俺らの世代がどれだけ長く続けられるかが重要
Masato そう考えたら、日本にラウドミュージックやポストハードコアを持ち込んだ俺らの世代がどれだけ長く続けられるかが日本のシーンにおいて大事になってきたと思うんだよね。それに、さっきも「日本のバンドのアグレッションはほかでは見当たらない」っていう話をしたけど、世界のライブの意識を変えていけるのって、日本のバンドだと思ってるんですよ。やっぱりどんな現場でもそうだけど、新しい刺激がないとヌルくなっていく。そういう意味で、日本のバンドの汗臭い部分とかパッションの部分こそが海外に刺激を与えられると思ってて。世界には日本のバンドが必要だと思うし、日本にも海外のバンドの刺激が必要になってきてる。その相互関係をより一層深めるために、日本にもこういうヘヴィな音楽の歴史と広がりが必要なんですよね。例えばメロディックパンクのシーンを見ていると実感するけど、ある時期メロディックのバンドが減ったとしても、また一気に増え出したりするじゃないですか。おまけにハイスタ(Hi-STANDARD)も帰って来るなんて、それは土壌と歴史の積み重ねがなかったら起こらなかったことなわけで。ラウドにおけるそういう歴史ができていくかどうかは俺たちゼロ世代にかかってると思う。そのためにRyoが言った「感情を濃く表現する音楽」をどれだけ貫けるかだと思うんだよね。
Ryo まさに、自分の感情をそのまま表現する、濃いものを取り戻そうという意識はかなり強くなってきてる気がしますね。
Koie 結局、1人で音楽を作れる時代にも関わらずバンドをやってる理由もそこやもんな。DTMじゃなくて人と一緒にやって、感情を乗せる。人が好まないものばっかりを好んでやってきたけど、それも、自分たちの感情をどれだけまっすぐ吐き出せるのかっていう気持ちを貫いた結果やったから。人の感情を乗せられるものを一緒にやりたいっていうのが根本にあるのは変わらないよな。
ボーカリストとしてのRyo
Ryo ロックの根源的なものって、結局そこだと思うんですよ。パンクもハードコアもヒップホップも、それを生んだ人種は違えど根っこは同じだと思うし、それこそが自分たちが消化してきたもの。だから自分たちを自然に出したからこそエクストリームなものになったのが「HELIX」な気がするんですね。「HELIX」というタイトルも、「螺旋」よりは「遺伝子」の意味で付けたんですよ。つまりは、自分たちの遺伝子や生きた証が連なってこの音楽ができてるという実感が詰まってるんです。受け継いできたし、つないでいきたいっていう。で、俺的には、さっきコイちゃんが言っていたような「カルト」が理想的なんですよ。言い方は難しいけど、とにかく垣根を壊しながら信者を増やしていくような。それは別にメインストリームで大きく広がると言うよりも、DeftonesやConvergeもそういうものだったと思うんです。そうなるために、自分が好きで聴いてきたハードコアやブラックメタル、グラインドコアを広げていくボーカリストになれるかどうかがまさに肝だと思ってて。そのための武器はここですって言うのは難しいんですけど。
──武器として1つ大きいのは、スクリームもグロウルもラップも溶け合っているというRyoさんのボーカルスタイルだと思うんですね。ラップミュージックがトレンドになっている今、これはロックバンドとして攻めていくための大きな武器だと思うし、そもそもシャウトとラップの中間をこれだけパンチあるものとして聴かせるボーカリストは世界的にも貴重だと思っていて。
Ryo ああ、うれしいです。それも、Crystal Lakeに入る前から無意識的にやってきたもので変わらないんですけど。「俺は自分であろう」と思い続けてきて、その結果、好きで聴いてきたヒップホップも叫びも全部を詰め込んだ歌を歌うにはどうしたらいいかという試行錯誤は自然と生まれてたと思うんですよね。Crossfaithがシャウト一本でやっているのを見ても「じゃあ俺の武器ってなんだろう」って考えたし、coldrainの歌の力を実感したときにも、「俺にしかできないことはなんだろう」って考えたんです。そしたらもう、自分の好きなものを全部ぶち込んで煮詰めるしかなかった(笑)。
Koie でもただのオタクですよ、Ryoは。ここまで突き詰めるやつ、なかなかいないですからね。一緒にカラオケ言ったらThe Chainsmokersの「Closer」歌うしな! で、それがまたええねん(笑)。
Ryo (笑)。自分にしかできないものを突き詰めていくために新しい音楽を知りたいと思うし、自然と分析してしまうし、自分でも歌う(笑)。やっぱり、どの音楽を聴いてもルーツから理解したくなっちゃうんですよ。そのほうが、より深く面白く音楽を鳴らせると思うから。
Masato 例えばシャウト一本でアゲるっていうスタイルはコイちゃんが日本で作り上げたものだと思うけど、その叫びの中にもいろんなスタイルがあるし、みんないろんな音楽を消化したうえでやってるよね。で、そういう積み重ねが出てるのかわからないけど、「HELIX」って「自然に出てきた」とは言っても要素がむちゃくちゃ増えてるよね。例えば「Architectsっぽい!」って思った瞬間にいきなり90'sっぽくなったり、Biohazardっぽくなったりとか(笑)。
Ryo 確かにそうかもしれないですね。海外のバンドに多いのは、1つの要素でそのまま行っちゃうスタイルで。だけど自分たちのモットーはまさに“ハイブリッド”なんですね。要素は増えたかもしれないけど、結局は自然体で聴いてきたものを混ぜることが一番のハイブリッドになるんだなって。より泥臭くなったと思うし、いろんなものが混ざった中に人間臭いものが出てる気がするんです。
自分たちのやってきたことを文化にしなきゃいけない
Koie ラストの「Sanctuary」なんてむちゃくちゃ泥臭いよね。
──その「Sanctuary」が本当に素晴らしいですよね。2ビートで爆走していくメタルコアにしろ、メロディもまっ向勝負で。ここで歌われているのは、痛みや苦しみを捨てることなく、それを引き受けて生きていくという宣誓のようだと思ったんですが。こういう歌が出てきたのはどういった気持ちからなのか、教えてもらえますか。
Ryo 痛みや悲しみを引き受けていくと言うよりは、それを抜け出していきたいという気持ちだったと思うんですね。「苦しいし痛いけど、ここからまだ立ち上がれば大丈夫だからなっていう音楽を鳴らしたい」、そういう自分の根っこがそのまま出てきた気がするんですね。だからこそ泥臭くなった気がするし、そういう意味ではこのアルバムですごく大事な曲だと思います。
Masato そうだよね。俺は、こういう歌詞や精神性とリスナーがもっとつながっていく必要性があると思ってて。だからこそ、英語の歌詞だけど意味まで知ってもらえるくらいまで、ある種のカルトになってひっくり返したいと思うんだよね。
Koie でも、俺らが今やろうとしていること自体が、これまでの日本の音楽をひっくり返すことやとも思うよな。日本人として海外で勝負できるバンドになること自体が前人未到のことなわけで。それ以上に何がしたいかって言われたら具体的には浮かばないっていうのが正直なところなんですよね。だからこそ、丸くならずにとがりっぱなしで続けていくことが一番大事やなって改めて思うかな。
──実際、海外のメタルコアシーンはここ3年くらいで完全に成熟してきたと思うんです。テクニカルな手法に行くか、あるいはR&Bやラップをどう消化するかの二手に分かれていくバンドが多い中、日本のバンドでしか歌えない歌と感性は大きな武器になっていくと思います。そういうことを感じさせるお話を今日は伺えました。
Ryo もう、土壌を作ると言うよりも自分たちのやってきたことを文化にしなきゃいけない段階なんだっていうことも理解できましたね。親善大使じゃないですけど、いろんな場所に行って鳴らして、それを日本に持って帰ってきてまた信者を増やしていく。そういう地道なことをやりながら、常に嘘なくやっていきたいなと改めて思ってますね。
- ツアー情報
Crystal Lake「HELIX TOUR」 -
- 2019年1月13日(日)東京都 マイナビBLITZ赤坂
- 2019年1月15日(火)大阪府 BIGCAT
- 2019年1月18日(金)愛知県 THE BOTTOM LINE