萌映(Vo, G)、まこと(B)、けんじろう(G)、しゅうた(Dr)からなる福岡拠点の4人組バンド・クレナズムの新曲「リベリオン」がリリースされた。
シューゲイザーやドリームポップを基調としたサウンドで注目を浴びているクレナズム。新曲「リベリオン」は藤吉夏鈴(櫻坂46)の主演映画「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」の主題歌に決定している。
「リベリオン」のリリースを記念して、音楽ナタリーでは特集を展開。萌映とまことが敬愛してやまないというSCANDALからHARUNA(Vo, G)とMAMI(G, Vo)をゲストに招き、座談会を行った。10月4日に行われるイベント「聴志動感 2024」でも競演が決定している2組がお互いにどのような印象を抱いているのか、そしてバンドを続けていくうえでの秘訣とは? お互いへのリスペクトがにじむ対話をぜひ楽しんでもらいたい。
取材・文 / 蜂須賀ちなみ撮影 / 山川哲矢
SCANDALがSCANDALであり続けていることにずっと勇気をもらってる
──クレナズムとSCANDALはいつ頃から面識があるんですか?
HARUNA(Vo, G / SCANDAL) 2020年の「聴志動感」というオンラインでのライブイベントに2組とも出ていて。そのときに初めて挨拶しました。
萌映(Vo, G / クレナズム) 私とまことは学生時代からずっとSCANDALが大好きだったので、初めてお会いしたときはすごく緊張して。
まこと(B / クレナズム) どうしようと思ったよね。しかもそのとき、自分たちのライブが始まる前だったから、僕、裸足だったんですよ。失礼なことしちゃったなって、ずっと気がかりで……あのときはすみませんでした。
MAMI(G, Vo / SCANDAL) そんなこと、全然気にしてなかったですよ!
──クレナズムのお二人はSCANDALから大きな影響を受けているそうですが、そのあたりについて詳しく聞かせていただけますか?
萌映 私は大学1年生の後期からサークルに入部したんですけど、仲のいい友達があまりいなくて、けっこう浮いた存在だったんです。そんな中でまことが声をかけてくれて、「好きなバンドは?」という話になったときにSCANDALと答えたところから意気投合して。なので、SCANDALは私たちの仲をつなげてくれたバンドなんです。その後、まことと仲よくなってから「HARUKAZE」を一緒にコピーしました。
まこと 萌映と一緒に「HARUKAZE」をコピーしたのが大学2年の頭だったんですけど、僕は大学に入ってからベースを始めたので、技術が全然追いつかなくて、何回かあきらめそうになりました。そのくらい難しかったけど、だからこそどうにかやり切ったことがすごく思い出に残っています。
HARUNA 初めて挨拶したときに、2人が「コピーしてました!」と言ってくれて。自分たちも中高生の頃に楽器を始めたので、そのくらいの世代の子が自分たちの曲をコピーしてくれているんだなと考えたら、長く続けてきてよかったなと思うし、自分たちがそういう存在になれていることを不思議に感じることもありますね。ずっと“4人ぼっち”で生きてきた感覚があるから、誰かの憧れになれていることが本当に不思議です。
MAMI SCANDALは結成の仕方がちょっと特殊だったからね。ダンス&ボーカルスクールで結成されたバンドで、自分たちの意思で楽器を始めたわけではなかったから、大学のサークルとかで結成されたバンドと自分たちは違うのかなって。
HARUNA そう。当時は「どこにも属せない」という劣等感があったけど、長く続けて、去年ギネス世界記録を取ったりしたことで(参照:SCANDAL、同一メンバーによる最長活動ロックバンド(女性)としてギネス世界記録に認定)、「自分たちは唯一無二なんだ」とちゃんと認められるようになったように思います。
萌映 SCANDALはずっとカッコよくて、かわいくて、美しくて……私にとって憧れです。バンド活動を始めたときに「女性ってこんなに少ないんだな」と思ったんですよ。クレナズムのほかのメンバーも男性だし、音楽業界には女性が少ないんだなって。でも、その中でも活動を続けている方は、アーティストもスタッフさんも含めて、芯があって強くてカッコいい方ばかり。私はSCANDALがSCANDALであり続けていることにずっと勇気をもらっているし、「周りが男性だらけでも負けないぞ」という気持ちになれています。ありがとうございます!
HARUNA そう言ってもらえてうれしいですね。
クレナズムに感じる、青春の切なさ
MAMI 2018年結成と聞いたんですけど、ということは私たちが初めて挨拶させてもらったときは結成から2年しか経っていなかったということですよね? あの日、感染症対策でライブ中は同じ空間にいられなかったんですけど、楽屋のモニタで観させてもらって。4人が照明に照らされているときの堂々とした感じ、めちゃくちゃカッコいいなと思ったんです。
HARUNA うん、確かに結成2年とは思えなかった。クレナズムの音楽には青春の切なさみたいなものがめちゃくちゃ詰まってるよね。潔さとか清々しさもすごく感じる。
MAMI そうそう。切なさみたいなものは声からも楽曲からも感じられるし、同時に力強さもあり。相反するものが1つにまとまっている音楽だから、聴いていると理由もなく涙が流れてくるような……。
HARUNA わかる!
MAMI 独特な、すごく素敵な個性ですよね。「不思議な感覚になるな」と思いながら、いつも聴かせてもらっています。
萌映・まこと ありがとうございます!
HARUNA 「聴志動感」で初めてご挨拶させてもらったあと、改めて曲を聴いて、「眩しくて」が特に好きだなと思いました。自分で曲を作るときに「眩しくて」を聴いて、ちょっと参考にさせてもらったこともあります。
萌映 ええっ?
まこと 衝撃だね。
萌映 いつも私たちが参考にさせていただいているのに……びっくりしました。ありがとうございます。
怒りという名の覚悟
──クレナズムは新曲「リベリオン」を8月7日に配信リリースしました。こちらは映画「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」の主題歌として制作された曲なんですよね。
萌映 そうなんです。学園もので、「大人への反逆」がテーマの映画なんですよ。なので、歌詞の内容もちょっと尖っているというか、今まで書いてきた曲たちよりも感情がよりあらわになっていると思います。
まこと この映画の主題歌じゃなかったら、こういう歌詞を書くことはなかったと思いますし、ほかにもいろいろと新しいことにチャレンジした曲ですね。曲の尺が短かったり、サウンドの面でも新しいものを取り入れていたり。
萌映 2分にも満たない、バンド史上最短の曲です!
HARUNA 「リベリオン」を聴いて、「自分たちも大人への反抗心をテーマに歌詞を書いていた時期があったな」と懐かしくなりました。だけどこの曲は、当時の私たちよりもずっと大人。
MAMI 私たちの場合は、感情が何個もあってぐちゃぐちゃになるというよりも、1つの感情が強くあるという感じだったんですよ。「は? ムカつく」と思えばそれ1個だけ、みたいな。
HARUNA ね(笑)。「もうちょっとダイエットしたほうがいいんじゃない?」と言われたら「は? おいしいものは好きなだけ食べたいし!」ってムカつく、みたいな。今振り返るとすごく幼かったなと思うけど、「私たちにだって思っていることはあるのに、どうしてわかろうとしてくれないんだろう?」という気持ちをすごくストレートに歌詞にしていたなと思います。
MAMI だけど今10代の子たちは、たぶん私たちが学生だった頃よりももっと複雑な気持ちを抱えていると思うんですよ。この曲は、どんな言葉で言い表したらいいかわからないような曖昧な感情も歌ってくれているから、学生の子たちにも届くんじゃないかなと思いました。
萌映 ありがとうございます。大人への反抗心は、私の心の中にもいまだにずっとあるもので。なので、自分のことを書きつつ、同じような感情でいる人たちにも刺さってほしいなという気持ちもあります。
まこと 萌映の機嫌が悪いときは、メンバー3人はすぐにわかるんですよ。だけどメンバー以外の前では全然顔に出さないよね?
萌映 出さないようにしています。
HARUNA だから歌にするんだよね?
萌映 そうなんですよ。お二人も、大人への反抗心っていまだにありますか?
HARUNA そういう感情で曲を書くことは少なくなったけど、去年書いた曲はわりと怒りに近いところから生まれているかもしれない。去年は「ギネス世界記録に挑戦する」というトピックがあったので、「SCANDALはこういうバンドなんです」というのを曲にちゃんと落とし込めたらいいなと思っていたんですよ。私たちはSCANDALのことをすごくいいバンドだと思っているけど、世間にはイマイチ届き切っていないような気がしていて。全員にちゃんとわかってもらうのは難しいと思いつつも、「4人のよさをもっとわかってもらいたい」という気持ちがあるんです。そういう思いを込めて作った曲が、一番新しいアルバム「LUMINOUS」にはたくさん入っている。大人への反抗心とは違うけど、それと似た感情で曲作りに向かっていたように思いますね。
MAMI 怒りという名の覚悟みたいな。こういう覚悟を持って活動しているんだと知っていただけたら、という気持ちでしたね。
次のページ »
大切なのは、信頼したうえで弱さを見せること