ナタリー PowerPush - CTS
ダンスミュージックがJ-POPシーンでできること
トランスムーブメントがなし得なかったこと
──確かに海外のダンスミュージックって自国のほかの文化に接触しているイメージがありますよね。アテネ五輪の開会式でDJ Tiestがスピンしたり、ロンドンのときにはオリンピックにUnderworld、パラリンピックにOrbitalが出てきたりして。
DJ KAYA まさにそうです。でも日本の場合、特に悔しいことにトランスは出遅れていたんですよ。10年くらい前に国内でも大きなトランスムーブメントがあったんですけど、それをチャンスに代えられなかった。例えばヒップホップ勢からはRHYMESTERやKREVAみたいなスターが登場したし、厳密にはヒップホップじゃないのかもしれないんですけどDragon Ash「Grateful Days」のようなヒット曲も生まれた。R&BにもMISIAみたいな存在がいるし、ハウスにも大沢(伸一)さんが手がけたbirdみたいな人がいて。テクノなら電気グルーヴですよね。どのジャンルも、そのジャンルが流行ったときに日本のオーバーグラウンドなシーンにも爪跡を残すことができたんですよ。でもトランスは10年前のムーブメントをうまく活用できなくて。コンピは大ヒットしたんだけど、果たして誰かスターが生まれたか?って言われると誰もいなかった。
──トランスの敗因ってなんだと思います?
DJ KAYA 言葉が先行しちゃった感じがありますね。当時トランスシーンからはいい曲が生み出され続けていたんだけど、そういう曲そのものよりも「トランス」って言葉がひとり歩きしてしまったというか。
──確かにメディアを通じて「トランス」っていう言葉が一気に消費されてしまった感はありますね。
DJ KAYA それで皆さん、食わず嫌いを起こしてしまったんですよね。いい曲は死ぬほどあったんだけど「でもトランスでしょ?」みたいな。
宮下 自分も完全にそういうタイプでした(笑)。世代もあると思うんですが、当時「トランスってパラパラでしょ?」って普通に言ってました(笑)。だから「Sayonara Twilight」を聴かされたときにKAYAさんから「これもある意味トランスなんだよ」っていろいろ説明してもらって、自分の嫌っていたトランスは局地的なものだったんだ、って。
消費されないためのジャンルレス
──ただCTSのサウンドって狭義の「トランス」ではないですよね。あとEDMとも形容されがちですが、いわゆる「EDM」でもない。
DJ KAYA トランスにもEDMにもいろんなトランス、EDMがあるじゃないですか。だから広い意味ではトランスやEDMに含まれるサウンドだとは思うんですけど、ジャンルを意識して作ってはいないので、狭い意味でのトランスやEDMにはなっていないんだと思います。
──ジャンルにこだわらないのはなぜ?
DJ KAYA 焦らずやっていきたいので。確かに「Sayonara Twilight」以降、CTSの曲はクラブやiTunes Storeのチャートの上位に入り続けてはいますけど、まだまだ「勝った」とは言えない状況ですし。今後勝つというか、より多くの人に聴いてもらうためには、むしろジャンルでくくらないほうがいいだろうと思ってるんです。もちろん「CTSっていい意味でEDMっぽいよね」って言ってもらえるのはスゲーうれしいって感じなんですけど「EDM」っていう言葉自体は怖いなと思っています。
──10年前の「トランス」のように「EDM」という言葉が消費され尽くしてしまうと、その瞬間、サウンドは新しいにもかかわらず、グループも陳腐に見えてしまうおそれがある?
DJ KAYA そうですね。だから言葉自体は古いのかもしれないですけど「CTS自体がジャンル」というか、「CTSはCTSの世界でやっていくんで、周りは気にしません」っていうスタンスではいますね。
──その「CTSの世界」がいきなりフロアで受け入れられた理由ってなんだと思います?
DJ KAYA 実は「いきなりヒット」っていう感覚はあまりなくて。バンドが新曲を作ったらまずはライブハウスで演奏してみるように、CTSに関してはとりあえずDJにかけてもらわなきゃいけないって感じで、最初はホントにDJに対するプロモーションをがんばってた気がしますし。
宮下 地道にやってましたよね。フロアに受け入れられたのも、トライアンドエラーの賜物というか。KAYAさんはDJだから、3時間前にできあがった曲をすぐにクラブイベントでプレイできるんです。そこで曲の鳴りやお客さんの反応をすぐにチェックして。
DJ KAYA 「Sayonara Twilight」もクラブでかけてみて何回か直しを入れてますしね。お客さんの反応を見て「あっ、なんかちょっと違うな」ってなってメンバーと一緒にトラックを直したこともありますし、歌詞もけっこうギリギリまで書き直してますし。ただもし何かウケた理由みたいなものがあるとするなら、僕やメンバーの経験をホントに凝縮しているところかもしれないですね。よくDJから「詰め込み感がすごい」っていうお褒めの言葉をいただくんですけど、僕に限っていうなら、確かにCTSにはトランスDJとしての17年間のキャリアや、日本のクラブだけじゃなくて「Japan Expo」や上海万博みたいな世界の、しかも普段クラブには来ないお客さんの前で日本の曲のDJをやらせてもらった経験なんかを全部詰め込んでいて。その詰め込み加減がクラブのお客さんにウケているのかなっていう気はしますね。
- メジャーデビューアルバム「THE BEST OF CTS」/ 2014年2月19日発売 / UNIVERSAL MUSIC / UICV-1031
- [CD] 2490円 / UICV-1031
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収録曲
- Yume Be The Light
- Everything’s All Right
- No Reason
- Blue Skywalker
- Hello Universe
- Never Ever Better
- 364
- Freak Out
- Parallel World
- Sayonara Twilight
- Space Drive
- Mirror
- Beautiful Love World
- Can’t Help Falling In Love
- 戦場のメリークリスマス
- ○△□
- New Breakthrough Live CTS
supported by JACK DANIEL'S -
2014年3月27日(木)東京都 ニコファーレ
OPEN 18:00 / START 19:00<出演>
CTS
CTS(しーてぃーえす)
CIRCLE(Vo)、TRIANGLE(Synthesizer)、SQUARE(DJ)からなるLED覆面ユニット。2012年12月の「Sayonara Twilight」リリース直後から、フロア映えする超本格派のダンストラックをバックにJ-POP、J-ROCKマナーに則った憂いを帯びたメロディと歌詞を歌う「最新型国産ダンス / ポップサウンド」とも呼ぶべきスタイルが大きな話題を集め、以来リリースしたすべての楽曲でiTunes Storeのダンスチャート1位、総合チャートでもベスト5を獲得する。またその一方で2013年には東京・ageHaやVISIONなどでの大規模イベントはもちろん、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」や「electrox」などの大型フェスにも出演する。そして2014年2月にはメジャー1stアルバムにして、ベスト盤「THE BEST OF CTS」をリリースした。