ナタリー PowerPush - CTS
ダンスミュージックがJ-POPシーンでできること
○、△、□のLEDマスクを身に付けた3人組ユニット・CTSが話題だ。
そのビジュアルとCIRCLE(Vo)、TRIANGLE(Synthesizer)、SQUARE(DJ)という名前、そして正体不明というプロフィールなど、人を食ったような横顔ばかりがクローズアップされがちな彼らだが、作り上げるトラックは上々。発表する楽曲は軒並みクラブチャート、iTunes Storeのダウンロードチャートの上位にランクインし、また「electrox」のようなダンスフェスから大型ロックフェス「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」まで、数々のイベントにも登場している。
そんなCTSが今月メジャー1stアルバム、その名も「THE BEST OF CTS」を発表した。今回ナタリーでは、謎多き彼らの正体に迫るべく、“地球に飛来した際、ノドを痛めたため発言できない”とする3人に代わって、プロデューサーのDJ KAYAとクリエイティブディレクターを務めるINCSの宮下俊之を招聘。CTS結成から現在に至るまでの歴史と、このユニットに込められた思いを語ってもらった。
取材・文 / 成松哲 撮影 / 上山陽介
日本と世界の「国民的な曲」観
──きちんとクラブで機能するボトムヘビーなダンストラックに、2000年代以降のJ-POP、J-ROCK的な泣かせるメロディラインと歌詞。CTSって本当に面白いユニットだと思うんですけど、そもそもどういう経緯で立ち上がったプロジェクトなんですか?
DJ KAYA 最初は今おっしゃったような、クラブでかけられるJ-POPを作りたいなっていうところからスタートしているんです。そう思うようになった経緯については、もともと僕がずっとトランスのDJをやっていたことが影響していて。そのDJの目で海外のシーンを見てみると、例えばビルボードチャートに入るような、その国の「国民的な曲」の中にもクラブで普通にかかりそうな曲がたくさんあるんですよね。でも日本の場合、日本の「国民的な曲」はなかなかクラブではかかっていないという現状があったんです。
──言ってしまえばクラブユースに耐えそうな曲は日本の「国民的な曲」になりにくい?
DJ KAYA というよりも「国民的な曲」に求められるものや、その曲の楽しまれ方が海外とは違う感じなんだと思います。日本の場合はそのアーティストのライブだったり、カラオケだったりで曲を楽しむのが主流で、海外の場合はダンスフロアで鳴っている音楽が主流になっている。日本の場合はクラブDJやクラブのお客さんと、J-POPリスナーがだいぶかけ離れているんですよね。だからDJたちからも愛されて、しかもJ-POPリスナーの人たちからも愛してもらえる曲を作りたかった。で、2012年に、のちにCTSのメンバーとなるメンバーたちと一緒に「Sayonara Twilight」を作ってみたんです。
DJとして自国の音楽にちゃんと関わりたい
──そしてヒットを記録した、と。
DJ KAYA おかげさまでそうですね。当時はCTSっていうアーティスト名もまだ決まっていなかったし、僕がCTSに携わっていることも表に出していなかった試行錯誤の段階。知人を通じて知り合いのDJたちの手に渡るように「Sayonara Twilight」をプロモーションするくらいのことしかできなかったんですけど、そうしたらDJたちが気に入ってくれたんですよ。それで発売日どころかアーティスト名すら決まっていない状態のまま、なぜかクラブチャート1位になったという。
宮下俊之 当時、KAYAさんがウチの会社の会議に「こういうデモがあるけど、どうかな」って、のちに「Sayonara Twilight」になるデモ音源を持ってきてくれて。社員と一緒に聴いてみたんですけど、そこですごくオリジナリティや新しさを覚えたんですよね。さっき言っていたようにダンスミュージックとポップスの配分に可能性も感じて、これは何か新しいことができるだろうな、っていうことで。その会議がCTSが動き出した最初のスタートですね。
──KAYAさんの言う通り、日本の音楽シーンの場合、いわゆるJ-POP、J-ROCKと、クラブシーンでは音楽の消費のされ方が違うし、リスナー層もセパレートされている傾向はあるとは思うんですけど、ただそれならそれでいいじゃんという気もします。なぜJ-POPシーンとクラブシーンを接触させようと?
DJ KAYA DJとしてその国の音楽にちゃんと関わっていたいなっていう気持ちがすごく強かったんです。日本では「DJ=洋楽だけでしょ」みたいな見られ方をすることは多いし、クラブやDJにネガティブな印象を持っている人も少なくないですよね。海外のチャートを見てみると、上位にいる曲のほとんどにDJが絡んでいたりする。たぶん日本でも「国民的な曲」をDJが作れないわけではないと思っていて。DJとしてDJにしかできないことを音楽シーンに伝えることってできるはずなんですよね。でも、現状では世界のDJに比べて、自分の国のシーンに直結できていない気がしていたので、CTSをスタートしてみたんです。
- メジャーデビューアルバム「THE BEST OF CTS」/ 2014年2月19日発売 / UNIVERSAL MUSIC / UICV-1031
- [CD] 2490円 / UICV-1031
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収録曲
- Yume Be The Light
- Everything’s All Right
- No Reason
- Blue Skywalker
- Hello Universe
- Never Ever Better
- 364
- Freak Out
- Parallel World
- Sayonara Twilight
- Space Drive
- Mirror
- Beautiful Love World
- Can’t Help Falling In Love
- 戦場のメリークリスマス
- ○△□
- New Breakthrough Live CTS
supported by JACK DANIEL'S -
2014年3月27日(木)東京都 ニコファーレ
OPEN 18:00 / START 19:00<出演>
CTS
CTS(しーてぃーえす)
CIRCLE(Vo)、TRIANGLE(Synthesizer)、SQUARE(DJ)からなるLED覆面ユニット。2012年12月の「Sayonara Twilight」リリース直後から、フロア映えする超本格派のダンストラックをバックにJ-POP、J-ROCKマナーに則った憂いを帯びたメロディと歌詞を歌う「最新型国産ダンス / ポップサウンド」とも呼ぶべきスタイルが大きな話題を集め、以来リリースしたすべての楽曲でiTunes Storeのダンスチャート1位、総合チャートでもベスト5を獲得する。またその一方で2013年には東京・ageHaやVISIONなどでの大規模イベントはもちろん、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2013」や「electrox」などの大型フェスにも出演する。そして2014年2月にはメジャー1stアルバムにして、ベスト盤「THE BEST OF CTS」をリリースした。