衝撃的だったライブ
──本間さんは降幡さんのソロアーティスト活動のプロデュースを手がけていますが、伊波さん、斉藤さんとのご面識はあるんでしょうか?
本間昭光 去年、僕が一方的にCYaRon!のライブを小倉(福岡)に観に行ったんです。日帰りで。
降幡愛 来てくれましたよね!
本間 そのライブを観て、いい意味でショックを受けたんですよね。ファンの方々の盛り上がりが、これまで観たことないくらいの感じだったんですよ。あと、サービス精神だったり、ショーの構成であったり、照明にしても音にしても、ものすごいなと思って。そこから僕の周りのスタッフにCYaRon!の宣伝を始めて。「すごいですよ!」ってみんなに言ったんだけど、知らなかったのは俺だけだった(笑)。
一同 (笑)。
本間 ちょうど八幡製鉄所の真ん前に会場があって、ライブ前にそのあたりを散歩していたら、ファンの方々がリハをやってるわけよ。どこでどうコールをするかって。
斉藤朱夏 ありがたい!
本間 その熱量がすごいなと思って。それだけの熱量を沸き立たせるものがこの3人にあるんですよ。実際にライブを観たら、そう感じたんです。それ以降、自分の中でCYaRon!は別格ですね。
降幡 イエーイ!
本間 本当にすごかったですよ。TAKUYAくんとミトくんはまだCYaRon!のライブ、観たことないでしょ?
TAKUYA 観たことないですね。
ミト まだないです。
本間 早く観て!
一同 (笑)。
ミト 「ラブライブ!サンシャイン!!」の中でもここまでピンポイントで1つのユニットに行くのは、けっこうニッチな流れだと思いますよ。
降幡 そうだと思います。
本間 申し訳ないけど、当時はCYaRon!の楽曲に対する知識もなかったんです。でも、楽曲を知らなくてもあっという間にライブが終わるんですよ。楽しくて目が爛々としてました(笑)。
──(笑)。TAKUYAさんとミトさんは、メンバーの皆さんとご面識はありますか?
TAKUYA すごく初対面です。
ミト すごく(笑)。私もお会いするのは初めてですね。例えば斉藤さんが出演しているアニメ「ワンダーエッグ・プライオリティ」の音楽を担当したりはしているんですが、実際にお会いすることはなかなかなくて。
斉藤 だから、今日やっと初めてお会いできてうれしいです。
ミト 本当にそうですよね。降幡さんは……私にとって降幡さんのソロアーティストデビューは衝撃的な出来事の1つで。「CITY」(2020年6月に発表された降幡のデビュー曲)を聴いてぶっ飛びましたからね。
降幡 えへへ(笑)。
ミト で、プロデューサーが本間さんと聞いて、チキショー!って(笑)。
本間 はははは(笑)。
ミト いわゆる声優さん、タレントさん案件のプロジェクトでこんなにジェラった案件って、あとにも先にもないんじゃないかというくらい、僕にとっては衝撃的だったんですよね。パイセンさすがっす!って思いながら、歯噛みをするような思いでした(笑)。
──本間さんはライブをご覧になったことがあるということですが、TAKUYAさんとミトさんは「ラブライブ!サンシャイン!!」という作品にどういうイメージがありましたか?
ミト 僕は「ラブライブ!」のμ'sの楽曲に関わらせていただいたのもあって、いろいろとチェックしているんですけど、「ラブライブ!サンシャイン!!」のユニットは楽曲のバリエーションが幅広いイメージがあります。CYaRon!の1stフルアルバムを聴いて特に思ったのは、これだけ入り組んでいても、各々のメンバーの個性が立っているというか。「ラブライブ!」シリーズのプロジェクトがどんどん進化していっているんだなと感じたりもしましたね。
TAKUYA 僕は「ラブライブ!サンシャイン!!」が人気だというのはもちろん知ってますけど、正直そんなに詳しくなかったですね。沼津、海鮮というイメージでした。ある日沼津に海鮮丼を食べに行ったら、「ラブライブ!サンシャイン!!」の街になっていたんです。そこらじゅうで音楽がかかっていて、ファンの方々がたくさんいらっしゃって。グルメサイトでお店を調べていても、作品の関連リンクが貼ってあるんですよね。すごいなあというのが第一印象だったんですけど、今日お会いして、やっと本当に実在する人たちなんだなって実感して。
伊波杏樹・斉藤・降幡 (笑)。
──降幡さんはソロアーティストとしての活動で本間さんとタッグを組んでいますが、こうしてCYaRon!の楽曲に携わってもらうのはまた違う感覚ですか?
降幡 ああ、そうです。親戚の人がいるみたいな、不思議な感覚で(笑)。
本間 (笑)。方向性の違いというのはとにかく意識して、降幡愛プロジェクトではやらないようなアプローチのアレンジにしました。特にリズムに関してはソロプロジェクトとはまったく違うものになっていると思います。
降幡 「全然違うから楽しみにしてて」とずっとおっしゃっていましたよね(笑)。
僕の中の“J-POP”の王道
──1曲目の「ある日…永遠みたいに!」は作曲をTAKUYAさん、編曲を本間さんというタッグで制作されたナンバーです。
本間 TAKUYAくんには昔、「境界のRINNE」の劇伴でギターを弾いてもらったことがあって。
TAKUYA そうでしたね。
本間 それからしばらく時間が空いていたんですけど、今回CYaRon!と、もう1つ別案件でご一緒するお話がたまたま同じタイミングであって。アイドリングが合ってる感じで制作できましたね。
TAKUYA タイミングがよかったと思います。今回の3曲に関しては、全部僕がアレンジしちゃうとオール僕っていう感じの作品になっちゃうし、せっかくだから僕ができないことをできる巨匠に1曲託したいなと。それで、ぜひ本間さんにお願いしたいなと思ったんです。ミトは僕の後輩で。今僕が一緒にやりたい先輩とやりたい後輩と作れて、すごくいい3曲になりました。
──「ある日…永遠みたいに!」はどういうイメージで制作した楽曲なんでしょうか?
TAKUYA この曲は僕の中の“J-POP”の王道というか。「一番いい曲を書いてください」と本気で言われたら、こういう曲かなという。
伊波 わあ!
降幡 これはすごいことですよ!
TAKUYA もしかしたら僕にそういう依頼が来たのは、初めてかもしれない。いつもは「元気のある曲をお願いします」と言われることが多いんです。だけど今回「3曲くらい頼みたいです。1曲は王道みたいなものが欲しいです」というオファーをもらって、じゃあ本気でいい曲を書こうかなと思って。そしたら、我ながらうまくできてびっくりしてます(笑)。
斉藤 うれしい。
TAKUYA しかもアレンジが本当に参りましたというくらい素晴らしくて。
──制作のやりとりの中で、本間さんとTAKUYAさんはどういうお話をされたんですか?
本間 ええっとね、「大サビ難しいけど歌えるかな?」って。
ミト めちゃくちゃ具体的ですね(笑)。
降幡 この曲、本当に難しかったですよ!
本間 構成とかは全然いじってもらっていいと言われてたんですけど、基本的にはもらったデモに準ずる形で進めました。ワンコーラス終わって長い間奏があって、そのあとにまたギターソロがあるというのは、基本的に僕の曲ではあまりない構成なんですが、それが面白いなと思って、あの間を生かした形にしたんですよね。ライブを観た経験があるから、ライブのときにそこはどういう照明になるんだろうか、フォーメーションはどうなるんだろうかって想像しながら作ったところはあります。
降幡 へえー!
TAKUYA 僕もグループに楽曲を提供させていただくときは、やっぱりちょっとフォーメーションのことは意識しますね。展開が多いほうがライブで何かできるかなって。本当は必要ないような数小節もデモに入れて、そのままひょいって本間さんに丸投げしちゃったんですけど、そこもすごく素敵にアレンジしていただいてよかったなと思います。
本間 でも、やっぱり一番は“TAKUYAメロディ”なんですよ。
降幡 サビとか最高ですもんね。
本間 だから、作業していてうれしくて。そういうメロディに自分がアレンジを加えられるというのは刺激的なんですよね。さらにそこに歌が入ってきて、表情が付いたらどうなっちゃうのって。ちょっと台詞っぽく歌っているポイントは、ミックスのときにオケ抜いちゃおうということになったり。歌、ミックス、マスタリングと、進んでいく中でどんどん変わっていって、いい意味での化学変化が起こったんじゃないかなと思います。
今のCYaRon!だからこそ歌える曲
──CYaRon!の皆さんがこの曲を受け取ったときの印象はどうでしたか?
降幡 斬新なイントロで、私はすごく引き込まれましたね。潮風感じる波のあるイメージというか、イントロから「何が来るんだろう?」みたいな。余裕のあるCYaRon!の表情も浮かんで。
伊波 新鮮でかなりびっくりしました。CYaRon!の3人の歌声とどういうふうに合わさるんだろうという、ワクワク感が強かったです。これまでより大人っぽい感じがあって、今のCYaRon!だからこそ歌える楽曲だと思いました。
斉藤 確かに昔だったら歌えないよね。
伊波 そう思う。やっぱり昔は「とにかく元気に!」というのが第一にあったから。繊細に曲を紡げるようになったんだなというのはすごく感じました。
TAKUYA 確かにある程度キャリアがないと、この曲は歌えないかもしれない。
伊波 ここまで3人で歩いてきたからこそ、歌える楽曲ですね。
斉藤 早くライブで歌いたいですね。どういう表現になるのか、めっちゃ楽しみです。
本間 本当にライブが楽しみ。
斉藤 本間さんには絶対来てほしいです(笑)。
本間 (笑)。でも、このリズムをちゃんと歌いこなせる3人はすごいですよ。ともかくリズムをややこしくしたかったんです。このドラムを叩けるやつは玉田豊夢しかいないなと思って、声をかけて。
ミト なるほど。
本間 デモを早めに送って、これをそのままやりたいという話をして。そしたら音作りから演奏まですべてバッチリでした。それを歌いこなして、自分たちのカラーに染め上げている3人はすごいと思います。よく大サビ歌えたなあ。
TAKUYA 難しくしてしまってすみません(笑)。カラオケで歌おうとしても、なんかうまく歌えないというような曲ばっかり作ってるんです。でも、歌えるようになるとけっこう楽しい曲なんじゃないかな。
ミト TAKUYAさんはそんなトラップだらけの曲を30年近く作ってますからね。
本間 この曲は細かいこだわりが多いんですよ。「タッタカタッタカ」というところはリンゴ・スター手順でやってもらってるし。左利きのドラマーがやる手順なんだけどね。
伊波・斉藤・降幡 ヘえー!
──ミトさんもすでにこの曲はお聴きになっていますか?
ミト もちろん聴かせていただきました。大先輩たちがこういう挑戦的なカードを切ってくるのは、ちょっとびっくりしましたよね。あと、TAKUYAさんが普通にいい曲を作るとなると、ここまで純度高くなるんだなと思って。確かにTAKUYAさんってどうしてもトラップを作りたがるタイプだと思うんですよ。でも、やっぱりいいメロディがあるからこそ崩せるという。
本間 うんうん。
ミト 難しい曲だけど、それを3人に歌わせられるようなところまでフォーカスを合わせてもいる。音楽家としては、この2人でナイアガラサウンド作るのかい!って言いたくなる(笑)。ちょっと衝撃的なところはありました。
伊波 なるほど……普段AqoursやCYaRon!でこうして楽曲を作ってくださる方々のお話を直接聞く機会はほとんどないので、本当に貴重です。聞き入っちゃう。
斉藤 面白い……!
伊波 こういう貴重なお話を聞くことで、歌にも反映できることがたくさんあるんだろうなと思いました。
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J-POP界の革命
2021年6月4日更新