訳ないですけど(笑)、その感覚はメンバーで共有できているんです。
AYANO そうだね。「この曲、CYNTIAっぽいと思う?」という質問に対する答えは、全員一致していると思います。
──「CYNTIAらしい」と思えば、どんなジャンルでも振り切ってやるのも特徴ですよね。今回のアルバムにもヘビィメタル直系の「Bless of the fire」、四つ打ちを軸にした「Life goes on」などさまざまなテイストの曲が入っていますが、1つひとつの個性がハッキリしていて。
SAKI 中途半端になっちゃいけないし、しっかり振り切るというのは大事ですからね。
AYANO “いいとこ取り”って言えば聞こえはいいけど、需要がない場合もありますから。例えばクレープとオムライスが好きな人でも、一緒に合わせて食べることはないじゃないですか(笑)。変な例えですけど、音楽でも同じようなことが言えるんじゃないかなって。
「こんな夜景のキレイな場所で、4人でCYNTIAを続けたい」と思った
──アルバムの収録曲についても聞かせてください。まずは表題曲「Urban Night」。これはアルバムの中心にある曲と考えていいですか?
AZU そうですね。第1回目の選曲会のときに、全員一致で「この曲をアルバムの軸にしたい」ということになって。この曲を基準にして、ほかの曲も決めていったんです。
SAKI 最初から「カッコいい」と思いましたね。原曲は巨匠(AYANO)がいい曲を作ってくれて。
AYANO 「Urban Night」のデモを作ったのは、まさにバンドが止まりそうな時期だったんです。私は地方から東京に来てるんですけど「こういうときに“地元に帰ろう”って思う人もいるんだろうな」って考えたりして……そんなタイミングで東京の夜景を見ていて、「こんなにキレイで、いろんな人たちが動いている場所でバンドを続けたい。絶対に4人でCYNTIAをやりたい」と改めて思って。そのためには曲を作らないと!って考えてるうちにできたのが、この曲なんです。
──サウンドも洗練されていて、まさに都会的な雰囲気ですよね。
AYANO そう思ってもらえるのはありがたいですね。
YUI CYNTIAに新しい要素が増えそうっていううれしさもあったし、AYANOから曲を作ったときの背景も聞かせてもらって、すごく共感できたんですよ。目頭も心も熱くなったというか。歌に関しては、今までにない引き出しを開けた感覚もありました。ラフなんだけど、フェミニンなところもあるっていう。
AYANO アレンジや演奏に関しては、4人全員が競り合ってる感じを出したくて。今までは曲によって「これはギターがメイン」「こっちはボーカルがメイン」という意識だったんですけど、「Urban Night」は4人がそれぞれのカラーを出したかったので。その分、ミックスとかでバランスを取るのは難しかったですけどね。
YUI 私はダビングの段階で、自分で弾いたギターのフレーズとも競り合ってますからね(笑)。アレンジも何回もやり直したり、構成やソロの尺を途中で変えたり。最後の最後まで練ってましたね。
AYANO 何度もアレンジが変わるから「今、バージョンいくつ?」みたいな感じで。
──全員が納得できたときが着地点?
SAKI そうです。時間かかりますよね、やっぱり(笑)。
AYANO 夏の暑い時期から、寒くなる頃までやってましたから。4人それぞれに主導権があるバンドなんですよ、CYNTIAは。
SAKI 最後にまとめてくれるのはAYANOなんですけど、結局、全員が賛同しないと決まらないっていう(笑)。
AZU レコーディングのときもサウンドプロデューサーの方に四者四様の意見をぶつけて、そこでもまた話し合って。
AYANO 誰か1人が決めてしまうと、バンドの未来が狭くなると思うんですよね。だから、最後まで全員の意見を大事にしたくて。
SAKI 音楽の神様に愛されてるようなメンバーがいれば別ですけど、私たちはみんな努力型なので。あとはもう話し合いですよね。例えば私がやりたいことに対してAZUちゃんが「やりたいくない」と思っていたとしたら、「こういう考え方もあるよ」ってフォローするし。よくない言い方をすれば“言いくるめる”ということなんですけど(笑)、説得はしますね。
──当然ですが、そういうコミュニケーションは信頼関係がないと成立しないですよね。
SAKI そうですね。どうやら私たちは仲がいいらしいです(笑)。ほかのバンドの人に「メンバー同士でこういう話をしていて」って話すと「すごい仲いいね!」って言われるんですよ。私、「ウチのバンドはドライな関係だな」と思ってたんですけど、そうじゃなかったようで。
- ニューアルバム「Urban Night」 / 2016年12月14日発売 / Age Global Networks
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3456円 / CYNT-002
- 通常盤 [CD] / 2592円 / CYNT-001
- HMV限定盤 [CD+DVD+グッズ] / 3564円 / CYNT-003
CD収録曲
- introduction
- Urban Night
- ハピネス
- Bless of the Fire
- Life Goes On
- Un!verse
- 不眠症シンデレラ
- if
- Call Me.
初回限定盤DVD収録内容
- Run to the Future
- 閃光ストリングス
- キラキラ☆シャングリラ
- Endless World
- エレウテリア
- Moonlight Roulette
- Wish
HMV限定盤DVD収録内容
- Meter Calling
- シオン
- Through the Fire and the Desire
- 幻覚の太陽
- Beyond the World
ライブ情報
CYNTIA LIVE TOUR 2017 ‐Urban Night‐
- 2017年1月7日(土)愛知県 ell.FITS ALL
- 2017年1月8日(日)大阪府 ROCKTOWN
- 2017年1月14日(土)宮城県 HooK SENDAI
- 2017年1月22日(日)福岡県 DRUM SON
- 2017年1月28日(土)東京都 WWW X
イベント情報(※終了分は割愛)
CYNTIA「Urban Night」発売記念イベント
- 2017年1月9日(月・祝)
- 大阪府 ディスクピア日本橋店 テレビゲーム館2F
イベント内容:トーク、握手&サイン会 - 2017年1月19日(木)
- 東京都 dues新宿
イベント内容:握手&サイン会
CYNTIA(シンティア)
SAKI(Vo)、YUI(G)、AYANO(Key)、AZU(B)による4人組ロックバンド。2011年4月インディーズレーベル・SPINNINGからシングル「Run To The Future」をリリースした。初ライブ直後にベーシストが体調不良のため脱退し、元LAZYgunsBRISKYのAZUが加入。2013年1月にKARAの東京ドーム公演でバックバンドを務めた。同年3月にアルバム「Lady Made」でビクターエンタテインメントよりメジャーデビュー。2014年1月発売のシングル「閃光ストリングス」はテレビアニメ「聖闘士星矢Ω」のオープニングテーマとなった。2015年4月にリーダーのKANOKO(Dr)が脱退し、同年10月にレーベルをVillage Again Associationに移籍。4人編成での初のアルバム「Urban Night」を2016年12月にリリースした。