クレナズム 萌映&まこと×SCANDAL HARUNA&MAMI座談会 (2/2)

大切なのは、信頼したうえで弱さを見せること

──SCANDALのようにバンドを長く続けていくうえで、何か秘訣はありますか?

萌映 それ、めちゃくちゃ聞きたいです!

HARUNA 「自分たちは長く続けているから偉い」と思っているわけではない、という前提で話しますけど……やっぱりお互いへのリスペクトを忘れないようにするのが大事だと思います。「誰々が書いた曲もいいね」「誰々の意見もいいね」と思える心があるから長く続いているんじゃないかなと。とにかく相手のことは否定しない。

MAMI うん、それは心がけていますね。私は、今の自分の状態をメンバーにも知っておいてもらうことが大事だと思っていて。昔は「求められたことは力づくでもやる」というタイプで、体やメンタルをボロボロにしちゃったこともあったんです。そうじゃなくて、不安要素があるんだったら先に伝える。できないときはできない、やりたいものはやりたくないと潔く伝えれば、メンバーが助けてくれるので。

萌映 なるほど。私はけっこう自分で抱えてしまうところがあって。ほかの人からいろいろな意見をもらったら「全部試さないと」と思ってしまうんです。でもそうじゃなくてちゃんと取捨選択をして、自分の信じたことだけをやれたらいいのにって思います。

HARUNA うんうん。

萌映 それで凹んじゃうこともあるんですけど、お二人はどうやってメンタルを保っているんですか?

HARUNA 私もいろいろな意見を取り入れることをイマイチ楽しめていなかった時期があって。自分のメンタルをちゃんと保てるようになったのは、ここ数年のことなんです。落ち込むことも、「自分には向いてないんじゃないか」と思うこともたくさんあったけど、ここ5、6年で「私はSCANDALのボーカルとして、私にしかできないことをやっているんだ」とちゃんと思えるようになった。どうしてそう思えるようになったのかというと、年齢や経験によるところが大きいのかな。時間が解決してくれました。

HARUNA(Vo, G / SCANDAL)

HARUNA(Vo, G / SCANDAL)

萌映 時間かあ。そうですよね……! 以前大阪でライブを観させていただいたとき、HARUNAさんの「つらかったらここに戻ってきていいんだよ」という言葉がすごく響いたんですよ。私もHARUNAさんみたいに、お客さんに安心してもらえるような存在でありたいんですけど、やっぱりそういう強さも、長く続けるうちに手に入れられたものなんでしょうか。

HARUNA 時間もそうだけど、お客さんの存在も私たちの自信につながっていて。20代までは、自分のことをよく知ってくれているお客さんの前でさえ「カッコよくいなきゃ」と取り繕っていたんですよ。だけど30代に差しかかった頃のライブで、ちょっと弱音を吐いたときにお客さんが受け入れてくれて。「プライベートですごく嫌なことがあったけど、みんなの顔を見たら本当にどうでもよくなっちゃって、今日すごくがんばれたんだ」と言えた瞬間に、お客さんと一体になれて、そのときに「この人たちは絶対に自分の味方でいてくれる」「私がバンドマンとして生きていくうえでめちゃくちゃ大切な存在だ」とすごく感じたんです。本当に大切だからこそ、ライブに来てくれている人たちのことは絶対に幸せにしたいと思うし、そういう気持ちが芽生えたからこそ強くなれた気がする。

萌映 弱音を吐くのはダメなことだって、正直今でも思っているんですけど……。声に出して言うこともやっぱり大事なんですかね?

HARUNA すごく勇気のいることだけどね。私も最初はできなかったけど、最近はメンバーもスタッフもお客さんも信頼したうえで、ちゃんと弱さを見せるようにしてる。こないだツアーが始まるときに風邪を引いて、満足のいかない歌を披露することになってしまったのね。観に来てくれた福岡公演も確かまだ鼻声だった気がするんだけど、今の自分のベストを届けるしかないし、そういう気持ちで歌ったら、お客さんも受け入れてくれて。

萌映 聞いていいのかわからなかったんですけど、そのときのことも聞きたいなと思ってました。MCで「あまり歌えないけど」とおっしゃっていたときに、「言っていいんだ!」と思って。私も喉を壊すことがあるので、あのライブでのHARUNAさんの姿は本当に救いでした。

HARUNA どんなに気を使って過ごしていても、体調を崩しちゃうことはあるよね。私たちには「そんなSCANDALもいい」と思ってくれるお客さんがたくさんいるから、本当に救われてるなと思う。弱さを見せられるということは、信頼しているということだから。それができるようになると、幾分気持ちは楽になるかも。

萌映 そうですよね。ありがとうございます!

左からまこと(B / クレナズム)、萌映(Vo, G / クレナズム)、HARUNA(Vo, G / SCANDAL)、MAMI(G, Vo / SCANDAL)。

左からまこと(B / クレナズム)、萌映(Vo, G / クレナズム)、HARUNA(Vo, G / SCANDAL)、MAMI(G, Vo / SCANDAL)。

フェスのセットリストはどう決める?

まこと 僕も聞きたいことがいっぱいあるんですけど、こんな深い話のあとだと難しい……(笑)。あえてライトな質問をしたいんですけど、ライブのセットリストはどうやって決めていますか? フェスとかで出演時間が30分くらいしかないときに、どうしているのか知りたくて。クレナズムの場合、1stアルバムと最新アルバムで曲のテイストがけっこう違うので、1つのセットリストに収める難しさを最近ちょっと感じているんです。SCANDALも曲調が幅広いですよね?

MAMI そうですね。今のところは、どういうふうにしているんですか?

まこと そのフェスのお客さんがどんな人が多いのか、なんとなく予想してそこに合わせていく感じですかね。「このフェスだったら、シューゲイザー色の強い感じでずっといってしまおう」という判断をするときもあれば、アップテンポの盛り上がるような曲だけをやるときもあります。

MAMI 私たちの場合、最近はいろいろな年代の曲をギュギュっとまとめたセトリを持っていくことが多いですね。わけのわからないセトリを組んでいた時期もあったんですよ。アルバムに収録されている、ドラムのRINAがキーボードを弾く曲を入れてみたり(笑)。

HARUNA 誰も知らないカップリング曲をやってみたりね(笑)。

MAMI そういう尖った時期やいろいろな試行錯誤を経て、最近は「どの年代の曲も、意外といい感じに混ざるぞ」と思えていて。だから最近は“全部見せ”っていう感じのセトリが多いですね。

まこと なるほど。

MAMI あと、人が流れてきてくれるであろう時間帯を予測したりします。「このタイムテーブルだったら、このステージでのライブを観ていた人たちが終わったあとに私たちのことを観に来てくれるかな」「じゃあここで『瞬間センチメンタル』をやるか」みたいな。

MAMI(G, Vo / SCANDAL)

MAMI(G, Vo / SCANDAL)

まこと すごい。そういう考え方もあるんですね。そこまで緻密に考えたことはなかったです。めちゃくちゃ参考になりました。ありがとうございます!

萌映 あとさ、あのことは伝えなくていいの?

まこと あっ。実はなかなか言い出せなかったんですけど……(と言いながら、青いラバーバンドを取り出す)。

MAMI あっ! それは!

HARUNA 私たちのツアーのグッズですね。

MAMI 「HELLO WORLD」ってことは、9年前?

HARUNA 来てくださってたんですね。うれしい。ありがとうございます!

まこと 兄に買ってもらった、特に思い入れのあるグッズで。

萌映 今日見せるんだって言ってたもんね。

まこと うん。

萌映 よかった、よかった。

4年を経ての「聴志動感 2024」

──10月4日に大阪・umeda TRADで開催される「聴志動感 2024」で、クレナズムとSCANDALの初のツーマンライブが実現します。最後に、このツーマンへの意気込みをお一人ずつお願いいたします。

萌映 私はSCANDALのファンだけど、今はバンドマンとしてステージに立っているので、この日もいち表現者として、緊張に負けずにしっかり歌い切りたいです。お客さんの中にはクレナズムを初めて観るという方もいらっしゃると思うので、しっかり覚えてもらえたらうれしいなと。私にとってはもちろん特別なライブですが、お客さんにも「この日ヤバかったな」と思ってもらえるような1日にしたいです。

まこと 僕もSCANDALのいちファンで、コピーしていたバンドと対バンするなんて不思議な状況だなと思います。初めてお会いしてから4年が経ちますけど、この4年での自分たちの成長を誰よりも強く実感できています。今のクレナズムのすべてをぶつけにいくので、よろしくお願いします!

HARUNA 一見交わらなさそうな2組だから、イベンターさんが結んでくれた縁がなければこのツーマンも実現しなかったんじゃないかと思いますし、すごくありがたいことだなと思っています。SCANDALのファンはクレナズムのライブに対して、クレナズムのファンはSCANDALのライブに対して「いいな」と思えるポイントがきっとたくさんあると思うんですよ。なので、いい夜になったらいいなと思っていますね。今のSCANDALをクレナズムのファンにも楽しんでもらいたいです。

MAMI 4年前のオンラインでの「聴志動感」を観てくれていた人にとっては激エモな対バンだと思うし、私もすごく楽しみです。この日を楽しみにしているお客さんはたぶんいっぱいいると思うけど、自分たちも最高に楽しんで、みんなにとって最高に楽しい夜にできたらうれしいなと思っております。当日はよろしくお願いします!

左からまこと(B / クレナズム)、萌映(Vo, G / クレナズム)、HARUNA(Vo, G / SCANDAL)、MAMI(G, Vo / SCANDAL)。

左からまこと(B / クレナズム)、萌映(Vo, G / クレナズム)、HARUNA(Vo, G / SCANDAL)、MAMI(G, Vo / SCANDAL)。

公演情報

聴志動感 2024 ~umeda TRAD Last Season~

2024年10月4日(金)大阪府 umeda TRAD
<出演者>
SCANDAL / クレナズム

クレナズム 公演情報

クレナズム「冬のバリよかワンマンツアー 2024」

  • 2024年12月7日(土)東京都 UNIT
  • 2024年12月14日(土)台湾 THE WALL LIVE HOUSE
  • 2024年12月21日(土)大阪府 Live House Anima

プロフィール

クレナズム

2018年に福岡で結成された4人組バンド。2019年7月に1stシングル「花弁 / いつかの今頃」をリリースした。2021年6月にクボタカイをフィーチャーした初のコラボ曲「解けない駆け引き」を発表し、同曲はサブスクリプションサービスで1000万回再生を突破。翌2022年11月に1stフルアルバム「日々は季節をめくって」をリリースした。2022年12月には映画監督・野田英季がクレナズムの音楽にインスパイアされて制作した映画「ふたりの傷跡」が公開され、メンバーも役者として出演。新進気鋭の映画監督とアーティストの掛け合わせによる映画制作企画を具現化するプロジェクト「MOOSIC LAB」にてベストミュージシャン賞を受賞した。2024年8月には、映画「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」の主題歌でもある最新曲「リベリオン」をリリースした。

SCANDAL(スキャンダル)

HARUNA(Vo, G)、MAMI(G, Vo)、TOMOMI(B, Vo)、RINA(Dr, Vo)からなる4人組ガールズバンド。2006年に大阪・京橋で結成され、2008年にシングル「DOLL」でメジャーデビューを果たす。翌2009年にはシングル「少女S」で日本レコード大賞新人賞受賞。2015年には初の単独ワールドツアーを成功させ、その様子に密着したドキュメンタリー映画「SCANDAL Documentary film HELLO WORLD」が同年公開された。2018年にプライベートレーベル「her」を立ち上げ、レーベル第1弾作品としてシングル「マスターピース / まばたき」をリリース。結成17周年を迎えた2023年8月21日には「同一メンバーによる最長活動ロックバンド(女性)」としてギネス世界記録に認定された。